哲学者か道化師 -A philosopher / A clown-

映画、小説、芸術、その他いろいろ

『フルメタル・パニック!』(アニメ版)

2006-06-15 | アニメ
 『フルメタル・パニック!』のアニメ版を視聴。全26話で、原作の『戦うボーイ・ミーツ・ガール』『疾るワン・ナイト・スタンド』『揺れるイン・トゥ・ザ・ブルー』+αをカバーした内容となっている。アニメ化としては、良質なほうだと思う。あらすじとしては、中東の紛争地帯で育ち、ミスリルという世界中の紛争を抑止しようとする組織に所属している、相良宗介という主人公が、日本の女子高生である千鳥かなめを護衛する任務を受けることから始まる。かなめは、自分では築いていないながらウィスパー度と呼ばれる、現代科学を超えた知識を引き出すことのできる特殊な人間だったのだ。彼女は、彼女の能力を狙うテロリスト組織とミスリルの戦いにいやおうなく巻き込まれ、いつしか宗介との間に信頼が芽生えていく…。
 原作を読んだのが3年以上前になるので、話を思い返しながら素直に楽しめた。それに、リアルロボット・アニメとしても、けっこう良作な方だと思う。原作自体、AS(アームスレイヴ)というロボットを現行の兵器体系の延長に位置づけているだけあって、もろSFという感じではない、乾いた感じの戦闘を楽しめる。が、である、主人公宗介のASアーバレストや敵の特殊なASにはラムダ・ドライバという精神力を物理的な力に変えるトンデモ兵器が搭載されていて、通常のASではそれに太刀打ちできない、という設定が作品を単純なヒーロー物(この作品自体、B級アクションを意識しているが、まさにB級的な設定として)にしてしまう。筆者はごりごりと戦力の削られていく消耗戦のような戦闘をリアルなものだと、とりあえずは思っているので、この設定はあまり好きではない。ミスリルの母艦が潜水艦(とはいえ、かなりトンデモものな潜水艦だが)だったり、地味にいい設定を作っているだけあって、ラムダ・ドライバのヒーローのための設定というのは、いただけないのである。
 ロボット・アクションとしては、良いほうではあるが、それでも足りない感はある。よかったのは、『ボーイ・ミーツ・ガール』という回の宗介とガウルンの対決で、アーバレストが後ろ跳びしながら、ショットガンを乱射するシーンがかなり気に入ったが、それ以外は、特に出色のシーンもなく。最終回『イン・トゥ・ザ・ブルー』の宗介とガウルンの一騎打ちにしろ、こういうときにこそ、ラムダ・ドライバを(使うとしたら)使うべきなのに、まったく使わない。最終回にこそ、派手に戦うべきなのに、それがないというのは、原作がそうだからしかたないのかもしれないが、なんのためのラムダ・ドライバの設定かと思ってしまう。全体としては、テンポ良く、笑うことのできる楽しい作品なのだが、あまりロボットアニメを期待しないほうがいいのかもしれない。最近リアル・ロボット物が少ないだけに(ガンダムシードシリーズは、設定のオンパレードの、ただのトンデモアニメだと思っている)、需要は大きいのであるが。

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