正しい食事を考える会

食が乱れている中どういう食事が正しいのかをみんなで考え、それを実践する方法を考える会にしたいと思います。

「日本侵攻 アメリカの小麦戦略」小麦キャンペーン始まる―成果を上げた対日小麦市場開拓事業

2013-11-14 | 食事教育

 「日本侵攻 アメリカの小麦戦略」小麦キャンペーン始まる―学校給食の農村普及事業の続きです。

ハンフリーも絶賛

 オレゴッ小麦栽培者連盟の対日小麦市場開拓事業は、第二年次に入った段階ですでに数かずの成果を遂げつつあった。リチャード・。ハウム氏がその報告書で掲げた一一項目の事業計画案(85ページ参照)はすべてが実施の緒についていた。しかし、バウム氏にとって一つ心配なことがあった。彼らの活動を資金的に支えているPL四八〇が期限切れで廃案になるかも知れないという噂が、アメリカ国内でとびかい始めたのである。

 そもそもPL四八〇は、急激に膨れ上がった余剰農産物を緊急に処理するために立案されたもので、当初は三年間を目途とする時限立法であった。その三年間が経過した段階で改めてPL四八〇の存在意義が問われることになったのである。この頃アメリカ小麦の在庫量は、三年前よりもむしろ増えていた。PL四八〇が効果をあげていないためだとしたら廃案にすべきであったし、現行法内に問題点があるためだとすれば改正する必要があった。

 一九五七年六月、アメリカ上院農業委員会は、「PL四八〇に関する公聴会」を開催した。座長は後に大統領候補にもなるヒューバートーハソフリー上院議員であった。上院の三二四号会議室には、上院農業委員の面々が列席し、農務省からは長官になる前のバッジ次官補、そして東畑氏とやりあったアイオアネス海外農務局次長も姿を見せていた。

 ハンフリー座長は公聴会の冒頭で目的をこう述べている。

  「私はPL四八〇には格別の関心を持っていたので、農業委員長の許しを求めてこうして座 長をつとめさせてもらうことになった。この公聴会の目的は、PL四八〇に関してあらゆる角 度からの検討を行なうことである。そのため、証人には農務省に限らず国防省や商務省など広範な政府機関・民間団体からも参加を求めるつもりである。

  公聴会では、余剰農産物の海外向けプログラムが、アメリカの海外援助の全体目的にどんなプラスとマイナスを生んでいるかを検討する。また、どうすれば余剰農産物の海外処理がより効果的になるか、--その中で民間団体の果すべき役割は何かーーも探りたいと思っている。

つまり、PL四八〇についてあらゆる側面から賛否両論をたたかわせて、その議論の成果をより建設的な立法に結びつけたいというのが私の念願である。

 ハッフリーはこの公聴会開催までの間に、農務省・国務省・国防省などから膨大な報告書を提出させて準備に当っていた。                           

 この公聴会に実はあのリチャードーバウム氏も召喚されていた。せっかく対日工作が軌道に乗りかけているのに、廃案にされてたまるものか-バウム氏は日本における市場開拓事業の概要をまとめた参考資料をもって、公聴会に臨んでいた。何人かの証人喚問が終って、三四歳のリチャードーバウム氏は、地元選出のノイバーガー上院議員に紹介されて証言席についた。

 以下は、ワシントンの国立公文書館に残されていた公聴会議事録からの抜粋である。

 ハンフリー 本日はオレゴッ州出身で農業問題に造詣の深いノイバーガー議員にも来てもらっている。ノイバーガー君どうぞ。

 ノイバーガー 私はみなさんにオレゴソ小麦栽培者連盟のリチャードーバウム副会長を紹介したい。。ハウム君はオレゴッ農民の先頭に立って、東洋に小麦市場を開拓するために活躍しているのです。私はオレゴッ農民が切り開こうとしているこの事業にこそPL四八〇の存続意義があると信じ、。ハウム君を紹介する次第です。

 ハンフリー ありがとう。ではバウム君どうぞ。

 バウム 初めに当連盟の活動概要をまとめた参考文書を提出致します。ご参照ください。ではそのハイライトを申しあげます。オレゴン小麦栽培者連盟は、東洋の中でも日本が最も有望な市場であると判断し、PL四八〇資金の運用をまず日本に集中させました。最初のプログラムであるキッチンカーは大成功をおさめており、日本の一流新聞にはこんな投書も載りました。

