桜井昌司『獄外記』

布川事件というえん罪を背負って44年。その異常な体験をしたからこそ、感じられるもの、判るものがあるようです。

いただけない

2012-05-24 | Weblog
今日は、各紙に、昨日で三者協議が終了した東電OL殺人事件と名張事件の記事が掲載された。
東電を書いた記事に「新たな鑑定結果には請求人に一部有利な結果がある」と書かれたものがあった。
一部?
アホか!と言いたかった。ゴビンダさんを有罪にするために、検察は被害者に付着したゴビンダさんと違う体液と体毛の存在を隠していたのではないか。
なぜ、この不当な行為を最初に書かないのだろう。初めから、この42点の物証が裁判に出されていれば、果たしてゴビンダさんは有罪にされたのか。厳しく検証する必要がある。
しかも、ゴビンダさんに有利な結果は一部ではない。「ゴビンダさんのかも知れないが、鑑定出来ない」と言うアヤフやな結果を、検察は鬼の首を取れたごとくに語るだけなのに、その事実を見抜かないのか、見抜けないのかは知らないが、検察の主張に添ってしか書かない記事には怒りを感じる。
今日の読売は、かなり名張事件の決定で詳しく書いてくれた。しかも、奥西さんに好意的だった。
ただし、これにも書かれないことがあった。
奥西さんは1審で無罪になった。ある時期から村人が一斉に、奥西さんが有罪になる方向に証言を変えた。これを捜査官による作為的な変更と見抜いた裁判官は無罪とした。
ところが、2審では、「現場から発見された毒の入れられた葡萄酒の王冠にある歯形と奥西さんの付けた歯形が一致した」として逆転有罪で死刑にしたのだが、この「歯形鑑定」は、実は偽造された物だった。
松倉なる鑑定人は、奥西さんに実験で付けさせた歯形と王冠の歯形は一致しなかったことから、その倍率を変えて一致するかのようにでっち上げたのだ。
今日の読売記事には、この部分が欠けている。
松倉はでっち上げ鑑定をした張本人だが、いかに松倉が悪党だったとしても科学者の端くれだ、自分1人の意志で偽造する訳はない。「鑑定結果は一致しない」と聞いた検察が、村人の証言を変えて犯人になるようにしたと同じに、「なみなみならぬ働きかけ」を鑑定人に行った結果の偽造行為であろうことは、今さら俺が指摘するまでもなく自明のことだろう。
それはともかく、鑑定結果の偽造によって逆転有罪になった事実は、この名張事件を見るときに欠かしてはならない視点だとおもう。読売記事は、奥西さんに好意的で有り難かったが、いただけないねぇ。

1周年

2012-05-24 | Weblog
無罪になって1年になった。遥か昔のことのように、余り記憶のない部分があるけれども、神田裁判長の言葉を聞いたときに身体が軽くなった感覚は、しっかりと覚えている。
無罪になって俺の心身は変化したが、検察は、全く変わっていない。
昨日は、東電OL殺人事件で最後の三者協議があり、近いうちに決定となったし、明日の名張決定もあって、両方が新聞に記事があったけども、相変わらずのことを語るだけの検察だ。
法治国家日本だ。こいつらが、こういう態度がとれないような法律を作るしかない。
あれから1年が過ぎて、俺が検察を変えるしかないと思う気持ちは、ますます高くなるばかりだ。