パトリシアの祈り

ドラクエ日記。5が一番好き。好きなモンスターはメタルキングなど。ネタバレしてますのでご注意

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2016-10-08 20:58:58 | 小説ドラクエ10
 ショコラの冒険が小説になりました。

 読んでいただけたら幸いです。

 ネタバレになってしまいますので、まだプレイしていない部分を読む時はご注意くださいね。

 また、多少~激しくアレンジしている部分がありますのでご了承ください。

 更新はゆっくりですが、いつの日か書き上げたいと思っています。

 応援よろしくお願いします。



【主要人物紹介】

・ショコラ エルフ女。魔法使い。生まれ変わったエテーネの民。大人しくて引っ込み思案。
・アイ   オーガ女。戦士。剣の天才。無口。旅の途中でショコラに会い、そのまま同行。
・りな   プクリポ女。僧侶。行方不明のチームメンバーたちを探している。天真爛漫。
・チャオ  ドワーフ男。レンジャー。魔物使いを探して旅をしていた。頼れるおっさんアニキ。


第1章 エルフの少女(ツスクル編)
    【1】 【2】 【3】 【4】 【5】 【6】


第2章 希望の風(アズラン編)
    【1】 【2】 【3】 【4】 【5】 【6】 【7】 【8】 【9】 【10】 【11】 【12】 【13】 【14】


第3章 鈴の夢見し花(カミハルムイ編)
    【1】 【2】 【3】 【4】 【5】 【6】 【7】 【8】 【9】 【10】 【11】 【12】


第4章 ガラクタの温もり(ガタラ編)
    【1】 【2】 【3】 【4】 【5】 【6】 【7】


第5章 めぐりあい、そして強くなる(ドルワーム編)
    【1】 【2】 【3】 【4】 【5】 【6】 【7】 【8】 【9】


第6章 魔法の迷宮
    【1】 【2】 【3】 【4】 【5】 【6】 【7】 【8】 【9】


第7章 愛と剣(ガートラント編)
    【1】 【2】 【3】 【4】 【5】 【6】


【更新履歴】


 5月22日 第7章【1】アップしました!
 ガートラント編スタートです。

 6月5日 第7章【2】アップしました!
 マイユたん登場。

 6月22日 第7章【3】アップしました!
 スピンドルをいかに書くか。

 7月1日 第7章【4】アップしました!
 VSジュリアンテ。そして事件が……。

 8月7日 久々ですが第7章【5】アップしました!
 大怪我を書くって難しいですね(笑)

  




【この小説はドラゴンクエスト10を元にした二次的著作物であり、株式会社スクウェア・エニックスを代表とする共同著作者及び筆者が著作権を有するものです。一切の転載や配布は禁止とさせていただきます】
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小説ドラゴンクエスト10 第63回

2016-10-08 20:57:38 | 小説ドラクエ10
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   第7章 愛と剣


    6




 ガートラントの西に広がる荒野、オルセコ高地。辺り一面は乾いた土の色が広がっている。動植物の姿はほとんど見えない代わりに、魔物たちの蠢く姿があちこちに見えた。どこを見ても同じような赤茶けた土の色をした山に囲まれ、入り組んだ台地は登り降りする道を探すことさえ難しい。

 出発の間際にアイの母が持たせてくれた地図を見る。ガートラント周辺が描かれていた。この広大な台地はまさに山に抱かれ、わずかな山の谷間からガートラントへと行き来できるだけで、他に道はない。もっとも、こんな所を行き来する者もいないのだが。

 目指すオルセコ闘技場の絵は、地図で言うと台地の南西に描かれている。台地の中心に聳え立つ剣岩と言う巨岩を目指して歩いていた。正面に見える尖った岩がおそらくそれなのだろう。だが、真っ直ぐに向かっても崖に行き当たり、降りられる道を探して遠回りをする羽目になった。焦る気持ちが心の余裕を奪っていき、魔物との戦いも雑になった。

 アイは、預けていたパーティのお金と、ルーラストーンを置いて行った。そのことが、ショコラをさらに焦らせていた。もう戻らない。そう言われている気がした。

 アイの抜けた穴は大きい。いかに前衛で危険な役目を背負ってくれていたのか、改めて思い知る。代わりにチャオが前衛となって戦っているが、重い斧は攻撃力が高い反面素早い動きはできず、群れで襲われると容易にショコラとりなの元に詰め寄ってくる。

