逝きし世の面影

政治、経済、社会、宗教などを脈絡無く語る

ドルやユーロより潜在的に何倍も危ないイギリスポンド

2012年01月02日 | 経済

Business Insiderのグラフは先進国の総債務、家計(青)、政府(黄色)、金融機関(緑)、金融以外の民間(水色)
政府債務(黄色)だけなら日本が200%で一番比率が高いが、イギリスの金融機関は対GDP比で600%の突出した債務(緑色)を抱え総債務では対GDP比では900%超の世界一の超借金大王国

『ユーロ急落、百円割れ11年ぶり安値』

12月29日の外国為替市場は、欧州危機への懸念が再燃してユーロが円やドルなどの主要通貨に対して急落。
ロンドン市場で円相場は一時、1ユーロ=100円06銭前後まで上昇し、2001年6月以来、約10年半ぶりの円高・ユーロ安水準(2011年12月30日)
2011年の最後の取引である30日のニューヨーク外国為替市場で、円は対ユーロで一時、1ユーロ=99円47銭まで上昇。
2000年12月中旬以来約11年ぶりの円高・ユーロ安水準となる。
午後5時(日本時間31日午前7時)、前日比96銭円高・ユーロ安の1ユーロ=99円60~70銭で取引を終えた。
円は対ドルでも買われ、同時刻現在、72銭円高・ドル安の1ドル=76円86~96銭で取引を終えた。
欧州の財政・金融危機(ソブリン危機)が長期化、深刻化する中、ユーロ圏諸国の国債を『格下げ』する動きが、今回のユーロ売りを誘った。
欧州諸国だけではなく、アメリカではオバマ政権の財政再建策に反対する議会多数派の野党共和党の抵抗が続くとの見方からドルを売る動きも同時に出た。
為替市場では年明け以後も現在の深刻な『円高』が続くと見られる。(2011年12月31日)

『賭博に限りなく近い、マネーゲームとしての金融』

対DGP比では1929年の世界大恐慌時を遥かに上回るアメリカの個人と企業と政府の三つ子の史上最大の債務増大でドルが危ない。
ギリシャなどPIIGS諸国のデフォルト(債務不履行)目前でユーロが崩壊寸前の危機的状態である。
日本の国債発行などによる政府債務が対GDP比で200%で世界一で、政府の財政が危機的状況であると騒がれているが、何事にも上には上がある。
総額でGDPの9倍以上もの天文学的な債務を抱える危機的状態のイギリスが何故か『危ない』との声が聞こえないが、世界中で断トツで危ないのはGDPの6倍もの金融機関の積み上げた債務の存在であることは間違いないであろう。
ギリシャのような1年間で4割を越える闇金並の国債金利は異常であり『これから破綻する』のではなくて現在が破綻していると見るほうが正しいが、それ以上に金融的に危ないのがイギリスである。
今のように債務の返済を、債務の増大で解決する手法は何時までも出来ないのです。
かならず借金(債務)は、何時かは全額返すか破綻するかしか選択肢は無いとの当然の話を忘れているのでしょうか。
不思議な話である。
英国が日本の様な『ものづくり』大国ではなくて金融大国である事実は誰もが知っているが、その『金融』の実体は自分の資産(金)の範囲を必要な人に貸し付ける地道な商売ではなく、他人の金を借りて(債務)その金をマネーゲームとして別の他人に貸し付けて(債権)、その差額を稼ぐという際どい綱渡りに近い自転車操業なのです。
社会にとって必要な量の金融取引の範囲を逸脱した膨大なマネーゲームの実体は、投機など限りなく賭博行為に近いのが、その実体である。
イギリスが行っていた金融賭博ですが、今までどうり貸した金が返ってくれば何の心配も無い。
しかし運悪くユーロやドルの金融危機で何処かが破綻(デフォルト)して金を返さなければイギリスが構築した完璧な金融システムの全てが根本的に破綻する。

『10日前にとうとうAAAを陥落した日本債の格付け』

金融庁が指定格付け機関としている国内格付け会社の格付投資情報センター(R&I)は2011年12月21日、日本国債の格付けを最上級のAAA(トリプルA)から1段階低いAA+(ダブルAプラス)に引き下げたと発表した。
R&Iのように国内の格付け会社が日本国債を格下げしたのは初めてで、他の日本格付研究所(JCR)は今でも最高ランクAAAを維持している模様である。
世界一の借金大王のアメリカの格付け会社のランクではGDP比200%の政府債務を理由に我が日本国は上から4番目のアフリカのボツアナ並と低評価されているが、実は日本国内の格付け会社ではずっと最高ランクのAAA(一番安全で安心)だったのです。

