こぶた部屋の住人

訪問看護師で、妻で、母で、嫁です。
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入院したい人、退院したい人

2011-12-05 23:21:20 | 訪問看護、緩和ケア
例年通り、今年も師走に入って重傷者が増えてきています。

新患さんの多くは終末期にあり、年の瀬のあわただしさの中で、新しい年を迎えることを目標に過ごされています。

その他に、新患さんで増えているのは、すでに訪問看護に入っている方の連れ合いの方。

患者さんの夫であったり、妻であったり。

各家族化が進む日本で、老老介護と呼ばれるご家庭が増えていることもあり、介護する側に疲労やご病気が出て、日々の暮らしに影響が出てしまう事が多いのです。

訪問看護は、ご家庭の中での援助なので、必然的にご家族の健康状態や日々の変化も把握することとなり、今まで出来ていた介護がいい加減になったり、薬の管理がめちゃくちゃになったりという場面で、一緒に看る必要が出てきます。

このところ、そういう新患さんも続いて、あっというまにスケジュールが埋まってきました。

今年の傾向としては、入退院が多いと言う事でしょうか。
去年までは、在宅でのお看取りが圧倒的に多かったのに比べて、今年は半数近くが病院に入院してのお別れになっているようです。

最終的に入院になるか在宅になるかは、意思がはっきりしていればほとんどご本人の決定に寄ります。

状況が厳しくなれば、病状説明をしつつ、今後の方向性を話し合っていただきますが、ぎりぎりまで答えが見つからない方も多くて、土壇場でバタバタすることも時々あります。

自分で納得されて、家で最後までと言っていた方が、急な病状変化で一刻も早く入院させてほしいと言う事もあり、そういう時はなるべく早く入院先を手配する必要があります。

入院したい人の多くは、治療を望む人か介護体制が確保できない方なので、入院できると「よかったなぁ」と思います。
特に下血や吐血などがあると、ご家族のショックが大きく、ご本人は急激に苦痛と死の恐怖がのしかかるのだと思います。
入院と言っても、ホスピスはいろんな縛りが多くて、化学療法していてはだめとか、輸血はしないとか、民間療法はだめとかで入院できない方も多いのです。
あんまり縛りが多いと、何のためのホスピスなんだと腹立たしくなったりもしますが、現状のホスピスの多くはそういうところが多いです。


そして、いったんは家族のためとか辛いからと言って入院された方が、入院してみて「やっぱり家に帰りたい。こんなところで死にたくない!」と言って、その姿にご家族が奮起して退院される方も少なくありません。

今日も、一旦は入院させたものの、毎日「帰りたい。今日は迎えに来てくれたの?」と言う母の言葉と、医師の余命宣告で在宅を決心された方が帰ってきました。

久しぶりの自宅に「うれしい。本当にありがとう」というお顔は、病院にいる時とは全く違って、生気が甦っていました。

ナースSも、夫を入院させて一人自宅に残された妻に最近訪問看護が始まり、その妻に泣く泣く「夫を連れて帰りたい。」と相談され、娘さんも協力をしますと言う事で、今週中にも退院させることに鳴りました。

どちらにしても、ご本人と一番近いご家族が納得して、安心して過ごせるところにご案内できればいいと思っています。

一番つらいのは、本当は本人も家族も家がいいのに、介護上の問題で致し方なく入院する場合です。
入院するときが、長年住み慣れたご自宅とのお別れであることを、誰よりも本人がわかっていて、その家を後にする気持ちは、いかばかりだろうかと考えると、胸が痛くなってしまいます。


この時期の入院にしても退院にしても、人生の岐路に間違いはないのです。