 りなはレンドアで買ったグラコスの槍を操り、魔物たちを串刺しにし、薙ぎ払う。ただいかんせん僧侶の力で、プクリポサイズの槍である。一撃で致命傷を与えることは稀であった。特に、大きな体に真紅の鎧を纏った魔獣戦士ライノソルジャーとは相性が悪かった。渾身の技を繰り出しても、鎧と分厚い皮膚に阻まれ、かえって力負けして弾き飛ばされてしまう。

 そのような敵にはやはり呪文攻撃が有効だが、ショコラの魔法は狙いが定まらず、魔力も不安定だった。しかしそれを自分でも感じていたため、チャオやりなの近くでイオを試すことはしなかった。今の状態では無理だとわかっていた。

 夜中から歩き続けて、もう陽は高く昇っている。チャオは回復したばかりのショコラをそれとなく気遣い、こまめに休憩を挟んだ。

 剣岩の麓に野営の跡を見つけた。まだわずかに熱が残っている。目的地はここからまっすぐ南西のはずだ。地図のとおり、南西には大きな二つの岩山がある。その谷間を超えた先に、古代の闘技場はある。

 自分たちは地図を持っているが、アイは迷っていないだろうか。あの山の向こうに闘技場があることを知っているのだろうか。いや、そもそも、アイは本当に闘技場に向かっているのだろうか。

 アイが側にいないことが、こんなにも不安だとは思わなかった。次々に悪い考えが浮かんでは消え、立ち止まったら泣いてしまいそうだった。だからショコラは、チャオが休憩だと声をかけてくるまで休まずに歩いた。

 再び夜がやってきた。

 月の光も届かない谷底から、目の前に現れた闘技場を見上げた。それは周りの岩とは明らかに質の違う、人工物だった。真っ黒に聳え立つその建物に開いた無数の穴のいくつかから、微かに灯りがちらついている。

 メラの光を頼りに暗闇から入り口を見つけると、中に灯りが灯っているのが見えた。耳を澄ますと、通路の奥からうめき声のようなものが響いてくる。

 奥の灯りを目指して真っ暗な通路を進んでいくと、うめき声も徐々にはっきりと、人の声に聞こえるようになってきた。

 ばんざい……ばんざい……と、何人もの男の声だった。

 通路を抜けた先は少し広い空間で、灯りを下げた巨大なオーガの像が何体も立っていた。その奥には、空が見えた。男たちの声はその空の下の方から聞こえる。

 近づいてみると、そこは円形の建物の一角だった。真っ直ぐ正面にも同じような場所があるのが見えた。三百六十度からその中心を見ることができるようだ。建物の中心はすり鉢状に観客席のようなものが何段にも渡って並び、底は平らな地面だった。そこには大勢のオーガの男たちがいた。
ばんざい……ばんざい……マリーンさまばんざい……。

 男たちは口々に唱える。しかしその声に生気はなかった。屈強なオーガの戦士たちが、だらしなく腕を垂れ、腰を曲げてようやく立っているような格好だった。

 そんな男たちの中心にいたのは、まぎれもなく先日ショコラに回復の呪文をかけた賢者マリーンだった。男たちを眺め、巨体を揺らして笑っている。

 ショコラはもちろん、りなもチャオもマリーンが魔物に変化した姿を見ていない。ここに来るまでの間、度々その話をした。ちょっと話しただけだが、気さくでいいヤツだったとチャオは言った。乱暴な口調だけど、回復の呪文を褒め、がんばれと言ってくれた、とりなは思い返す。

