桜井昌司『獄外記』

布川事件というえん罪を背負って44年。その異常な体験をしたからこそ、感じられるもの、判るものがあるようです。

悲しいと言うか、哀れと言うか

2015-06-19 | Weblog

昨夜のこと、着信と伝言があるのに気付いて聞いてみると「栃木県那須塩原警察署刑事課の○○○と申します。××さんの件で電話しました」とあった。

××は千葉刑務所仲間。仮釈放になって、もう20年位はなるだろうか。都内で整体師をしながら真面目に頑張っているはず。どうしたのかと思って、那須塩原署に電話してみると、「××さんから、桜井さんに弁護士を依頼して欲しいとの依頼です」と言う。「逮捕されているんですか」「ハイ、逮捕しています」「どんな容疑ですか?」「住居侵入・傷害です」「彼は認めているんですか?」「詳しいことは、お話しできません」と言うやり取り。

頼られた以上、何んとか弁護士を探そうと思って、すぐに知り合いに連絡したが、那須塩原辺りは弁護士過疎。結局、今日になって、やっと、宇都宮の弁護士さんに面会を依頼できた。

午後、面会結果が知らされた。「昨年12月の事件。本人は認めています」とのことだった。

何かの間違いだと思っていたが、そうではなかった。彼が千葉刑務所に来た事件は、詳しく聞いていないが、どうも同じようなパターンだ。「金がない、盗みに這入る、人に見つかる、事件になる」

昨年末、彼は結婚したそうだ。その結婚資金のための事件だと聞いて、暗澹たる思いになった。気持ちが沈み、重いものを背負ったような気分だ。

真面目にやっているのを喜び、頑張って欲しいと思っていたが、その喜びと願いが潰された傷みのような感覚を味わって、俺は自分の過去を思い出したよ。

俺も盗みをした、人の願いと期待を裏切った。裏切られた人たちのことを考えたことはあるが、こんな感情になっていたことまでは思えなかったなあ。こんな暗い気持ちにさせたのだと思うと、改めて自分の過去を反省させられた。

××の事件を思うと、人が更生すると言うのは、本当に大変なんだと思わされるが、頑張って欲しいと、心から願わずにはいられないよ。負けるなよ、××!