逝きし世の面影

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アメリカ軍、パキスタン領で初の地上作戦

2008年09月05日 | 軍事、外交

4日付の米紙ニューヨーク・タイムズは、ヘリコプターで運ばれた米軍特殊部隊が3日、アフガニスタン国境に近いパキスタン北西部の村に潜んでいた国際テロ組織アルカーイダ要員を攻撃したと報じた。
米軍がパキスタン領内で地上作戦を実施したことが公になったのは初めて。
米国防総省当局者は「報道を否定するか」との共同通信の質問に「コメントしない」と述べた。


イスラマバードからの報道によると、今回の作戦で女性や子供ら20人が死亡。
パキスタンのクレシ外相は「米国の主権侵害」と非難し、対テロ協力をめぐる足並みの乱れが表面化した。
また同紙によると、ゲーツ米国防長官は過去数カ月間、米特殊部隊によるパキスタン領内での作戦を認めるよう政権内で求めており、米高官は今回がその始まりであることを示唆した。(共同)



米軍幹部が増派要望

アフガニスタン東部で作戦に従事している米陸軍第101空挺師団のシュローサー司令官は5日会見で、武装勢力による攻撃が今年に入ってからの約8カ月間で、昨年1年間と比べ「20-30%増えている」と述べ、部隊増派を求めた。
司令官は、パキスタンの部族地域やアフガン東部ではアルカイダのほか、イスラム原理主義勢力タリバンやパシュトゥン人武装勢力など「多くの異なる敵対勢力」が活動しており、その数は「7000-1万1000人」に上ると指摘。

ロイター通信によると、マレン統合参謀本部議長は十日、米下院軍事委員会で「より包括的な戦略」が形成されつつあると証言し、パキスタン領内の作戦に言及していました。





『米軍の「一方的行動」批判』 地上作戦でパキスタン大使

パキスタンのハッカニ駐米大使は5日、ワシントン市内で、米軍が3日、アフガニスタン国境に近いパキスタン北西部の村で対テロ掃討作戦を実施したことを確認した上で「米軍の一方的行動はパキスタン国民を激高させるだけで『テロとの戦い』の助けにならない」と批判した。

大使は米軍が今回の作戦を通じ「得たものは何もない」と述べ、国際テロ組織アルカイダ幹部の拘束など目立った成果はなかったとの見方を示した。



『パキスタン政府、軍が反発』

パキスタン紙によると、ギラニ首相は十一日、「国境を守るすべての可能な措置をとる」、「パキスタン領内でさらに攻撃するという米国のマレン統合参謀本部議長の発言に国民は動揺するべきでない」と述べました。
 
パキスタンのキアニ陸軍参謀長が同日、米軍の越境攻撃について声明を発表。
声明は、「国家の主権と領土保全はどんな犠牲を払っても守られるもので、いかなる外国軍隊もパキスタン領内での軍事作戦は許されない」、「(米国などの)連合軍がわが国の領土内で作戦をおこなうという合意や了解はない」と指摘した。

アフガニスタン駐留米軍の特殊部隊は三日、パキスタン北西部南ワジリスタン地方を越境攻撃。女性や子どもを含む二十人が犠牲になった。
キアニ氏の声明は、今回のような「無謀な」行動は国境地帯での過激派の活動をあおるだけだと警告した。
「対テロ戦争」の最前線で指揮を執る軍トップが声明を出すのは異例。

ブッシュ米大統領が七月、パキスタン政府の事前了解のないまま、同国内での米軍特殊部隊の地上作戦実施を認める命令を秘密裏に下していた。




2008年09月05日
〔アフガン〕多国籍軍が国境の村の住民少なくとも15人を惨殺
アフガニスタンに駐留しているNATO主導の連合軍が、パキスタン領の南ワジリスタンに越境攻撃を仕掛け、国境の村Angaoradaの住民少なくとも15名を惨殺。

3軒の民家をガンシップ・ヘリコプターで襲い、女子供を含む3家族15名を惨殺。
(パキスタン紙「The News」)
3日の地上作戦以降、4日、5日と連日戦闘ヘリによるアフガン駐留多国籍軍によるパキスタン領への越境攻撃が続いている模様。