 城の者が嘘を言う理由はない。だが、信じたくない気持ちはあった。眼下に見えるマリーンはまだ人の姿で、会った時と同じように、豪快に大笑いしている。

「あ、あれ見て」

 突然りなが裾を引く。覗き込んでいた隙間の先を指さしている。

「あそこ」

 ショコラは膝をついて覗き込む。ほぼ正面、つまりこの場所とは反対側の廊下が見えた。何層か下の階も見え、その柱の陰に誰かがいた。赤い二つの影は、銀色の髪を揺らした。

「アイちゃん!」

 思わず声を上げてしまい、慌てて口に手を当てた。幸いにもマリーンや男たちが気づいた様子はなかった。

「良かった……良かった、アイちゃん……!」

 床に座り込んだショコラに、チャオはそっと手を伸ばし、

「さあ、早く追いつこうぜ」と目を細める。勇気と力が湧いてくる。

 闘技場内部は所々が崩れ落ちて進めず、迷路のようになっていた。メラミを操るホースデビルや騎馬死霊ボーンナイト、飛び上がり、空中から攻撃を仕掛けてくる竜騎兵など、魔物たちも行く手を阻む。

 しかし、それらはショコラを止めることはできなかった。魔法は冴え、わずかな風の流れをも感じ取り、奥へ下へと突き進んでいく。心臓は激しく脈打ち、息も弾んでいる。それでも足が止まることはなかった。

 門番のように立ちふさがるストーンビーストをやり過ごし、最下層の巨大な扉を開けると、月明かりとともに激しい剣戟が飛び込んできた。





 つづく


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小説ドラゴンクエスト10 第62回

2016-08-07 22:55:46 | 小説ドラクエ10
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   第7章 愛と剣


    5




 目を覚ますと、目の前に太った人間の女性がいた。ぎょっとして身をすくめると、腹の傷が少し痛んだ。

「あっはっは!」女性は部屋中に響き渡るほどの大声で笑う。

「びっくりしたかい?」

 窓からは光が射し込んでいる。目に見える範囲から、どこかの室内にいるようで、ベッドに寝かされていた。

 アイやりな、チャオの姿が見えず、頭を動かそうとしたが、力がうまく入らない。

「まだうまく動けやしないさ。傷は塞がったが、血が足りないんだ。もう少し大人しくしてるんだね!」女性はまたあっはっはと大笑いする。

「あ、あの……仲間は? あなたは一体……」

「あたしは癒しの賢者マリーン。お前さんの仲間たちもまだ眠ってるさ。何だか知らないけどよほど疲れたんだねぇ。さっきまでオーガの女がそこにいたんだが、少し前に出て行ったよ」

 アイも皆も無事なようだ。ほっとするとまた眠気が襲ってきた。

「賢者マリーン様……ありがとうございます」

「あっはっは! あたしはほとんど何もしちゃいないさ! あたしが呼ばれてきた時には、もう傷は塞がってた。体力が早く回復する呪文をかけておいたから、もうひと眠りして目が覚めたら動けるようになるだろうさ!」

「ありがとうございました……助かります……」

「気にするんじゃないよ! 傷ついた者を助けるのはあたしの生きがいだからねぇ! あっはっはっは!」

 笑い声が遠くなっていく。その声と瞼に写るマリーンの笑顔が、ショコラの心を温かくした。

 ふと、賢者ホーローの顔も浮かんできた。列車の中で初めて会った時の光景だ。「生き返りストじゃな!」と言い当てられ、ショコラは驚いた。

 マリーンも同じように、自分の正体を知っているに違いない。だから今回、助けてくれたのだ。そしてきっと、これからの旅を導いてくれる。そんなことを考えながら、眠りに落ちた。

 目を覚ますと、今度はマリーンではなく、りなが自分を覗き込んでいた。

「あ! おねえちゃん、起きた!」

「おお、ショコラ! 大丈夫か?」チャオも駆け寄ってくる。

 頭を動かしてみた。傷はもう痛まないし、思う通りに身体も動く。マリーンの姿はなかった。そしてアイの姿も。

 ショコラは身体を起こして室内を見回した。

「アイちゃんは?」

「昼間、賢者マリーンと一緒に城に行ったけど、まだ戻って来ないんだ」チャオが肩をすくめる。

「そう……ところでここって」あらためて部屋を見渡すと、部屋の隅にいくつかタンスがあるほかは、ほとんど何もない。壁には剣が二本掛けられるようになっている。飾り気のない石壁に囲われたシンプルな部屋だが、一つだけ目を引く場所があった。タンスの横に取りつけられた姿見が、やたら可愛らしいピンク色だったのだ。

