逝きし世の面影

政治、経済、社会、宗教などを脈絡無く語る

リカードの比較優位説

2011年11月18日 | 経済

『列強の植民地化政策と、比較優位』

悪魔の碾き臼新自由主義の推進者池田信夫などが賞賛するTPP賛成論の中では、リカードの『比較優位説』なる聞き慣れない言葉が突然言い出されている。
デヴィッド・リカード(David Ricardo、1772年~1823年)は、各国が比較優位に立つ産品を重点的に輸出する事で経済厚生は高まる、とする『比較生産費説』を主張したイギリスの経済学者。
『比較優位』とは比較生産費説ともいい18世紀の膨張するイギリスの帝国主義を経済学の立場で合理化・説明している。
比較優位論は、『国際分業の利益』を説く理論であるが、ダーウィンの進化論の悪しき庶子である社会ダーウィニズムや優生学との共通点を考えることが出来そうです。
この『比較優位論』とは18~19世紀当時全盛だった過酷な帝国主義(植民地主義)的な、自由貿易を推進する考え方でリカードモデルの基本である。
穿って考えれば、この『比較優位論』の意味とは、1813年よりイギリスの対インド貿易が自由化(関税自主権の剥奪)され、産業革命のイギリスから機械製綿織物がインドへ流入、インドの伝統的な綿織物産業が完全に破壊され植民地化された例や、『自由貿易の確立』を口実にしたアヘン戦争(1839年~1842年)でイギリスが清を半植民地化した、当時の西欧列強諸国の無慈悲で過酷な植民地化政策を経済理論的に正当化する為の武器でもあった。
屁理屈と膏薬は何処にでもつくとは言うが、幾ら『悪魔の碾き臼』の新自由主義とは言え、200年も前のこんな血まみれの禍々しい過去の亡霊『比較優位』が今頃蘇るとは地下のデヴィッド・リカードも苦笑いしているだろう。

『水説:比較優位とTPP』潮田道夫 毎日新聞 2011年11月16日

ある女性弁護士がその町で1番のタイピストでもある場合、彼女が利益を最大にするには、タイピストを雇わず自分で書類をタイプするのがよいだろうか。
答えは給料を払ってでもタイピストを雇い、自分は弁護士業務に専念すべきだ、というものだ。
仮に10万円給料を払っても、その時間を弁護にあてれば15万円の報酬を得られる。ふたりともトクする。
タイピストはタイプの能力で弁護士に劣るのに、2人の関係においてはタイピングで『比較優位』を有する。
この『劣っていても優位』というのがミソである。
経済学者リカードが自由貿易の正しさを説くのに初めて使った経済学上の大原理だ。
何でもかんでも自国で生産するより、各国が比較優位を有するものを分業し、貿易する方が利益になる。
女性弁護士のたとえ話はあのサミュエルソンが、教科書史上空前のベストセラー「経済学」のなかで、比較優位の応用問題として述べていることである。分かりやすい。
今度の環太平洋パートナーシップ協定(TPP)について、経済学者はほとんどが賛成に回った。
比較優位の観点からは自由貿易を推進することがどの国にとっても利益になるのは明白で、経済学の教えに忠実であれば賛成するのが当然だからだ。
で、TPP推進論を述べるに当たって、多くの経済学者は『比較優位』を説き、『であるからTPP参加は当然である』と胸をはったのであるが、
多くの場合、人々を納得させられなかった。
ある先生は『タイピストという例えが古すぎたかな。そういう職種はもう存在しないと注意された』と反省していた。
ま、それは軽口として、経済学者がTPP問題で人々をうまく説得できなかったのは事実で、まじめな方々はちょっとショックを受けているようだ。

JPモルガン証券の北野一氏によれば、1950年代、『法皇』と称された一万田尚登日銀総裁や民社党委員長になる西尾末広衆院議員らは、日本は乗用車生産を中止し輸入したほうがよい、と主張したそうだ。
『比較優位からすると両者は正しいことを言っていたのかもしれない。当時、日米自由貿易協定(FTA)で合意していれば、いまの日本にトヨタもホンダもなかっただろう』と言う。
なるほど。
ともあれ、自由貿易論も自由貿易神話論も、TPPを機にボンヤリ聞いていれば分かるという段階を過ぎ、聞き手に学習を強いている。
やれやれ、えらいことになってきたなあ。
(専門編集委員)