『最悪のタイミング、ラマダン初日の越境攻撃』

今までもパキスタンの部族地域に対する米軍の無人機による高空からのミサイル攻撃が頻発しパシュトーン人住民の怨嗟の的になっていた。
それにしても余りにも進攻した時期が悪すぎる。
わざとイスラム教徒を侮辱するが如き行為で、米軍は紛争の収束ではなく拡大を狙っているのか。
ベトナム戦争でも米軍が泥沼にはまり込んだ時に、ラオスやカンボジアに戦線を拡大し収集不能に陥ったが、40年前の教訓は何処にいったのだろうか。?

パキスタン、アフガニスタンでは9月2日からイスラム教徒にとっては最も大事な「聖なる断食月」が始まった。
敬虔なムスリムは断食月には争いごとを避け、心静かに暮らさねばならない。
今まで激しい戦闘が行われている北西辺境州でも、断食月間中はパキスタン軍による戦闘を停止すると政府は表明しており、武装勢力側も歓迎していた。

よりによって宗教的に一番タイミングの悪い「聖なる断食月」の初日に、米軍の特殊部隊は、パキスタン領内に初の越境攻撃を敢行して地上作戦を行った。 
米軍は『如何すれば紛争を終結させられるか』ではなく、『如何すれば戦争を拡大できるか』と腐心しているとしか思えない野蛮な愚行である。

コメント (9)    この記事についてブログを書く
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9 コメント

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どこまでバカなのか (ましま)
2008-09-05 11:40:28
とうとうやりましたか。<国際法無視と最悪のタイミングと泥沼>アメリカには優秀な専門学者がすくなくないようですが、最後の結末を予測した上の軍事行動でしょうか。
日本の関東軍みたい (ブログ主)
2008-09-05 14:06:42
アメリカ国務省にはイスラムの判る優勝な中東専門家いるが、アメリカ軍の中東専門家とは其の反対のイスラエル人脈絡みで、『如何すればムスリムが怒るか』『如何すればムスリムに暴走させれるか』が一番の関心事らしい。
相手を怒らせて先に手を出させ、正当防衛を主張して戦争に勝つのがアメリカ軍の常套手段です。
彼我の力関係に圧倒的な差が有る場合には、この方法が一番有効。
このやり方の戦争でインデアンに勝ち、スペインに勝ち、メキシコには何度も勝ち、日本にも勝ち連戦連勝負け知らず。甘い勝利の味は忘れられない。
朝鮮ベトナムと続けて勝てなかったが、あの戦争は無かった事にして、三度目の正直で今度のアフガン戦争では勝つ心算なんでしょう。
しかし第二次世界大戦以来、本格的な地上戦では世界最強のはずのアメリカ軍は一度も勝てないんですよ。
二度有ることは三度有る。
19世紀に最強の海軍力の世界帝国のイギリスがアフガニスタンだけには負けてしまった。
20世紀には最強の陸軍戦車隊を持っていたソ連軍がアフガンに負けて国家までが崩壊する。
21世紀に今度は史上最強の空軍力のアメリカが負ける順番ですね。
最近のアメリカは (恒久)
2008-09-06 06:26:57
自ら望んでいるかのように国家破綻への道を突き進んでいるような気がしますね。
仮にアメリカがそのようになってしまったら独立国家なんて名ばかりでまったく自立できていないアメリカによる保護国であり追従国家の日本は大変なことになってしまうのではないでしょうか?
対米従属を止めれば (ブログ主)
2008-09-06 17:29:55
昔は日本人がアメリカに食わして貰っているが如き論説が散見されたが、今の日米関係は逆に成りアメリカの経済も軍事も、日本が犠牲になった支えているのが実情です。
日本の金が無ければアメリカ経済は崩壊するし、アメリカ軍も動きが取れない。
日本人がアメリカに食わしてもらっているのではなく、アメリカが日本に養ってもらっている。
面倒見てもらっているアメリカが、大きな顔をして真面目に働いて稼いでいる日本がご主人様の顔色を何時もうかがっている。
沖縄の普天間の海兵隊基地もアメリカ領のグァム移転にジュゴンの珊瑚礁を犠牲にしてまで抵抗しているのは対米従属命の日本側ですよ。
尽くしすぎる女は大事にされず邪険にされる。
出て行くかもしれないヤクザのヒモにしがみ付く年増の売春婦の如き見苦しい有様です。
独立宣言を! (あくつ)
2008-09-07 00:11:03
>尽くしすぎる女は大事にされず邪険にされる。