「アイおねえちゃんの部屋だよ」りなが答える。

 海賊のアジト跡でショコラが気を失ったあと、チャオのリレミトとアイのルーラストーンでここに戻ってきた。ちょうど高名な癒しの賢者マリーンが滞在中だったため、アイの母親が急いで呼んで来てくれたのだという。

「アイはずいぶん気に病んでた……帰ってきたら声かけてやってくれ」

「はい……」

「そろそろ晩ご飯だって! 血ィいっぱい出たからたくさん食べないとだね!」

 歩けるが、やはり足元がふらつく感じがした。食堂に行くと、アイの母がにこやかに迎えてくれた。

 容赦ない肉料理の数々は強敵揃いだったが、食欲はそれを上回った。スパイスと香草の効いた味付けはオーガ好みなのだろうか。どれも初めての味わいだったが、美味しかった。考えてみれば、オーグリード大陸に来て初めての食事だった。

「アイちゃん……遅いですね」

「そうねぇ~」アイの母はちらりと入り口の扉を見る。ショコラは食べながら、もう何十回もその扉を見ていた。

「食べ終わったら迎えに行ってくるよ」見かねてチャオが言う。

「あ、それなら私も……」

「お前はまだ休んでろって。すぐ戻ってくるからさ」

 そう言って出て行ったチャオは、しばらくして血相を変えて戻ってきた。ショコラとりなは部屋に戻り、食休みをしていたところだった。

 肩で息をするチャオは少し迷っているような素振りを見せていたが、やがて決心したようにショコラを見つめた。

「……ええと、なんつったらいいんだ? アイがいなくなった」

「ええっ!」

「いや、行き先は分かってるからいなくなってはいねぇんだが、王と兵士長が攫われて、マリーンが魔物だったから、二人で行っちまったらしいんだ、マイユと!」

「どこに! っていうかおっさん落ち着いて喋りなよ!」

 チャオの話では、城に着いた時にはすでに王が攫われたと大騒ぎになっており、救出部隊の編制に追われていた。玉座の間で会ったマグナスという学者風の男を掴まえると、彼は王の側近で、昼間起こった出来事の一部始終を話してくれた。

 アイとマリーンが玉座の間に行くと、兵士たちがマリーンを取り囲んだ。スピンドルが持ち帰った魔瘴石の装飾品はグレンの王に送られたネックレスそのものであり、それは少し前にグレン王の様子を見に行ったマリーンが回収し、封印したと報告を受けたはずのものだったのである。それがジュリアンテの手にあるとはどういうことかと王に問い詰められると、マリーンは素早くスピンドルから魔瘴石のネックレスを奪い、その力により魔物に姿を変えたのだという。

 さらに、マリーンが掌を向けるやいなや、何もない空間に黒い球体が現れ、スピンドルを閉じ込めた。スピンドルがジュリアンテを倒した強者だと思った様子だったという。そして、ジュリアンテは妹で、二人はずっと生き返しを受けた者を探していたとも言っていたらしい。

 王が斬りかかったが避けられ、逆に黒い球体に捕らわれてしまった。二つの闇球はそのまま小さくなり、マリーンの掌中に収まった。

 婚約者を攫った犯人を見つけたマイユは怒りを向けたが、アロルドを返して欲しくばオルセコ闘技場に来い、と言い残して、マリーンはたちまち姿を消してしまったらしい。マイユはすぐに玉座の間から走り去った。おそらくアイも後を追ったのではないか、ということだった。

「おそらく……って?」りなは首を傾げる。

「いつの間にかいなくなってたからそう思ったらしいけど、アイのことだから間違いないだろう」

「でも、一言声をかけてくれれば……!」

「だいぶ気にしてたからな、お前に怪我させたこと……自分だけで解決しようと思ったんじゃねぇか」

「アイちゃんの……馬鹿!」

 ベッドから飛び降りたショコラを、チャオが止める。

「おいおい、そんな身体で追おうってのか? 俺らが行ってくるからお前は……」チャオは最後まで言えなかった。ショコラの顔があまりにも悲痛に満ちていたからだ。怒りと悲しみ、そして不安が入り混じっている。

