桜井昌司『獄外記』

布川事件というえん罪を背負って44年。その異常な体験をしたからこそ、感じられるもの、判るものがあるようです。

ある思い

2012-06-14 | Weblog
かなり古い話だ。
どうしても30万が必要になった。
ある家に借りに行った。
玄関に出て来た家人に金が必要な理由を話して借金を頼んだが、はかばかしい返事はしなかった。すると、家の中から「いちいち貸してやる金なんか、ねえんだよ!」と、かなり大きな声がした。俺の中で身体が冷たくなる感覚が生まれ、すぐに判りましたと言って、その家を辞した。
あのときに聞こえよがしに言った人の苦境を聞いて、何でも手助けしてあげたい気持ちになっているが、そのたびに忘れていた屈辱が甦る。
あのときは、幸いにも30万を快く貸してくれる人がいて、返済期限前に返したことで俺の信用も増したから、別に何でもなかったが、身体が冷たくなるほどの屈辱感は忘れていなかった。
利根町議会が公正裁判要請決議をしてくれるとなった際、若いころに杉山に殴られた2議員の猛反対で議決出来なかったことがあった。当時は執念深い奴だと呆れたが、俺も同じかも知れないな。
もちろん、何ががあれば縁のあった人だし、俺に出来得ることはするけども、屈辱感は忘れ難いものだと思うとともに、あれからの月日に感慨無量の思いだ。
人の明日は判らないね。
だからこそ、人には親切に優しく、出来る限りのことをしなければならないと、自分を戒めている。

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