桜井昌司『獄外記』

布川事件というえん罪を背負って44年。その異常な体験をしたからこそ、感じられるもの、判るものがあるようです。

「とらわれた二人」を読んで

2014-01-09 | Weblog

この頃、本を読むようになった。刑務所では毎日、それが楽しみっだったのに、社会に帰ってからは生活と活動に追われる毎日で、すっかり読書の習慣を失ったと思っていたが、そうではなかったようだ。長い移動時間などは、この頃は読書になり、また読書の楽しみが復活した

「とらわれた二人」は、アメリカの冤罪事件を書いている。ジェファニー・トンプソンと言う22歳の白人女性が就寝中にレイプされる。ジェファニーが「犯人だ」と名指ししたのがロナルド・コットン、22歳の黒人。コットンは無実だった。しかし、「犯人識別供述」の誤りで、その後、11年の獄中生活を送ることになる。

その間、ジェファニーはレイプされたことで精神が傷つき「魂の死」と言うべき状態になり、ついには恋人と別れ、新しい出会いで子供も得る。犯罪の残す深い傷にジェファニーは苦しむ。

コットンは、同じ刑務所で真犯人であるボビー・レオン・プールと一緒になる。おなじ所で顔を合わせて過ごすと言うのだから、まるで作り話のようだ。荒んだ人の集まりである刑務所で真犯人と過ごす苦悩から、プールを殺して自分の運命を終わらせようと考えて凶器を作るコットン。しかし、両親などの愛に思い立って凶器を捨て「入ってきたように出ていく」と、再審を闘うことにする。この辺りは、自分を見ているようで読むのが辛かった。

やがて、DNA新鑑定で無実が判り、プールの自白もあって自由になるコットン。ここは泣けたなあ。俺も、この手で両親を抱きたかった!

コットンも結婚し、子供も生まれ、やがてジェニファーと会う。そして、コットンはジェニファーの誤りを許す。コットンの「赦し」から、ジェファニーは自分がレイプされて受けた傷を「犯人を赦す」ことで「心の自由」を取り戻せるのだと気付き、ジェファニーとニートコットンは家族同士ぐるみの友人となって冤罪支援活動や死刑反対活動を共にするようになる。

人間っていいな!と思わせてくれる本だった。

俺は「冤罪になって良かった」と思っている。誰も恨んでもいないが、ジェニファーが、背負い続けた苦しみから「赦し」によって再生される心理を読んで、「本当は、俺も闘いたくないのかも知れない、赦したいと思っているのかも知れない」と感じた。「桜井と杉山は犯人。たまたま有罪が立証されなかっただけ」と、馬鹿げたことを公言する検察ではなくて「二人は冤罪。今後、冤罪と作らないために、過ちを正す改革を行う」と、もしアメリカ司法のように、日本の司法がなっていれば、と思ったら、違う涙の流れた本だった。

 

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1 コメント

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いい物語ですね。 (千恵ば)
2014-01-10 02:04:05
 ショージさんが物事をよく知っているのは獄中文学青年だったと分かりました。
 たくさんの書物から私もたくさんのことを学びました。
 私もその本読んでみますね。ありがとう。

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