「止めても無駄です! 行きます!」

「……ああ」

 でも、無理すんなよ。その言葉は飲み込んだ。無理するなというのが無理だ。代わりに自分がしっかりと支える。今回のことで自分を責めていたのは、チャオも同じだった。





 つづく 【6】


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小説ドラゴンクエスト10 第61回

2016-07-02 00:19:49 | 小説ドラクエ10
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   第7章 愛と剣


    4




 ジュリアンテは猛烈な鞭捌きで前衛二人を翻弄した。神速の鞭が二匹の龍となって襲い、地面を削った礫の軌道まで完璧にコントロールされている。その上、凍てつく波動をも操った。魔力の波動はスクルトによる防御の衣を引きはがし、肌をむき出しにする。不用意に飛び込めば大怪我を追ってしまうだろう。

 アイは度々鞭を切断した。だが、ジュリアンテが魔力を込めて切断面を舐めると、また生き物のように再生してしまう。ぬるりと生える触手のような鞭は、その度に先端の形を変えた。返しのついた針のような時もあれば、両刃の斧の時もあった。

 ショコラも離れた場所から呪文を放つが、ジュリアンテの操るメラミによってことごとく相殺されてしまう。隙を突かなければただ魔法力を無駄に使ってしまうことになりかねず、攻めあぐねていた。

「うふふ……なかなかやるじゃなぁい? でも、そろそろ飽きたわ。そっちの斧使いのかわいいドワーフさんはどうしたの? かかってこないのかしら? 早くおいでよ。あなたを引き裂きたくてうずうずするわっ!」

 ジュリアンテは身をよじり、投げキッスをする。その間も鞭の攻撃はアイとマイユを襲い続けていた。

「二人相手に余裕かよ……でも、いけるかもしれねぇ。ショコラ、何とか隙を突いて動きを止めてくれ!」チャオがにやりと笑う。

 とは言え、その隙を先ほどからショコラも窺っているのだが、なかなか見せないのだ。

「このメスたちはもういいや、殺そっと」

 不意にジュリアンテは鞭を止めた。隙ありとマイユが跳びかかる。アイは動かなかった。

「はい、お馬鹿さーん」ジュリアンテの真っ赤な瞳が怪しく輝く。マイユはよろめいて、その場にしゃがみ込んでしまった。

「う、うそでしょ……眠い……」

 無防備なマイユを蹴り飛ばし、鞭を振るう。だがその先端はマイユには届かなかった。アイの放った風の刃が鞭を斬り裂き、ジュリアンテの腕をも傷つけた。

「あら、痛い。ふーん、こんな技を隠していたのねぇ。生意気だわ!」

 ジュリアンテの瞳が再び輝きを増す。高く掲げた右手にはメラミの炎が宿っていた。アイは咄嗟に目を閉じて赤い眼を見ないようにした。

「ヒャダルコ!」

 氷の槍が無数に現れ、炎の上からジュリアンテに降り注ぐ。炎を強めて身を守ったジュリアンテの周囲の地面には、幾つもの氷柱が出来上がっていた。

「このメスエルふぐっ!」ショコラを睨み付けたジュリアンテの顔が苦痛に歪む。その胸にはチャオの放った矢が深々と突き刺さっていた。

「メラミっ!」ショコラの火球が真っ直ぐにジュリアンテを襲う。

「そんな炎なんて効かないよっ」

 ジュリアンテは火球を弾き落とすため腕を払うが、その腕はまたたく間に炎に包まれ、上半身の右半分と髪を燃やした。

「ぎゃああああああああああああ! な、なんだこれは!」

「その矢はマジックアローって言ってな、呪文への耐性を下げるんだよ! 次はこいつだぜ!」チャオが次に放った矢は、全体が光に包まれていた。バチバチと小さな稲妻を散らしながら、ジュリアンテの腹に突き刺さる。感電したジュリアンテの身体がびくんと震えた。