『科学と偽科学』

毎日新聞など大手マスメディアは全員がTPP推進の方針で一致しているので、この上記のコラム『水説:比較優位とTPP』潮田道夫専門編集委員も、勿論推進の為の記事を書いている。
・・・はず、なのである。
確かに、コラムの前半の4分の3はリカードの比較優位を使ってTPPの効用(正さ)を説いている。
ところが続く6行は、この『比較優位』論が誰にも支持されなかった事実が述べられている。
最後の8行に至っては、正反対に前半部分(リカードの比較優位説)が真っ赤な嘘(偽科学)である明確な事例を書いている。
潮田氏はコラムで何が言いたい(目的)のだろうか。
半世紀前には日本の自動車産業など、アメリカの足元にも及ばないほど貧弱な、リカードの比較優位説では絶対に無理な(産業として無駄な)代物だったのです。
当時のトヨタクラウンはアメリカの高速走行には耐えられずエンジンが焼け付いたし日産エコーは98キロ以上だとプロペラシャフトが脱落して仕舞い大事故を起こしている。
過去のイギリスとインドや清の歴史が証明している様に、国内産業保護の関税がなければ(自由貿易なら)今の日本の自動車産業の隆盛はあり得ない。
日本政府の手厚い保護政策(関税と消費税の戻し税以外にも免税や各種の優遇策)の結果、日本の自動車産業は、今では絶対的な比較優位を獲得した。
自動車に限れば『比較優位』は、今では日米の立場が逆転しているのです。
トップメーカーGMまでが倒産の危機に瀕し、連邦政府の全面支援で息を吹き返したアメリカの自動車産業は、日本のマスコミでは報道されていないが実はTPPに反対している。
科学の仮説とは、誰が何を説いても良いが必ず第三者の検証作業に耐えて初めて定説となる性質を持っている。
『事実』とは違いすぎる、間違っていた仮説は捨て去られる。
究極の新自由主義であるTPPの賛成論が、崩壊した18~19世紀の帝国主義の経済論理(間違いが証明されている偽科学)を出すまでに落ちぶれ果てたとは驚くばりで、実は潮田道夫氏は、毎日新聞専門編集委員の立場なので嫌々TPP推進を言っているが、本心でTPP推進が売国行為である事実を、誰よりも良く知っているのです。
だから潮田氏は、迂闊に一見するだけならTPP推進に見えるが最後まで読めば正反対になる支離滅裂で意味不明のコラム『水説:比較優位とTPP』を書いたのでしょう。

