逝きし世の面影

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「ショックドクトリン」としてのBI

2020年09月25日 | 政治

竹中平蔵氏が提案する「月7万円」のベーシックインカム論がヤバすぎる

9/24(木) 14:30 藤田孝典 | NPO法人ほっとプラス理事 聖学院大学心理福祉学部客員准教授

竹中平蔵氏のベーシックインカム論

竹中平蔵氏がBS-TBSの報道1930に出演して、ベーシックインカム論を提案した。

その内容があまりにも酷く、SNSなどで波紋、批判を呼んでいる。

ベーシックインカムとは、簡潔にいえば、すべての個人に無条件で一定額を継続して給付するという政策である。

ベーシックインカムの給付については、最低生活に必要な額が想定されている場合もあれば、そうでない場合もあり、論者によって様々である。

「ベーシックインカムを問い直す」志賀信夫(法律文化社2019)

竹中氏は以前より持論としてベーシックインカム構想に触れている。

その提案が菅首相との会食後のタイミングだったからこそ、注目されたのだろう。

菅義偉首相 就任直後に竹中平蔵パソナグループ会長と会食しないでください

竹中氏は「所得制限付きベーシックインカム」という独特の説明をし、マイナンバーと銀行口座をひも付けて所得を把握することを前提に、国民全員に毎月7万円の支給を提案している。その上で所得が一定以上の人は後で返すようにするというのだ。

竹中ベーシックインカムはここがヤバい

まずベーシックインカム導入と引き換えに生活保護、公的年金などの廃止、財源移譲がセットになっている。

生活保護は「最低生活保障+自立助長」の制度である。お金を渡すだけではなく、福祉的なケアや生活支援をセットでおこなう。

生活保護を廃止できる、と安易に考えているのであれば、福祉的なケア、生活扶助以外の医療扶助、住宅扶助、教育扶助などは支給しなくていいのだろうか。

とてもではないが、月7万円の金額では現行の生活保護を廃止できるほどの水準ではない。

単なる福祉削減の提案になってしまっている。

さらに、公的年金を廃止する際には、厚生年金も廃止するのだろうか。

厚生年金は月7万円以上支給されている人も多く、その年金で高齢者施設、介護施設などに入所している人たちも大勢いる。

一律で月7万円支給して、各種年金制度、社会保険制度を廃止するなら文字通り、路頭に迷う人々が出てくるだろう。

そもそも支給されている年金の大幅な不利益変更など認められるわけがない

そして、竹中氏はベーシックインカムには所得制限を設け、所得が一定以上の人は後で返すようにするという。

前述の志賀信夫氏によれば「ベーシックインカムとは、簡潔にいえば、すべての個人に無条件で一定額を継続して給付するという政策」である。

支給に所得制限が付いている時点で、すべての個人に無条件で支給することにはならず、ベーシックインカムの要件を欠く議論になっている。

それから、そもそも「月7万円」で基本所得、ベーシックインカムと言えるだろうか。

志賀信夫氏も「最低生活に必要な額が想定されている場合もあれば、そうでない場合もあり、論者によって様々である。」と言及している通り、支給金額は議論の余地がある。

しかしながら、生活保護も公的年金も廃止されて「月7万円」渡されても困る人は多いのではないか。

さらに、健康保険制度も解体されようものなら、たまったものではない。

国民年金での満額支給が7万円程度なので、この金額で十分だと言えるならば、高齢者の壮絶な貧困現場を見たらいい。

単身高齢男性のみの世帯では36.4%、単身高齢女性のみの世帯では、56.2%の凄まじい相対的貧困率を記録している(総務省2016)。

つまり、国民年金程度の支給金額では貧困に苦しむ人々を生むのであり、医療や介護需要が高まった際には生活保護が必要になる

しかし、その際に生活保護は廃止されているそうだ。想像しただけで恐ろしい。

いずれにしても、竹中平蔵氏のベーシックインカム論は雑すぎる。

菅首相と関係性も近く、社会的影響力があるのだから、大混乱を巻き起こさないためにも、もう少し緻密な構想を練ってから披露してほしいものだ。
9月24日Yahooニュース