『赤字額よりも多かった日本政府の黒字額』

自国の国内格付け会社の、自国に対する最高評価を絶対に報道しない国内の報道機関が存在するとしたら、『国際的である』『公明正大で正しい』と善意に考えるべきであろうか。
それとも何か別の目的の、『為にする偽装工作である』とか、売国的な『奴隷根性である』と悪意に考えるべきだろうか。
日本人全員が知っているマスコミ報道では、日本国の国債がAAAだったのは20年も前の昔話である。
ところが驚くことに、国内格付け会社のランクでは同じ『日本国債』がずっとAAAだった事実は、何故か日本のマスコミは絶対に報道せず今までは正反対に日本国の『財政危機』と消費税増税を煽っていた。
マスコミがこれまでのアメリカ格付け会社の評価と、それと相反する日本の格付け会社の両方を正しく報道したのであれば『公明正大で正しい』可能性があるが、現実は大違い。
日本国内の一般報道機関では例外として共産党機関紙赤旗や朝日新聞がごく小さく目立たない様に10日前の国内格付け会社の日本国債引き下げの事実を報じたが、一番影響力がある映像メディアでは何も無かったのです。
ちなみに有名なムーディーズなどアメリカの格付け会社は必ず破綻する自国の詐欺的なサブプライムローンなどのジャンク債を破綻まで最高ランクのAAAとしていた。
ネズミ講とサラ金の合体したような悪質極まる金融犯罪に加担した米国の格付け会社を信じるか、それとも自国の格付け会社の方を信用するのか。
何とも悩ましい話である。
真実の経済状態と『格付け』との間には大きな齟齬が存在しているようであり、『何が真実か』を正しく見極める目が是非とも肝要である。

『2011年12月21日にAAAを陥落した日本国債』

今回(R&I)による日本の格付けが、とうとう今年12月21日に1ランク下に落とされた。
原因は日本政府の債務残高が増加して債権(資産)を超過して仕舞い純粋な債務国になったかららしい。
AAAの去年までは、今まで積み上げていた膨大な政府の資産(債権)の方が借金(債務)を上回っておりマスコミ宣伝の『債務超過で破綻状態』は真っ赤な嘘で日本の財政状態は黒字だったのです。
日本の債務がGDPの200%で即破綻確実なら、GDPの600%のイギリス金融機関などは既に死んでいるゾンビであるとの理屈になる。
債務のGDP比率が問題なのでは無く、債務と債権の比率こそが大事なのです。
今のマスコミ報道のように債務の『大きさ』だけに限定して、(財政的な)天秤の反対側になる債権を完全無視して論じるなどは経済学とは無縁であり丸っきり詐欺の手法であろう。
そもそも日本の年金は積み立て方式ではなくて現役世代から徴収した掛け金を年金支払いに回す賦課方式なのですから、年金の積立金が何百兆円もある現在などは、不思議すぎるほどの贅沢である。
日本国の財布の状態(会計)は、年金が積み立て方式の国でも有り得ない大金持ち状態だったのです。
しかも日本は政府だけは『赤字』で困っているのだが、個人も企業も膨大な『黒字』を溜め込んでいるのですから、上のBusiness Insiderのグラフの様な債務だけの表では実体を理解することは難しい。
年収500万円の個人が5000万円の銀行借り入れで家を購入した場合に、収入の10倍の債務で金融破綻していると見る人はいないが、日本のすべてのマスコミは資産側を見ずに借金だけを問題にしてGDPの2倍で破綻していると大宣伝している。
マスコミ報道とは正反対に、債務(借金)がどれ程膨大であろうが、それ以上の債権(貯蓄や資産)が有れば何の問題も無い。
債務や債権で問題なのは額の大小よりも、より大事なのは内容(債務先や債務理由や金利)なのです。
低利の銀行ローンなら5000万円の債務でも安全に返せても高利のサラ金なら10分の1位以下の300万円以上だと確実に破綻する。また借金の理由が毎月の家計の不足分なら30万円でも確実に破綻する。
事実多くの欧州諸国の国債は、1%の低利の日本国債の金利分の約10兆円よりも多くの金利負担で苦しんでいるのです。
外国に例をとるまでもなく、日本自身の20年前の国債残高は10分の1の100兆円(GDP比で10%)だったが金利6%で負担は今よりも多くて11兆円超だった。
イギリスやアメリカでは政府の赤字額云々よりも膨大な個人と企業の三つ子の赤字に苦しめられているのですから、今の日本のマスコミの様な単純に政府の債務額だけを抜き出しての比較は意味が無く、債権の総額との指し引きの残高が大事となる。
しかもマクロ経済学では債務と債権の総額だけでなく、その質の総合的な評価が是非とも必要なのです。