『ブードゥー教経済学池田信夫の比較優位論』

『無制限の規制緩和』が格差拡大やワーキングプアの大量発生など間違いであることが証明されている新自由主義のミルトン・フリードマンを、未だに『最強の経済学者』として信奉する目の前の事実が見えない自称マクロ経済学者の池田信夫が、今回は比較優位論を絶対視して『リカードの比較優位も知らないのか』と、TPPに反対する人々を口汚く罵っている。
比較優位とは、巨大な対象を扱うマクロ経済学ではなくて、その正反対の微細な経済単位が対象の経営学の御粗末な誤用である事実に気が付かないふりを装う。
リカードの比較優位が成立する為には、完全雇用とか為替の完全な固定相場制とか人口増加率がゼロであるなど形而上学的な絶対にありえない経済モデルを採用した時だけ限定的に成り立つが、普通はその逆で成立しない。
貿易で一国が大きな貿易黒字を得る場合、その相手国は輸入超過となって貿易が赤字になる。
貿易収支(赤字か、それとも黒字か)に限ればグローバリストの好きなWin-Win はない。
片一方が黒字なら、片一方は必然として絶対に赤字になる。
相撲の白星の数と黒星の数が必ず『同じ』であるように国家間の貿易でも原理は同じで、それ以上でもそれ以下でもない。
例外は一つも生まれない。
この事実は中学生でも気が付くが、池田氏は『リカードの比較優位の原理を知らないバカ』と罵るばかりで、この子供でも判る論理には絶対に答えない。答えたくとも答えられないのですよ。
池田信夫は、
『日本のような製造業に比較優位をもつ国が農産物に高率の関税をかけて農業を保護するのは、製造業を犠牲にして世界経済を収縮させているのだ。
このとき貿易黒字になるか赤字になるかはどうでもよい。』と、無茶苦茶である。
経済学では、経常収支の『赤字』は大問題である。
日本を除く世界各国の普通の政府も同じで、池田信夫的には『どうでも良い貿易などの経常収支の大赤字』を問題とするのですよ。
そして今世界経済の大問題のアメリカのデフォルト危機や欧州のPIIGS諸国のソブリンリスクも同じで、各国の抱える大赤字が全ての原因である。
勿論オバマアメリカ大統領のTPP推進の目論みも全く『同じ』である。
日米の倍近い貿易不均衡の是正(アメリカの大赤字の解消)であることは論を待たない。
『貿易黒字を目的にするのは17世紀の重商主義で大間違いである』と主張する池田信夫の非科学性には呆れるばかりで、科学的に正しいものは時間には無関係である。例え17世紀の欧州であれ紀元前のギリシャであれ、正しいものは正しい。
まともな国家(政府)なら貿易赤字を忌避し黒字を目指すのは、力士が白星を目的に土俵に上がるのと同じで、(八百長を除けば)時代に関係ない絶対的な真理である。
21世紀の今でもアルキメデスの原理は矢張り正しくて、否応なく誰も逆らえないのですが、今とは大違いのアメリカが絶対的な比較優位を保持していた時代のポール・サムエルソンの『経済学』など、今では誰も信用していない。
サミュエルソン『経済学』の明確な間違いが、半世紀の時間の検証によって証明されているのです。

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24 コメント

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比較劣位論 (勝手に狂人にされた凶人)
2011-11-18 13:51:43
比較優位論があるなら比較劣位論も考えないとバランスが悪いですね。
凡庸な労働者が一杯いて労働力が余っている場合比較劣位の者は労働で稼ぐことが出来なくなりますね。
トータルで物を見ず、自分の都合でしか物を考えない困った人たちが引き起こしている問題でしかないですね。
机上の空論にもなっていない、比較優位 (宗純)
2011-11-18 15:21:28
はじめまして。コメント有難うございます。

社会科学の経済学ですが、これはマクロな対象を『マクロなまま』で扱う広角レンズのような広い視野が絶対に必要な学問であるのです。
ここが、自然科学の多くの例のように大きな対象物を部分部分に分解して出来る限り小さな対象として扱う手法とは、そのやりかたが大きく違うのですね。
この部分を慣れないと勘違いする。
自然科学は、例えば人を部分部分に分解して最後は細胞から遺伝子、DNAの塩基配列にまで分割して精細に顕微鏡的に調べるのが所謂科学のもっとも得意とするやり方なのです。この手法で自然科学は大いに発展することが出来た。
ところが社会科学とは『社会』を丸々の状態で対象とする手法であり、分割した段階で元々持っていた本来の意味を失うのです。
微細な部分を問題とする顕微鏡的な発想の正反対の、ワイドな天文望遠鏡的な発想が必要なのです。
サミュエルソンの『経済学』のタイピストの例はお粗末の極みであり、これは経済学ではなくて陳腐な経営学の程度。
ポール・サミュエルソンは悲しいかな『経済学の何たるか』を理解出来ないのですよ。
あるいは知っていたが、あえてアメリカの為に真っ赤な嘘を言ったのです。
当時はアメリカを除く世界中の先進国は例外なく戦争で破壊され尽くしていて、アメリカの絶対的な比較優位の状態であってのですね。
経済学的に見れば、この比較優位なる発想が、『何を意味していたか』誰にでも判る筈であるのですよ。
比較優位など経済学的に見て、こんなものは悪いブラックジョーク程度であり、経済学の定説でも学説でもありません。
実際の世界の経済の現場に少しでも当てはめて比較優位論を考えれば、別に経済学者でなくても誰でもが、その可笑しさに気が付く程度のインチキ理論の詭弁の失敗例ですね。
利他ではない合理的理由による社会性 (凶人)
2011-11-19 11:16:44
自分の都合でしか考えない人間は自分の欲望に対してストレートで、自分の行動リソース(資源、問題解決能力)を自分のこと以外に散らしてしまうことがありません。
人のことや自然のことまで考える人間は色々なところにリソースを散らしてしまうので短期的には劣勢になります。だけれどリソースを他に散らしてしまうもの同士がお互いのリソースを交換しつつ育てているのだとすれば散らしても結果的にそれが成長して返ってくることになり社会的に発展していきます。
もっともそんな中で他人から与えられたリソースを自分だけの物にしてしまう人間が多くいるとそいつらが太ることでシステムとして破綻していきます。