ベーシックインカム導入は「ショックドクトリン」でやるべき=竹中平蔵 2020年7月13日 エコノミスト

<インタビュー「私が考えるベーシックインカム」>

 ベーシックインカムを支持する人の間でも、その目的や手法についての考え方はさまざまだ。財政や社会運動などの分野で幅広く活躍する4人の論者に聞いた。

(聞き手=市川明代/桑子かつ代・編集部)(ベーシックインカム入門)

── 本誌6月2日号で紹介した竹中さんのインタビューで、ベーシックインカム(BI)に前向きな発言をしたことに、ツイッターなどで大きな反響があった。

■そうだったんですか(笑)。新型コロナウイルスの感染拡大前から日本社会は大きな変動期を迎えていた。これまでは偏差値の高い大学を出て、大企業に入って管理職になれば安泰だったが、今はそういう人生の海図が描けなくなっている。チャレンジし続けなくてはならないが、チャレンジにはリスクがつきもので、「究極のセーフティーネット」が不可欠だ。BIは、究極のセーフティーネットだ。

── 特に若い人たちの間で、関心が高いようだ。

■今の若い世代には、そうした社会変動のリスクに加え、長生きのリスクがある。医療は進歩しており、彼らは私たちよりはるかに長生きする。どのように職を変え、そのためにどんなリカレント教育(社会に出た後の学び直し)を受ければいいのか、悩み続けなければならない。そういう中でBIが受け入れられているのだろう。

── 新型コロナ対策としての10万円の特別定額給付金が、BIへの入り口を作ったという声がある。

■新型コロナで世界中が異常な事態に陥り、現金給付をする国が相次いだ。日本はとにかく全員にということで、経団連会長にも配った。それが正しいことなのかという議論はもちろんある。

 今後、新型コロナの第2波、第3波が来れば、例えば毎月5万円を給付する必要が出てくるかもしれない。その際にはマイナンバーが重要になる。銀行口座とひも付け、高所得者には年末調整や確定申告の時に返してもらう。こうすることで事実上のBIになる。

生活保護は「不要」に

── 財源はどうするのか。

■基になるのは(米経済学者)ミルトン・フリードマンの「負の所得税」の考え方だ。一定の所得がある人は税金を払い、それ以下の場合は現金を支給する。また、BIを導入することで、生活保護が不要となり、年金も要らなくなる。それらを財源にすることで、大きな財政負担なしに制度を作れる。生活保護をなくすのは強者の論理だと反論する人がいるが、それは違う。BIは事前に全員が最低限の生活ができるよう保証するので、現在のような生活保護制度はいらなくなる、ということだ。

── 日本でBIを実現できると考えるか。

■非常に大変だろう。だからといって、少しずつ制度を変えようとすると、絶対に実現できない。既得権益を守ろうとする人たちが必ず出てくるからだ。(30年前にソ連が突然崩壊、大混乱時に)社会主義国が資本主義にショック療法で移行した時のように、一気にやる必要がある。今がそのチャンスだ

(竹中平蔵・東洋大学教授、慶応義塾大学名誉教授)

(本誌初出 竹中平蔵 ベーシックインカムは究極のセーフティーネット、今が一気に導入する好機 20200721)

 

悪魔の碾き臼新自由の大天使(魔王)ミルトン・フリードマンのベーシックインカムて何?