「く、くああああああああああああああああああああああああああ!」

 ジュリアンテは絶叫を上げ、鞭を振るおうとするが、先ほどのショコラのヒャダルコによって、鞭は地面に縫い付けられていた。

「くそおおおおおおおおおおおおお!」

「覚悟!」

 一瞬で距離を詰めたアイの刺突がジュリアンテの胸を貫く。風の刃が刀身の周囲に渦を巻き、ジュリアンテの胸を斬り抜けた。

「ぐがっ……こ、あ……魔瘴石の力を使った……このあたしが! そ、そうか……お前たちの誰かが……生き返しの……」

 その言葉にショコラは心臓が凍ったような気分になった。魔物が生き返しを受けた者の存在を知っている。すなわち、冥王もそのことを知っていることになるのだ。

「ただでは……帰さない……よ!」

 ジュリアンテは足を踏み出した。刃が鍔元まで突き刺さる。素早く手を伸ばすと、アイの頭をがっしりと掴んだ。

「う……」アイが呻き、ジュリアンテを突き飛ばす。刀が抜け、黒い返り血が肌を染めた。

「うふふ……お楽しみあそばせ」倒れたジュリアンテの身体から紫の霧が立ち昇り始める。

 そこに駆け寄る影があった。

「たあーーーっ!」

 何もない空中に、幾筋ものスピンドルの剣が閃いた。どれもジュリアンテには届いていない。いや、最後の一回だけ、切っ先がわずかにジュリアンテの腕に当たった。

 すでにジュリアンテからの反応はなく、身体はすぐに完全に霧となって消え失せた。床には魔瘴石の装飾品だけが残っていた。

「なかなか手強い相手であった!」スピンドルは装飾品を拾い上げ、しげしげと眺める。

「よし、これを持ち帰って王に報告だ! お前たち、囚われた者たちを早く助けだせ!」

「はっ!」兵士たちは足早に奥の扉に近づいていった。

「おいおい、まだ助けてなかったのかよ……」チャオはため息をつく。

「ずっと隙を窺ってたみたいよ。あんなに離れてるのに」りなが指さしたのは、部屋の隅にある岩影だった。ジュリアンテと奥の扉との距離は比較するまでもなく扉のほうが近い。

「マイユさんが!」

 ショコラは倒れこんだマイユに駆け寄る。りな、チャオも後に続いた。

「マイユおねえちゃん、大丈夫―?」

 仰向けにして覗き込むと、静かな寝息を立てていた。

「寝てる……おーい、おねえちゃーん」

「魔物にはこっちを眠りに誘うヤツがいる。戦闘中に眠っちまったらアウトだぜ。気をつけねぇとな」

 ショコラはほっと息を吐き、立ち上がると、背中を向けたまま立っているアイに近づいていった。

「アイちゃん、怪我はない?」

 振り返ったアイの目は虚ろだった。視線は定まらず、口は半開きになっている。

「アイちゃん?」

 突然刀が突き出された。

 直後、ショコラは脇腹に猛烈な熱さを感じた。視線を落とすと、自分の腹に埋もれる美しい刀身があった。なおも突き出される刀はゆっくりと圧力をかけ続け、やがて激痛をもたらした。

「アイ……ちゃん……?」

「おいっ!」チャオが叫ぶ。素早くアイに駆け寄ると、手の甲で鳩尾のあたりを打った。

「うっ!」アイが呻く。次第に焦点が定まっていく。

「アイ! 落ち着いて刀を離せ!」

「え……」とアイは自らの左手を見る。そしてその先の刀と、貫いているショコラの姿を。慌てて手を離し、刀が傾きかけた。すかさずその柄をチャオが支えて水平にする。

 りなの癒しの光がすでに傷口に集まっている。チャオに促され、ゆっくりと横になった。

「ちっと我慢しろな。りな、背中のほう頼む。俺は腹だ」

「う、うん……」

「ショコラ、力抜け」

 力を抜いた瞬間、少しだけ刀が引き抜かれた。すさまじい激痛に声も出ない。直後に背中に当てられた布の感触と、癒しの光の暖かさを感じた。チャオのベホイミの声が聞こえた。

 視界の端がかすかにアイの姿を捉えたが、すぐにそれも歪み、そのまま気を失った。

 アイの震えた声が、何度も自分の名を呼んでいた。





 つづく 【5】


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小説ドラゴンクエスト10 第60回

2016-06-22 17:17:00 | 小説ドラクエ10
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   第7章 愛と剣


