《 終戦の日 》 【 平和外交こそわが国の使命だ 】 2014/8/15 地方紙「社説」より
[きょうは69回目の「終戦の日」。平和への誓いを新たにするのはこれまでと変わらない。違うのは、忍び寄る平和を壊す気配を多くの国民が感じ取っていることだ。
この1年、安倍晋三首相は日本の進路を危うくする安全保障上の政策決定を相次いで強行した。戦後積み重ねた平和国家の基盤を根底から崩す恐れがあり、容認できない。
先月は集団自衛権行使を容認する憲法解釈変更を閣議決定した。国の存立が脅かされるなどの要件を満たせば、必要最小限度の武力行使は許されるとする。専守防衛を旨とする自衛隊が海外の戦争に参加できるようになるのだ。
安倍首相は限定容認と強調しながら、その後の国会答弁で閣議決定分にない国連の集団安保参加に踏み込んだ。政権の判断一つで対象が拡大すると認めたに等しい。戦争に巻き込まれる不安が国民に広がったのもうなずけよう。
昨年末に成立した特定秘密保護法も看過できない。国民の「知る権利」を侵すだけでなく、共謀や教唆を処罰対象とすることで、一般市民が秘密に近づこうとする行為に網を掛ける。さらに今春には武器輸出三原則を見直し、従来の禁輸政策を撤廃した。
これらの政策の先に見えるのは「武力」による国際紛争への介入であり、「戦争ができる国」とそれを支える監視社会の構築だ。共同通信の今月の世論調査では集団的自衛権行使容認に60%が反対し、84%が説明不足を批判した。国民の声に耳をふさいではならない。一連の安保政策を撤回するよう重ねて求める。
布石はあった。1年前の全国戦没者追悼式。安倍首相は式辞から「不戦の誓い」の文言を外し、歴代首相が触れてきたアジア諸国への加害と反省にも言及しなかった。武力行使に道を開く意図と勘ぐられても仕方ないだろう。
先の大戦は近隣のアジア諸国にも多大な犠牲を強いた。真摯に省みて不戦を誓うのは当然だ。きょう述べる式辞の内容を、日本国民はもとより近隣諸国も注視していると、くぎを刺しておきたい。
安倍首相はかねて「積極的平和主義」を掲げる。世界の平和と安定に積極的に責任を果たし、わが国の平和を守るという。理念はともかく、武力を背景にする方法論には異論を唱えたい。武力による紛争介入は当事国の恨みを買い、敵を増やすだけ。ぶれることなく「戦争しない国」であり続け、外交解決を主導することこそ日本が目指すべき平和貢献の形なのだ。
戦争体験をしていない世代が増え、悲惨さを実感しづらくなっているのは確かだが、人ごとでいてはならない。戦争が現実味を帯びる今だからこそ、平和の重みを一人一人が考えねばならない。
[きょうは69回目の「終戦の日」。平和への誓いを新たにするのはこれまでと変わらない。違うのは、忍び寄る平和を壊す気配を多くの国民が感じ取っていることだ。
この1年、安倍晋三首相は日本の進路を危うくする安全保障上の政策決定を相次いで強行した。戦後積み重ねた平和国家の基盤を根底から崩す恐れがあり、容認できない。
先月は集団自衛権行使を容認する憲法解釈変更を閣議決定した。国の存立が脅かされるなどの要件を満たせば、必要最小限度の武力行使は許されるとする。専守防衛を旨とする自衛隊が海外の戦争に参加できるようになるのだ。
安倍首相は限定容認と強調しながら、その後の国会答弁で閣議決定分にない国連の集団安保参加に踏み込んだ。政権の判断一つで対象が拡大すると認めたに等しい。戦争に巻き込まれる不安が国民に広がったのもうなずけよう。
昨年末に成立した特定秘密保護法も看過できない。国民の「知る権利」を侵すだけでなく、共謀や教唆を処罰対象とすることで、一般市民が秘密に近づこうとする行為に網を掛ける。さらに今春には武器輸出三原則を見直し、従来の禁輸政策を撤廃した。
これらの政策の先に見えるのは「武力」による国際紛争への介入であり、「戦争ができる国」とそれを支える監視社会の構築だ。共同通信の今月の世論調査では集団的自衛権行使容認に60%が反対し、84%が説明不足を批判した。国民の声に耳をふさいではならない。一連の安保政策を撤回するよう重ねて求める。
布石はあった。1年前の全国戦没者追悼式。安倍首相は式辞から「不戦の誓い」の文言を外し、歴代首相が触れてきたアジア諸国への加害と反省にも言及しなかった。武力行使に道を開く意図と勘ぐられても仕方ないだろう。
先の大戦は近隣のアジア諸国にも多大な犠牲を強いた。真摯に省みて不戦を誓うのは当然だ。きょう述べる式辞の内容を、日本国民はもとより近隣諸国も注視していると、くぎを刺しておきたい。
安倍首相はかねて「積極的平和主義」を掲げる。世界の平和と安定に積極的に責任を果たし、わが国の平和を守るという。理念はともかく、武力を背景にする方法論には異論を唱えたい。武力による紛争介入は当事国の恨みを買い、敵を増やすだけ。ぶれることなく「戦争しない国」であり続け、外交解決を主導することこそ日本が目指すべき平和貢献の形なのだ。
戦争体験をしていない世代が増え、悲惨さを実感しづらくなっているのは確かだが、人ごとでいてはならない。戦争が現実味を帯びる今だからこそ、平和の重みを一人一人が考えねばならない。