「れいわ新選組」の山本太郎のベーシックインカム(BI)は今の日本政府や財界が進める新自由主義の否定するところから出発している。ところが「難波の葦は伊勢も濱荻」の逆バージョンで、同じBIでも竹中平蔵のBIはタイトルだけが同じで中身も目的も逆さまだったとのオチ。

しかも30年前の冷戦崩壊時のソ連や東欧などの社会や経済の破壊のように「ショック療法で移行したように、一気にやる」「コロナの今がチャンスだ」とも言い切っているのですから何とも正直だ。(★注、一部平和裏に移行した国もあるがユーゴスラビアのように地獄の内戦やアルメニアとアゼルバイジャン、グルジアの南オセチアなど今も戦火が消えていない)

ただし、本当に「ショックドクトリン」でやる心算なら、今回の竹中平蔵のように「ショックドクトリンでやる」とは言わないのである。(★注、弱肉強食の資本主義の本質を知らなかったソ連や東欧市民のように、危険性を何も知らない相手が油断しているから奇襲攻撃の「ショックドクトリン」が成功する。「これから奇襲するぞ」と言って奇襲攻撃する馬鹿は世界中に一人もいない)

それなら竹中平蔵の「BIをショックドクトリンで実現する」は猫だましか、間違った結論に誘導する「赤いニシン」で全く別の目的が考えられるのです。

竹中BIは自民党菅内閣の不吉な観測気球?

竹中平蔵は自民党小泉内閣で閣僚を歴任しただけではなく現在も国家戦略特区諮問会議や未来投資会議と言った、市民の権利と生活に国家権力を通じて影響力を行使できる政府会議に、利害関係者の派遣会社パソナ会長でありながら民間議員として自民党政府と一体となって行動している半公人の政商。今回の年金や社会保障の廃止のインチキBIは菅内閣のアドバルーンとしてみるべきであろう。

菅義偉新総理のブレーン。デービッド・アトキンスの成長戦略とは観光と農業振興

デービッドアトキンソン(David Atkinson、1965年5月10日 - )は、イギリス 出身で日本在住の経営者。小西美術工藝社社長。三田証券株式会社社外取締役。 金融アナリストの経歴を持つ日本の観光・文化財活用・経済政策の専門家として観光業(インバウンド)の拡大。具体的には日本政府の観光局顧問に就任して最低賃金の大幅引き上げと中小企業の淘汰による生産性の上昇と、(今回の竹中平蔵のショックドクトリンでBIとは大違いで)一見すると素晴らしいことを主張している。

そもそも日本の中小企業は9割以上の圧倒的な多数派。従業員数全体でみても大企業は十数%しかないのですが「生命の多様化」と同じ原理で少数の大企業だけで成り立っているの欧米社会とは大きく違い、多数の中小企業の存在こそが日本経済の強靭さと柔軟性を担保していた。

David Atkinsonは「合併して無駄を省く」「余裕が出来て賃金も上がる」というが、合併される側には大量首切り(人員整理)が待っているし、「賃金上昇」は合併した側のごく少数である事実は黙っている。(★注、アトキンスが能天気な愚か者とも思えないので、それなら悪賢い詐欺師である)

1980年代にはアメリカを脅かす技術水準の自動車や半導体など最高レベルの科学や技術力をもった世界第二の経済大国だった日本が観光と農水産業など第三世界のモーリシャスかモルジブなどと同じ水準の目標を持つなど到底現実の話だとは思えない。アイスランドやニュージーランドは人口が少ないからで日本のような1億2000万もの人口大国ではそもそもが無理。(★注、新コロ騒動以前にインバウンドが多かった原因とはアベノミクスで円の価値が暴落して、日本が安上がりだから外国から観光客が殺到しただけ)

菅義偉の本当のブレーンは「ショックドクトリンのBI]の竹中平蔵ではなく「中小企業の合併。同一労働同一賃金と最低賃金引上げ」のDavid Atkinson

腹立たしい馬鹿話の竹中平蔵とは大違いで、デービッド・アトキンスの「中小企業の合併。同一労働同一賃金と最低賃金引上げ」は一見すると正しい「世界基準」(グローバルスタンダード)なのですが、ヒト・モノ・カネ・情報など全てが例外なく自由に国境を超える悪魔の碾き臼新自由主義と同じで、地獄への舗装道路のような恐ろしい罠でもある。(★注、中小企業の淘汰はともかく、「同一労働同一賃金と最低賃金引上げ」は政界最左翼の共産党など全員が賛成している)