    3




「いや~、なかなかやるじゃないか、キミタチ!」

 兵士長のスピンドルは、のんびりと拍手をしながら歩いて来る。たった今魔物の群れを蹴散らしたところだ。

 武闘家のマイユは華麗な足技でアイとともに前衛で戦った。剣とは違い一撃で致命傷になることはないが、素早い動きと手数は敵を翻弄し、重さの乗った蹴りは確実に動きを止めた。

 数十もの大群で押し寄せたあらくれチャッピーやデスパロットたちの大半は二人の攻撃とショコラの魔法で倒れ、それをかいくぐった敵はチャオや部隊の兵士たちが討った。りなは最初にスクルトを唱えたきり、回復の出番もなく戦闘が終わった。

 スピンドルはそんなショコラたちの背中側からやってきた。戦闘中はあらゆる方向に気を配っていたはずだが、彼が戦う姿を見なかった気がする。がちゃがちゃと鎧が擦れる大きな音がする。太っているスピンドルが歩くと、鎧も大きく揺れるのだが、その音も戦闘中は聞こえなかった。大きな腹に合わせて作らせたのか、鎧の胴は優雅な曲線を描いている。

「さすがメンビル副・兵士長の娘だな! 筋がいい!」スピンドルは副のところを強調して言う。アイは適当に短く答え、刀を鞘に納めた。

 ガートラントは険しい山に囲まれた都市である。まさに天然の要塞たるその岩山を下りると、広大な草原地帯が広がっている。北と東に街道が伸びていたが、起伏があるためか、先々までは見通せなかった。

 ガートラントの山を東の街道に沿って回り込み、いくつかの丘と、切り立った崖の隙間を通過した先が、ギルザット地方だ。

 同じ草原地帯ではあるが、ガートラント周辺よりも起伏が激しく、丘を登った先が唐突に崖になっていることも少なくない。道案内がいなければ、無駄な移動が多かっただろう。スピンドルは先頭に立って一行を率いるものの、度々兵士から道の修正を受けていた。

 大きな丘を登らずに迂回して、その丘が作りだした崖の下の緩やかな坂を登ると、小さな建物が見えてきた。そのさらに先には険しい峰々と、流れ落ちる滝が見える。

「はぁ……着いたぞ! はぁはぁ……ここが海賊のアジト跡だ!」スピンドルは偉そうに言うが、坂道を登ったせいで息が切れている。

「ギザックが言うには、暖炉に隠し通路があるらしい! さあ、お前たち、探すのだ!」

 兵士たちは揃って返事をし、アジトに入っていった。建物は入口の扉ももはやなく、天井も崩れてしまっている。残った部分から推測するに、おそらくドーム型の建物だったのだろう。

「ありましたっ!」

 兵士の一人が外に出てきて報告すると、スピンドルは悠々とした足取りで建物に入った。暖炉の奥を覗き込むと、確かにその床に扉らしきものがあり、地下への階段になっていた。

「うむ! では突入だ! まずは私が行こう!」

 がちゃ。がちゃがちゃ……ガンガン! ガチャガチャ! スピンドルは暖炉に入ろうともがくが、どうしても鎧が当たってしまい、進むことができないのだった。兵士たちも手伝うが、どうしても入らない。笑いそうになるりなの口をチャオが塞いだ。

「むむ……おい、お前たち、やるのだ!」

「はいっ!」兵士たちが持ち出したのは、ツルハシだった。勢いよく暖炉に打ち込む。

「まじかよ! ある意味すげえな……」

 驚きのあまり大声で言ってしまい、チャオはりなの無言の抗議を受けた。

「よし! 行くぞ!」

 破壊された暖炉の床には、もう隠し階段がむき出しになっている。スピンドルは慎重に降りていく。床の穴を鎧が通った時は兵士たちも安堵した表情を浮かべた。

 地下は幾つもの空洞がつながって、大洞窟となっていた。自然にできた地下の空間同士を繋げる細い通路には、人の手が加えられた形跡がある。天井の所どころには苔のようなものがぼんやりと光っているが、ほぼ等間隔であるところを見ると、天然のものではないのだろう。兵士たちが持つたいまつもあり、進むには支障がない。