お手許の資料にもありますが読みあげてみます。

 「緑の野山を縫って、ピカピカの大型バスが軽快なメロディーをかなでながら、やってきました。子供も主婦も駆け寄ります。 一日のうちに必ず一度は粉食が必要であることを科学的に説明され、しかも目の前で調理されるのを見ていると、こんなに簡単なことから、一生を左右する健康状態が生まれるものだと認識を新たにさせられました。みんなで少しずつ分け合って 『おいしいわね』とだれもがニコニコしながら楽しく試食しました。キッチンカーは何と親しみやすい、すばらしい時代の恩恵でしょう」(千葉県の主婦三〇歳。『毎日新聞』昭和32年5月15日)

 ご承知のように日本は伝統的な米の国です。パンを食べようにも満足なパン屋すらないのです。そこで私たちはパン業者の育成にも力を注ぎました。そして今、学校給食の地方普及事業も始まろうとしています。日本の多くの指導者が、学校給食ほど有効なものはないと忠告してくれました。日本には一二〇〇万人の小学生がいますが、パンをとり入れた完全給食を受けているのはその半分の六〇〇万人。ミルクだけのところがI〇〇万人です。残り五〇〇万人のうちまず五〇万人の児童を対象にパン給食拡大のキャンペーンを行なうことになっています。

 ハンフリー その点について日本政府は協力的であるのか?

 バウム はい、たいへん協力的です。学校給食を全国に普及させるのが日本の国策ですから大歓迎なわけです

 このほか私たちは日本の商社マンを対象に「アメリカ小麦杯」のゴルフ大会も始めました。

カナダやオーストラリアの小麦局がこの種の催しを始めたので対抗上迫られて、これはオレゴン小麦栽培者連盟独自の費用でスタートさせました。重要な活動として人事交流も行なっています。去年の八月には、農林政務次官を含む四人の要人(Key person)をアメリカに招待しました。こうした活動の総経費はI〇七万ドル(三億八〇〇〇万円)にのぼり、そのほとんどがPL四八〇による農務省資金です。

 まだ効果を云々するには早計ですが、心強い統計が出ています。日本人一人当りの米の消費量は、戦前水準の一四九キロから一一九キロに減りました。その反対に、小麦は一四キロの戦前水準が、都市部では三倍の四一キロに伸びています。

 証言の最後に当り、PL四八〇号の重要性を強調したいと思います。海外の何百万人という潜在市場が、この制度によって初めてアメリカ農産物を買う力を得たのです。世間では、PL四八〇を一時的な制度だと見なす人もあるようですが、これほど活用されているものを、なぜやめなければならないのでしょうか。

ハンフリー いいことを言ってくれた。われわれは時として、役にたたない法律を長続きさせたり、有効なものを途中でやめたりしがちなものだ。

バウム 重ねて委員諸兄にお願いします。どうかPL四八〇を永続させる方向でご検討ください。短期間で終る制度ならば、私たちはわざわざ東京に事務所を置いたり、日本人を雇ったりはしなかったでしょう。

 ハンフリー ありがとう、バウム君。たいへん説得力のある証言だった。君たちの活動がうまくいくよう私からも農務省に話そう。ところでノイバーガー議員、このいい話を一度上院本会議で報告してくれないか。われわれがいつも聞かされるのは、余って困ったという話ばかりで、こうした余剰活用の優良事例はみんなにも知ってもらったほうがいいと思うが…。

 ノイバーガー それはたいへん光栄なことであります。

 大物議員ハンフリーから、バウム氏は手ばなしでほめられた。しかも彼は今後の支援を約束した。若きバウム氏が男をあげた檜舞台であった。この証言が役立ったためだけではないが、結局PL四八〇は、若干の修正をみるだけでその後も継続されることが決まった。

 バウム氏たちの対日市場開拓事業はすべてが順風満帆のようにみえた。しかし、この時一つの重大な落し穴が彼らの前途に待ち受けていたのである。

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