職業に貴賤がある世界基準。職業に貴賤が無い日本独自の終身雇用と年功序列賃金とは一つのコインの裏表(低い最低賃金は側面)

日本独自の『年功序列賃金』(職能給)は、終身雇用と二つでセット。『一つのコインの裏表』の関係なので、決して別々には切り離せないのである。
いわゆる『同一労働、同一賃金』(職務給。あるいは成果主義の賃金体系)とは強者必勝、弱者必敗の悪魔の碾き臼「新自由主義」の一番大成功したスローガン(危険な罠)だった。
記述式試験では受験生よりも採点者の能力が問われるように、成果主義では余計に管理能力が問われる。(手間や経費がかかる)
このため職能給の日本以外の外国(職務給)では20年間も働いている超ベテランの中年熟練工も今日から仕事を始めた素人の若者も「同一労働」なら同一賃金。職業(職種)と収入(貧富)が一体構造。職業に貴賤がある厳しいの階級社会だった。

欧米社会の若者たちを一番苦しめているのが失業問題で、「経験」が無いので雇ってもらえないのである。その一番の原因とは世界基準の「同一労働同一賃金」であることは明らかなのである。(大相撲とか芸能事務所では初心者の衣食住の面倒を見るが金は最低額しか払わない仕組みだが、昔の職人の世界でも同じように「見習い」は低賃金であることが制度の基本構造。わが日本国では低い最低賃金が初心者全員の職業訓練(完全雇用)を可能にしていた。(★注、誰も言わないが世界基準とは大きく違う低すぎる最低賃金が、実は日本の失業率の低さの原因の一つでもあった)

本当は怖い「同一労働同一賃金」(職業で自動的に賃金も決まる過酷な世界)

労働者なら全員一目で『無茶苦茶だ』とわかる悪魔の碾き臼「新自由主義」の罠が、逆に高偏差値の左翼知識層は絶対に解らないらしい。(今の日本の左翼知識人全員が「同一労働、同一賃金」を主張している不思議。これ以上の卑劣な裏切りはない)フクシマの冷温停止状態宣言1周年の2012年12月16日に成立した第二次安倍内閣では「働き方改革」で与野党全員の賛成で「同一労働同一賃金」が法制化されている。

職業で「社会的身分」も決まっていたカースト制度

民主主義の手本ともみられている(法的には平等をうたっている)イギリスやフランスなど欧州諸国が厳しい階級社会であることは我が日本国でもよく知られている事実であるが、その一番の原因とは「同一労働同一賃金」なので職業で自動的に賃金も決まる(仕事を変えない限り収入が変わらない)社会なので、職業で身分が決まるカースト制と同じ仕組みが隠されていた。

アメリカの名門ハーバード大学のビジネススクール(MBA大学院)では日本の新幹線の掃除婦のおばちゃんが、自分の職業に誇りと責任を持っていることが驚きとして取り上げられているが職業に貴賤が無い(同一労働同一賃金が基本でない)日本では普通の常識で、わざわざ経営学修士(MBA)の学位が無くとも誰でも知っている。

 

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2 コメント

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新自由主義はヨーロッパカースト社会生まれ! (ローレライ)
2020-09-25 17:19:43
フリードマンやハイエクはヨーロッパ中東部のカースト社会生まれで旧オーストリア帝国のカースト社会のリバイバルが目的の奇人たちである。
Unknown (野次馬さんファン)
2020-09-27 08:59:56
いつも楽しく拝読させて頂いています。今回のお話も、気づきにくい視点を「気づかせてくれる」ものでした。ありがとうございます。ケケΦのやり方は私の趣味に合いませんが、一方では「自分はどちらの側に立つのか?」を突き詰めた結果としておそらく確信犯的に行動している点、においては一目置くべきと感じています。グロバーバリズムをどう受け取るか?どう対峙していくか?は、結局、合理と感情の反発、集団と私の相反というような言わば「人間の業(人間的な、人間そのもの)」に帰着するよう気がします。

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