賭場で一人が完勝してしまうとそこでゲームが終わってしまい続けられなくなります。ゲームを続けるためには絶対的な勝者がいることは都合が悪いのです。

お金の使い方と働き方は非常に重要にです。お金の使い方が悪いとその結果としてろくでもない結果を招きます。例えば余ったお金を儲かるからという理由でろくでもない投機会社に運用させた場合その結果が社会に跳ね返ってきます。また反社会的な勢力にお金が渡るような使い方をした場合、結果的に反社会勢力を育てていることになります。
また働き方にしても詐欺スレスレの会社に勤めて優秀な成績を上げることは社会に大きなダメージを与えていることになります。このように個々のレベルでの動きの積み重ねでも社会を変えることになります。

つまり、ミクロ、マクロ両面から、また多面的に物事を見る能力が必要なのですが人間の能力が追いついていない。また下種な人間が人類に一杯いてそれらが問題を引き起こしている。根本的に人間の性質的、遺伝子的限界にぶち当たっているのではないかと思います。

素晴らしく優秀な指導者が出てきて民をいい方向に引っ張ったとしてもその凄さを理解しない民だらけなら詐欺師が出てきて「あなたたちの指導者は実は悪人だ。あなたたちはもっといい生活が出来る。」とアジ演説を行った場合、構造理解していない民は「そうだったのか。」と優秀な指導者を潰してしまうのではないでしょうか。

という感じで人間の質自体の向上がない限り問題は永久に解決しませんね。ところが人間の質は古来から殆んど変わっていないのです。遺伝子レベルで決定していることですからね。幾ら積み重ねでテクノロジーが発展しても、歴史的失敗を繰り返しても問題が一向に解決しそうもないのです。システムの問題以前に人間自身の問題をきちんと認識しないと似たような現象を未来永劫続けることになるのではないでしょうか。
済みません。 (農婦)
2011-11-20 00:29:46
お久しぶりです。また宜しくお願いします。
長すぎるのと短すぎるのと (宗純)
2011-11-20 16:43:32
凶人さん、農婦さん、コメント有難うございます。

『帯に短し襷に長し』で一方は長すぎて意味が良く判らないが、もう一方は短すぎて良くわからない。
ブログ記事のコメント欄なのですから、あれもこれもではなくて、もう少し文章を纏めて頂いてもらうとあり難い思っていたら、次に送られてきたコメントは省略しすぎている。
これからも宜しくお願い致します。
毎日新聞コラムで、弁護士とタイピストの話で、日本では誰も納得しなかったとの逸話ですが、これはこんな子供騙しのインチキ話に納得するアメリカ人の方が異常であり経済学の基礎を理解していない。
この話は矮小な経営学としても間違いで、ましてやマクロの国家の経済学ならインチキな詐欺話にもならないお粗末さ。この程度の人物にノーベル経済学賞を出す方が恥ずかしいですね。
日本人なら、サミュエルソンの「経済学」のこの弁護士の例え話の間違いに直ぐに気が付きます。
誰も納得しなかったとは、平均的な日本人の経済学に対する基礎知識が、アメリカ人よりもはるかに勝っている証拠ですね。
Unknown (茶)
2011-11-21 13:04:16
比較優位がおかしいのは理解できますが、コンニャクイモ関税1706%が正しいのかというのも疑問です。

