《 安保法制与党合意 》 【 武力行使への道容認できない 】 2015/3/25 地方紙「社説」より
[戦後70年。日本が守ってきた平和主義を覆すさらなる一歩が踏み出された。
自民、公明両党は、世界各地の紛争などにおいて、自衛隊任務を大幅に拡大させる新たな安全保障法制の骨格で合意した。
日本が攻撃されていなくても「わが国の平和と安全に重要な影響を与える事態」と政府が判断すれば、随時どこへでも自衛隊を派遣し、他国軍を支援できるようになる。法の解釈と時の政権の判断次第で、なし崩し的に武力行使に道を開く危険が大きく、断じて容認できない。
政府は昨年7月、憲法解釈を変更し、集団的自衛権の行使容認へと踏み出した。国民に諮ることもなく、十分な説明もなく、与党協議による拙速な議論によって閣議決定を強行した。そのこと自体、到底納得できるものではなく、あらためて撤回を求めたい。
さらに今回、閣議決定を具体化させる法制に骨格も与党だけのわずか1カ月余の協議で決めた。4月の統一地方選や日米防衛協力指針(ガイドライン)改定を視野に急いだことは明らかだ。
国の先行きを左右する重要事項を日程優先で決定した。「なぜいま」 「必要があるのか」との本質論議を欠いたまま、国民を置き去りに押し通すことは、民主主義国家のすることではなかろう。
合意文書は複雑な内容を曖昧な表現でくるんだ。自衛隊派遣の具体的状況も支援対象国も示しておらず、前提となる国会承認についても「事前承認を基本とする」として例外の余地を残す。「国連決議または関連決議があること」を条件とするが、どのような決議内容か判然としない。武力行使への抜け道だらけだ。
国民の命を危険にさらし戦闘に加担することは決して許されない。にもかかわらず、武力行使の歯止め策すら先送りして突っ走る政府与党の姿勢を強く憂慮する。
自民は「国民の命と平和な暮らしを守るため」の一点張りで自衛隊海外派遣への制約はずしに走った。公明もメンツを保つための文書の文言修正にこだわりブレーキ役を果たせなかった。与党の立場に固執し党利を優先するなら「平和の党」の看板は下ろさねばなるまい。
安倍晋三首相は防衛大学校の卒業式訓示で、戦争の巻き込まれかねないとの声は「不安をあおろうとする無責任な言説。そうした批判が荒唐無稽なことは、この70年の歴史が証明している」と訴えた。
憲法9条の平和主義にもとづき、非武装で国際的信頼の獲得に努めたからこそ戦闘に巻き込まれなかったことを忘れてはならない。対話や外交力をおろそかに軍事力で平和を守ることはできない。そのことこそ歴史が証明している。]
[戦後70年。日本が守ってきた平和主義を覆すさらなる一歩が踏み出された。
自民、公明両党は、世界各地の紛争などにおいて、自衛隊任務を大幅に拡大させる新たな安全保障法制の骨格で合意した。
日本が攻撃されていなくても「わが国の平和と安全に重要な影響を与える事態」と政府が判断すれば、随時どこへでも自衛隊を派遣し、他国軍を支援できるようになる。法の解釈と時の政権の判断次第で、なし崩し的に武力行使に道を開く危険が大きく、断じて容認できない。
政府は昨年7月、憲法解釈を変更し、集団的自衛権の行使容認へと踏み出した。国民に諮ることもなく、十分な説明もなく、与党協議による拙速な議論によって閣議決定を強行した。そのこと自体、到底納得できるものではなく、あらためて撤回を求めたい。
さらに今回、閣議決定を具体化させる法制に骨格も与党だけのわずか1カ月余の協議で決めた。4月の統一地方選や日米防衛協力指針(ガイドライン)改定を視野に急いだことは明らかだ。
国の先行きを左右する重要事項を日程優先で決定した。「なぜいま」 「必要があるのか」との本質論議を欠いたまま、国民を置き去りに押し通すことは、民主主義国家のすることではなかろう。
合意文書は複雑な内容を曖昧な表現でくるんだ。自衛隊派遣の具体的状況も支援対象国も示しておらず、前提となる国会承認についても「事前承認を基本とする」として例外の余地を残す。「国連決議または関連決議があること」を条件とするが、どのような決議内容か判然としない。武力行使への抜け道だらけだ。
国民の命を危険にさらし戦闘に加担することは決して許されない。にもかかわらず、武力行使の歯止め策すら先送りして突っ走る政府与党の姿勢を強く憂慮する。
自民は「国民の命と平和な暮らしを守るため」の一点張りで自衛隊海外派遣への制約はずしに走った。公明もメンツを保つための文書の文言修正にこだわりブレーキ役を果たせなかった。与党の立場に固執し党利を優先するなら「平和の党」の看板は下ろさねばなるまい。
安倍晋三首相は防衛大学校の卒業式訓示で、戦争の巻き込まれかねないとの声は「不安をあおろうとする無責任な言説。そうした批判が荒唐無稽なことは、この70年の歴史が証明している」と訴えた。
憲法9条の平和主義にもとづき、非武装で国際的信頼の獲得に努めたからこそ戦闘に巻き込まれなかったことを忘れてはならない。対話や外交力をおろそかに軍事力で平和を守ることはできない。そのことこそ歴史が証明している。]