こぶた部屋の住人

訪問看護師で、妻で、母で、嫁です。
在宅緩和ケアのお話や、日々のあれこれを書き留めます。
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朝から緊急訪問

2012-11-26 22:27:11 | 訪問看護、緩和ケア
先週木曜日から緊急当番でしたが、今週は電話がかなり鳴りました。

老衰の終末期のかたが3人、ずっと低空飛行で代わる代わるお電話をもらいました。
終末期の病状の受け止め方は、人それぞれなので、そのご家族のキャラクターに合わせながら、今の状況や今後の予測などを繰り返しお伝えします。

それでも不安なときは、訪問して実際に確認し、直接お話をします。

まもなく、ご家族とのお別れが来るわけですから、この期間は緊張と不安で眠れないご家族も多いのです。

いつもよりも早い呼吸や、時折ひどく痰がらみがしたり、急に高い熱が出たりと症状も変わってきます。

昨日の朝緊急訪問した患者さんは、昨日までとは打って変わって、血圧も80台で、酸素飽和度も80%前後とかなり低く、水分もほとんど取れないために、息子さんは心配でいたたまれないといったご様子でした。
何度も、何度も話し合いをして、100歳近いご高齢のお母さんを、このままそっと見送るのだと決めたのですが、いざ急激な病状の悪化があると、再び気持ちは大きく揺らいでしまいます。
実際、100歳近いお母さんの息子さんですから、かれもまた高齢者のうちに入ります。
そういう介護状況は、実はかなり多くて、介護者自身の身体状況も心配されるケースが多いのです。

前日は往診もお願いし、日曜は私もじっくりとお話をしました。

このまま食べられないのを、ただ見ているしかないのか。
でも、拘束して針を刺すなんてしたくない。
胃に穴をあけたり、鼻から管を入れるのも絶対いや。

ほかに何ができるのか。
「口に入れても、すぐに吐き出してしまうんです。」

何度も何度も、同じテーマで話し合いをしました。

結局、やはりこのまま、ご本人の身体の声を聴きながら、自然の経過に任せることになりました。
でもきっと、明日になれば、同じ悩みで彼は苦しむのでしょう。
私たちが何を言おうと、これは彼の気持ちの問題なのです。
なんどでも、私たちは付き合っていきます。

そして夜になって、また別の患者さんのお嫁さんからの電話。
呼吸がいつもと違う・・と。
やはり、通過障害のため、経口摂取がほとんどできない状況です。
いつも献身的に見守る、明るいお嫁さんがみています。
こちらのご家族は、すでにご夫婦でしっかりとその時を受け止めています。
ブレないで、臨もうとしています。
週に何回か、少量の点滴を皮下点滴しています。
そして酸素。

訪問すると、少し落ち着いたあとで、ご本人は「苦しくないし辛くない。」といいます。
表情も穏やかです。
でも、呼吸は努力様で咽頭喘鳴もあり、肺は呼吸のたびにバリバリと言っています。
酸素を2リットルにすると、少し穏やかな表情になり、酸素飽和度も92%くらいまで回復したので、あとはご家族の見守りをお願いしました。

在宅では、最後の時間はなるべくご家族との時間に充てたいと思っています。
そんななか、私たちは不要です。

そして早朝、お嫁さんからの電話は、呼吸の停止を告げるものでした。

クリニックの先生の死亡確認の後、担当看護師と待ち合わせ、最後の身支度に伺いました。

穏やかなお顔でした。

この数日、お嫁さんはベットの下でずっと付き添い、昨夜も30分おきに口を湿らせたり、痰を吸引したりしていたそうです。

それでも、彼女は一言も介護が辛いと言ったことはありません。
「眠れないから辛い。」「こちらの方が具合が悪くなる。」と言ったよく聞かれる言葉を、彼女は最後まで口にしませんでした。

いつも明るくて、それでも時折大きな目を潤ませて、よく介護しました。
こんなお嫁さんをもらった息子さんを、きっと誇りに思って旅立ったのではないでしょうか。

本当によく頑張りました。とても良いお看取りでした。

そんな形でまた一週間が始まりました。

そして今日も、いろんな問題が目白押しでした。

さて、明日からも頑張らないと。
お仕事が山のように待っていますから。

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