100%鎖国するのもまずいし、100%開国するのもまずい(本文の自動車産業の例のように、産業の育成や、為替格差がひどいと一方的に仕事が流出する)ような気がします。

日本は(開国-鎖国)は(コンニャクイモなどの一部を除いて)かなりベストの状態になっているのでしょうね。
政治力の差なのか? (宗純)
2011-11-21 15:59:32
茶さん、はじめまして。コメント有難う御座います。

コンニャクイモですが、日本国の生産地は粗群馬県の中山間地の畑作に限定されている作物で、群馬県と言えば小渕恵三や中曽根康弘、福田康夫と福田赳夫親子など何故かここだけ首相を輩出している。
中山間地の畑作ですが、作物が限定されるので普通なら農業経営が成り立ち難い。
それなら政治的な意味でコンニャクが守られているのでしょうね。
コンニャクですが食物として特殊な存在で外国でも生産されるが、他の食物とは大違いで市場があるのは日本だけらしいですよ。そして日本国内で9割りが生産されている。輸入は1割程度。
ただし、これはカロリーが粗ゼロですから農水省の行っているカロリーベースでの食物自給率の計算には一向に貢献しないのではないでしょうか。人事ながら心配になる話です。
食料品とは今でも鉄や燃料以上の最大の戦略物資であり、アメリカなど覇権国家はその事実を良く知っており世界支配の道具として自国の農業の力を使っている。
日本のコンニャク産業のように、そのアメリカが国内産業の例外品目としてなりふりかまわず保護しているのがフロリダ州の砂糖産業なのですが、これを握っているのが反カストロの亡命キューバ人。そのために他の州のコンビに強盗は拳銃だがフロリダ州は自動小銃などで重武装しているのでおそろしとの話も出ていますが、アメリカの場合も矢張り原因は政治問題(軍事や外交)ですね。
ものづくりの基本を疎かにしたアメリカ (宗純)
2011-11-21 17:17:31
秋風さん、はじめまして。

現在のアメリカですが、日本以上に国内の製造業が空洞化していて、競争力がある(比較優位の)産業はアップルとかマイクロソフトなどITとか保険や金融商品などの実体が無い知的財産権みたいなものがほとんどなのです。
幾ら隆盛でもこれ等の産業での雇用は限定的で、製造業と違い大幅に小さいと考えられます。
アメリカが唯一比較優位な商品が農産物ですね。
工業製品では日本人が欲しがるような商品をアメリカでは作ることが出来ないのですよ。
日米両国ですが輸出入額の差が、ほぼ倍近い不均衡が起きています。
この状態が何十年も続いているのですから、累積の赤字額はアメリカにとっては大問題なのです。
>『お互いの持ってるものを交換することはWin-Winの関係なんじゃないの?』<
それは昔の外貨が無かった時代の貿易形態であるバーター取引とかバター貿易という物ですよ。
今のような極度の金融資本主義が発展している時代とは大違いで、昔は外貨が無ければ幾ら欲しいものが目の前にあっても、お互いの持っているものの交換でしか絶対に買えない仕組みだったのです。
このバーター方式なら誰も黒字にならない代わりに、今のように付けが溜りに溜って絶対に返せない膨大な赤字に苦しむことは無かったのです。
しかし冷静になって、良く考えて見れば、この『金が無ければ買えない』というのは、実は当たり前であり常識だった筈なのですよ。
金も無いのに『欲しいから、必要だから』と付け(借金)で買った無茶苦茶の当然の報いが、今大問題になっている欧州のPIIGS諸国やアメリカのソブリン危機ですね。
借金とは、いつかは全額返すか破産するかの、二つに一つの解決方法しかないのですよ。
それ以外の解決方法はないのです。
>『経常赤字と財政赤字を混同してるのもおかしい』<とは、
秋風さんの疑問は、日本にだけ例外的に当てはなりますが、
実は日本以外の外国では例外なく全てが経常赤字と財政赤字の両方の赤字に苦しんでいるのですよ。
これは例外なく、経済学的に必ずそうなるのですね、
今の日本国ですが、通常の経済学の常識では経常収支が黒字(その国の経済が正常に運営されている)の場合には、戦時以外ではこの様な赤字には絶対にならないのです。
日本国の赤字ですが、これは資産課税を意識的に惰って作られた政治的な結果です。
我が日本国は財政赤字だが、それ以外の家計も企業も膨大な黒字を溜め込んでいるのですが例外中の例外で普通は起きません。
日本国の国債などの債務ですが、ある意味ではそれで何とか経済的な危ういバランスを取っているのですね。
日本政府が、もしも何百兆円も国債を発行して日本国内の余った使い道の無い資産を吸収しなかったとしたら世界中に余ったジャパンマネーが還流して世界経済は今以上に恐ろしい状態になっていたでしょう。
97年に起きたアジア通貨危機も日本国内で消化できないで溢れたジャパンマネーが投機筋に回されて大騒動が起きていた可能性があるのですが、金の無いのも困るが、余った使い道の無い金の存在も矢張り同じように危険なのです。
Unknown (茶)
2011-11-21 18:33:30
『Win-Win はない。』に食いついている人がいますが、直後の文を見ればこれが何を意味しているのか明確にわかる。直後に書かれている文は『片一方が黒字なら、片一方は必然として絶対に赤字になる。』ここでは『黒字=Win』として表現されているに過ぎない。