これって熟年離婚の原因かも。日本もそろそろ三行半を投げつけるときですね。
「世界から戦争をなくすために」でなくて「世界から戦争をなくさないために」動いているんでしょうね。いったい後ろにいるのは誰なのか、何なのか。
63年も続けていると (ブログ主)
2008-09-07 09:02:13
物心が付いた子供の時から対米従属しか知らない自民党政治家は、それ以外の世界が世の中に有るのが理解できないのでしょう。
自民の麻生なんかから見れば今でも無敵のアメリカが見えるのでしょうが、しかし現実のアメリカの力はベトナム戦争当時と比べると見る影も有りません。
沈む行く不沈戦艦。
今のアフガン、イラク戦争に突き進むアメリカは破綻確実、片道の燃料で沖縄戦に特攻出撃した戦艦大和の国家版で、遅かれ早かれ必ず沈没します。
売国自民党が幾等対米従属を続けたくても、肝心の乗っているアメリカ丸が沈没すれば嫌でも自分で大海に泳ぎださざる終えない。
Unknownさんへ (ブログ主)
2008-09-09 08:45:42
コメント有難う御座います。
当ブログでは今まで、タイトル名も名前も無いものや表示されていても通りすがり等個人が特定だれていないもの、不真面目と看做したものはブログ主の独断で削除しています。
このコメントは、残念ながらこれ以上掲示できません。
良好なブログ環境維持の為ですので、コメントしていただく読者の皆様には何卒協力のほどを宜しく御願い致します。
これでいいかな。? (騎兵隊)
2008-09-09 09:56:45
アメリカは戦火の拡大を狙っているのでしょう、イラク戦争は軍事産業にとって大成功であったのですが一応落ち着いてしまいましたので今度はパキスタンに対し軍事作戦を展開するのでしょう。 大統領の退任、インドの核兵器承認と着々と準備は整っています。 その米国にまた日本は多大な資金援助をさせられるという構図は変わりませんね。


これでいいかな。?
良く分からない アメリカの目的 (ブログ主)
2008-09-09 16:29:00
日本は、単純で何を目的に何をするのか判り安いので、相手に裏をかかれると大概は失敗する。
しかしアメリカは右手と左手のすることが正反対の事をする。何を目的にしているのかが簡単には推察し難い。
北朝鮮に対しても米朝協議を成功させようとする国務省と混乱させようとする財務省、先を読むのが難しい。
レーガンのやった冷戦終結は軍事産業にとっては致命的で、冷戦華やかなりし時は第三次世界大戦仕様の戦略原潜なんかを毎年毎年何艘も就航させていたが、今の対テロ戦争程度の軍事作戦では、幾等頑張って戦争しても金の額がしれている。
アメリカは世界最終戦争用の兵器の製造(ものづくり)の様な第二次産業(生産業)ではなく、民間軍事会社(サービス業)のような第三次産業(消費に)シフトしてしまっている。これでは幾等金を注ぎ込んでも産業界全体に恩恵は広まらない。
対テロ戦争はやればやるだけ関係者全員が貧乏になる不思議な戦争です。
明らかに失敗が見えている、パキスタン進攻なんかは其の見本です。

私はグルジア紛争もパキスタン地上戦もアメリカ大統領選挙絡みではないかと思っていますが、正確には何が目的なのかが判らない。
ブッシュ政権はアメリカの覇権を潰す事が目的の隠れ多極主義者だとの田中宇の解説もまんざら嘘でも無いように思えるほども不思議さです。
目的は判らないが、帝国としてのアメリカの敗北、崩壊だけは確実ですね。

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