コメント (2)    この記事についてブログを書く
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 内部告発者の権利保護 議論を | トップ | 富士と農兵と三島女郎衆、1... »

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
この表だけでは判断できない (伯爵)
2011-12-30 16:28:19
英国、酷いですねぇ。 でも、表に出ていないだけで、アイスランドや南欧諸国、ウクライナ、ハンガリーなども相当酷いと想像されます。

また、米国は76兆ドルの政府債務があるのではなかったですか? 米国GDPは14.58兆ドルですから、政府だけでGDPの5.4倍の債務です。

既に発表されている表向きの米国の借金14兆ドル
http://www.garbagenews.net/archives/1804351.html
それに加えて、隠れ借金が 62兆ドル
http://ginga-uchuu.cocolog-nifty.com/blog/2011/06/625000-707d.html

日本に関してですが、政府債務の94%が国内からの借り入れですし、国有財産、企業・個人の資産(海外にもGDPの1.8倍の資産がある)を考慮すると、おっしゃる通り「何の問題もない」のでしょう。
このBusiness Insiderは、アメリカですから (宗純)
2011-12-30 17:32:04
伯爵さん、コメント有難うございます。

上に掲げたBusiness Insider作成のグラフですがアメリカの債務が異常に小さく表していますね。その逆に日本など他国の債務を大きく表しているのですが、
特に日本は企業も個人も膨大な資産を溜め込んでいる事実は、この表からは絶対に判らない仕掛けなのですが、この事実は日本人なら誰でもが知っている。
日本の財政赤字ですが、これは普通なら戦時中に起きる特殊な話であり、平時では絶対に起きない不思議な話なのです。
例えるなら家族全員が大金持ちで貯金をたっぷり持って贅沢をしているが、一家の主人は家のローンの払いや食費医療費など家計のやりくりの金も無い程に逼迫している状態ですね、
こんなことは、普通なら絶対に起きないのです。
ところが絶対に起きないことが現実に起きているから不思議なのですね。
今の日本ですが、大金持ちの数がアメリカについで二番目に多い金持ち国なのです。
今の財政危機ですが、政府が意識的に資産課税を怠った結果であり、実は何の不思議も無い。
ところが政府は必要な資産課税ではなく消費税増税という大衆課税を行うと決定したが、
実は消費税はインフレを抑える特効薬でも有るのですね。
だから世界中で高率の消費税が行われているのですが、世界とは正反対の消費不況によるデフレ状態が20年も続く日本国でインフレ対策の消費税なら、消費不況はもっと酷くなります。
間違いなく日本経済は破綻します。
日本は20年間もずっと財政再建を掲げて今と同じ政策を行っているのですが、この財政再建策とは、やればやるだけ財政赤字が増えるという、摩訶不思議な高速増殖炉もんじゅの様な代物なのです。
しかも我が日本国の官僚とか政治家とかが考えた方針というよりもアメリカの言う通り行った結果が今の状態なのですよ。
リカードの比較優位説
2011年11月18日 | 経済
http://blog.goo.ne.jp/syokunin-2008/e/ec52d4bbc8ecd0e74524b831157f3363
『アメリカの言う通りにすれば大丈夫』とか『アメリカに付いて行けば大丈夫』との不思議な発想ですが、これは今までの成功体験によるところが大きいのですよ。
アメリカが日本に対して悪いことをする筈が無いと信じたいのです。
20年間もアメリカの言うままに改革したらとんでもないことに成ったのですが、それ以前の成功体験からのアメリカ教信者たちには、真実はなかなか見えない。

コメントを投稿

経済」カテゴリの最新記事