で、貿易赤字が莫大な額になるのは避けなければいけない。という流れで書かれているように見えます。

で、関税にはいくつかの機能があるが、貿易赤字が膨らむことのガード機能も持っているので
「無条件で関税取っ払え」のごとき主張は浅はかすぎるみたいことだと理解しています。
国内平和が半世紀以上続いた副作用か (宗純)
2011-11-22 15:28:43
秋風さん、コメント有難う御座います。

工業製品でも農業製品でも共通して、消費量よりも大量に作ると余って在庫になり、在庫が溢れれば生産費に跳ね返り、生産者が結果的に困ります。
ですから、一番効率が良いのは予想される消費量だけを生産すれば、無駄が省けるのです。
ところが市場経済の資本主義経済では、原理的に必ず余分に生産されます。
ソ連型の社会主義では予想よりも必ず生産が追いつかずに物不足が蔓延して人々を苦しめたのですが、資本主義では『もの余り』の発生が人々を苦しめる。
定期的にモノ余りが極大化するので、経済恐慌が起きるのですね。
経済とは需要と供給の両輪が上手くバランスの取れている状態が最良なのです。ところがこのバランスが案外難しい。
この経済のバランスを考えるのが経済学なのです。
産業革命のイギリスでは機械製の大量の綿織物の在庫があったのですが、インドの関税権を奪うことで自由に輸出することが出来て、結果的にインドは経済が崩壊し植民地化されてインド産の食料でイギリス人が飢えなかったが、
その逆で多くのインド人は飢えに苦しんだのです。
インドの植民地化以前のイギリスでは自国で小麦などの食料を自給していたのですが、地主は安いインド産小麦の国内流通で競争力(比較優位)を失い、農地を囲い込んで小作農を追放して牧草地にして仕舞ったのですよ。
今までのように農地を耕す為には沢山の農民が必要ですが、羊の放牧なら数匹の牧用犬で代用出来るのです。
農村を追われた農民が都市に流入して貧民化して、大勢の労働者階級が生まれたのですが、これが150年前のマルクスが資本論を書いていた当時の世界情勢ですね。
リカードの比較優位論などは、安い労働力を手に入れた資本家や地主のイデオロギーのプロパガンであり、彼等にとって正しくとも、それ以外の大勢の人々にとっては『悪魔の囁き』以外の何ものでもなかったのです。
コメントにも書いたように貿易が、
『お互いに貿易すれば両者得するWin-Winの関係』とは、今のような貿易ではなくて一昔前の物々交換のバーター貿易のことですよ。
バーター取引は基本的に物々交換が原則なので、双方が黒字にも赤字にもならないのです。