 長年放置されたであろう洞窟内は、やはり魔物の棲み処となっていた。ボーンプリズナーやバイキングソウルなどの死霊たちは、海賊たちや、彼らに捕らえられた者たちの怨念が魔物となって蘇ったのだろうか。また、土中から突如姿を現し、泥の中に引きずり込もうとするドロヌーバも行く手を阻んだ。

 ショコラたちや兵士はその数に狼狽しつつも良く戦ったが、スピンドルは一人離れた場所から檄を飛ばすだけだった。剣は抜いているが、決して向かって行こうとはせず、逆に標的にされれば、素早く兵士の後ろに回り込む。

 その様子に堪えきれず、りなが文句を言おうとするのを、チャオが止め、耳打ちする。

「戦わせてもきっと邪魔になるだけだ。ほっとけよ」

「むー。怪我してもホイミしてやらないんだから!」

「敵に近づかないから怪我もしないだろうぜ」

 やがて洞くつの行き止まりに、扉を見つけた。頑丈な鉄の扉は錆びてしまっているが、彫り込まれた細工は見事なものだ。ちょうどショコラの目線の高さに通風孔がある。覗き込むと、白い服の女性が見えた。

「女性がいます……白い服の」

 アイとマイユも腰を屈めて覗き込む。女性はこちらに背中を向けており、その向こうにも扉が見えた。よくは聞こえないが、女性はその扉に向かって話しかけていた。くぐもった別の声が扉の中から聞こえる。男性の声だ。

 ふと女性が手にしていた何かを頭上に掲げ、眺め始める。銀色の台座に紫の石がはめ込まれた装飾品のようだった。石が禍々しい光を放つと、女性の身体が魔瘴のような霧に薄く包まれていく。

 高笑いと共に女性の身体が変形していく。小柄だった女性の手足はしなやかに伸び、獣のような大きな耳が頭の上から生える。髪は爆発的に伸び、それぞれに房を作ると、一つひとつが尻尾のように蠢き始める。

「魔物だわ」

 ぽつりとマイユが言うのを聞いて、スピンドルが「どれ、私にも見せなさい」と鉄扉に近づいた。

 覗き込む時に、出張った腹の鎧が扉にぶつかり、大きな音を立てた。魔物と化した女性がゆっくりと振り返る。その瞳は全体が血のように真っ赤に染まっていた。

「あ~ら、お客さまかしら? うふふ……逃げた一匹が呼んできたのねぇ……」妖女の魔物は嬉しそうに舌なめずりをした。

「どうぞ、お入りになって。それとも逃げるのかしら? ここにいるお仲間を見捨てて、ね」

 ショコラたちは頷き合い、鉄扉を開けた。錆びた鉄のものかと思っていた臭いは、部屋に入ると一気に濃さを増した。血の臭いだ。

「よ・う・こ・そ、ジュリアンテのお店へ」

「我輩はガートラント王国兵士長スピンドル! 捉えた者たちを解放するのだ! さもなくば貴様を倒す!」ここぞとばかりにスピンドルが名乗りをあげ、剣を向ける。

「まああ! 兵士長様が直々にいらっしゃるなんて、光栄ですわ。さ、何がお望みですか? 爪で引き裂かれたい? それとも鞭で嬲られたいかしら?

 それとも、そのお肉を少しずつ削いであげましょうか? お安くしときますわよ」

「ふ、ふざけるな! き、貴様などわが部下たちが一瞬で血祭りにあげてくれる!」

 思わずりなが「えっ?」と声を上げる。スピンドルは構わずに後退しつつ、小声で言った。

「お前たち、ヤツの注意を引きつけてくれ。その間に我々が囚われた者たちを救出する!」

「あーそりゃーいい作戦で」チャオは呆れながらも斧弓を構える。

 アイも柄に手をかけ、マイユと共に前に出る。ショコラも杖をジュリアンテに向けて構え、りなは早速スクルトを唱えた。

「あら、残念。ほとんどメスじゃないの。つまらないわ。あたし、男の悲鳴じゃないと燃えないのよねぇ!」

 ジュリアンテは何もない空間から漆黒の鞭を引きずり出し、地面に振るった。極太の鞭に地面が削られ、礫が飛び散る。

「アロルド……待っててね……すぐに助けてあげるわっ!」

 マイユが駆け出し、アイもそれに続く。





 つづく 【4】


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