哲学者か道化師 -A philosopher / A clown-

映画、小説、芸術、その他いろいろ

谷川流『涼宮ハルヒの憤慨』

2006-06-21 | ライトノベル
 発売日からは、大分経ってしまったが、『涼宮ハルヒの憤慨』について簡単に。
 私としては、これまでになく『ハルヒ』シリーズを素直に楽しんだように思う。TVシリーズのおかげで、キャラクター像が構築されたおかげか、あの語り手=キョンの地の文とセリフの区別の明示されない、めんどくさい文体をかなり中和して読めた気がする。それ以上に大きいのは、もう『ハルヒ』シリーズには期待もツッコミもしないで読めるようになったからではないかと思う。というのは、そもそもこのシリーズの、ハルヒがほとんど神で、それになぜか気に入られているらしいキョンという、とんでもなく開き直った設定には、読者も開き直って読むしかなく(もっとも、「萌えー」とか言っているのは別だが)、私もよ・う・や・く八巻目にして、その術を心得たということである。ようするに、何も考えず、「ふーーん、そうなんだ、うんうん」と黙って書かれていることを受け入れろ、ということである。ただまあ、クライマックスに向けて、ということなのか(もっとも、この人気シリーズを作者も角川の編集部もやすやすと手放すとは思えないが)、伏線もちらほらと張られている。『ハルヒ』シリーズの終わりを想像してみると、「この私」と「世界」を短絡につなぐ、つまらない終わりかたしか思い浮かばないなあ。一巻からして、キョンがハルヒにキスをして、世界の危機が回避されたとかって話だったし。谷川流はもう一つのシリーズの『学校を出よう』のほうが面白いらしいから、そちらを読まねば評価しきることはできないが、このままだと一発屋のまま終わりそう?ラノベは新陳代謝早いしね。

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