それにしても貿易や外交が、原子力発電と同じで上手くやれば利益が出るが、基本的に大きな危険性があるとの認識が完璧に欠如している様は異様であり暗澹たる気持ちにさせられます。
世界は善意だけで出来ている訳ではないのですよ。
プロイセンの戦略家クラウゼヴィッツは「戦争論」で戦争とは政治経済の延長であるとしているのですが、この戦争論の論理が正しいなら間違いなく、政治経済(貿易)とは実弾を伴わない戦争行為なのですよ。
大きな魅力がある反面、恐ろしいのだとの認識が一番大切でしょう。
残念ながら秋風さんには(平和の時代なので仕方が無いとも思うが)この視点が完璧に欠落しています。

経常赤字と財政赤字ですが、これは同じもののコインの裏表であり、通常は必ず一致するものなのですよ。
世界では一致しているし日本も20年前までは一致していたのですね。
違っているのは我が日本国での20年間だけが例外であるのです。
その国の経済活動が正常(経常収支が黒字)なら、国家の財政も正常(黒字)になるのが基本的な経済原則であり、一つの例外も生まれない。
その不思議な奇跡・例外が今の日本であり、普通この様な不思議なことは他国では膨大な戦費が必要な『戦時中』にだけ一時的に短期間起きる特殊例なのですよ。
ここからは私の推測ですが、
普通なら戦争中にしか絶対に起きない特殊な状態に、今の日本が20年間も陥り抜け出せないでいるのですが、
ここで発想を転換して『日本は戦争の真っ最中である』と看做して今の日本国の経済の状態を観察すれば、実は全ての政治や経済の辻褄が合うのです。
唯一の世界帝国(超大国)アメリカですが、常に実力が二番手の国家を相手を戦争を行うことで、繁栄してきたのです。
落ちぶれた世界帝国に対する対スペイン戦争の次には第一次世界大戦のドイツ帝国、第二次世界大戦のナチスドイツの勝利後には間髪をいれずに、タイムラグ無しに同盟国だった実力NO2のソ連に対して終わらない戦争だった冷戦を始めている。
冷戦ですが、実は何の意味で行ったのかが、判っているようで判っていないのですよ。
アメリカは旧敵国の日独伊には援助して復興を助けたが、それまでの同盟国ソ連に対して経済封鎖で敵対したが、
これは正反対の逆(ソ連を助けて日独伊を封鎖)でも良かったのですね。
アメリカの政策が大成功して20年前には仮想敵国ソ連がゲームオーバーで、とうとう崩壊してしまう。
其れ以降はアメリカには仮想敵国は存在しないのですが、それでは都合が悪いので10年前からは対テロ戦争でアルカイダなるものを仮想敵としているのです。
ところが仮想敵どころか、その存在自体が仮想では無いのかと今では疑われている。
そもそも国家で無い『仮想敵国』などの代用の紛い物で、インチキ臭いテロ組織など、超大国の相手では役不足ですね。
仮想敵国の条件とは、NO1のアメリカに次ぐNO2の実力が絶対の条件であり、これまでのドイツにしろソ連にしろその条件に叶っていた。
だから仮想敵国に成りえたのです。
ところが冷戦崩壊後に、最早軍事力でアメリカに正面から敵対しようなんて国は世界中で一つも無くなったのですね。
軍事では誰も勝負できないが、経済なら日本国がアメリカを脅かす実力を持っていた実力NO2の国家だったのです。(当時の中国は今の数十分の一の貧者)
20年間で中国は数十倍になり日本はデフレで停滞していて、とうとうお追い越されたのですが中国の驚異的な発展にアメリカの支援無しには絶対に不可能ですよ。
20年前の冷戦崩壊時に、良い悪いの話ではなくて、アメリカの仮想敵国の資格がある国は日本国以外には無い。
今の日本経済ですが、これは日本の政治家なり官僚なりが自主的に決めたものではなくて、アメリカの指示の通りに運用したら経済がとんでもないことになったのですよ。
今の膨大な財政赤字の原因ですが、これは逆噴射した当然の結果であり何の不思議も無いのです。
アメリカが冷戦崩壊後に直ぐさまソ連の次の仮想敵国に密かに日本を決めていた可能性が濃厚なのですよ。

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