こぶた部屋の住人

訪問看護師で、妻で、母で、嫁です。
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ウソみたいに穏やかな時間

2011-06-14 23:37:32 | 訪問看護、緩和ケア
ついさっきまで昨日、一昨日の記事へのコメントにお返事を書いていて、人の死にゆく姿を思いめぐらせていました。

私の友人のお母さんの訪問を依頼され「最後にお粥を一口食べて死にたい。」という希望を抱えるためにかなり強引に家に連れ帰ってきて3年。
長い間CVからの輸液のみで、認知の症状まで出始めていたお母さんが、家に帰ったとたん元気になって、「食べたら死ぬよ。」と言われていたのに、5日後には刺身を食べていました。
1週間後には、CVラインも抜去。
以来、ヘルパーさんや愛犬と昼は留守番。
車椅子であちこち旅行へ連れて行かれ、故郷への帰省もはたし、そして今、あちらの世界へ旅立つ準備をしています。

友人は、まるではしゃいでいるように見えるほど、明るく振舞ってはいますが、そうすることで、母との別れを自分に言い聞かせているのではないかと思います。

どれほどの親孝行をしてきたか、私たちは知っています。

お母さんは、もうほとんど水も飲めません。
けれど、とても穏やかに、そして安らかな息をして、眠っています。
痛みや苦しみはなく、額に縦しわもなく、周囲の言葉はわかり頷きますが、言葉はありません。
浮腫みはすっかり消えて、自分の身体のなかの燃料を、少しずつ燃やして静かに呼吸をしています。

「食べることをやめたんだね。」みんなそう思いました。

「これはどういう事なんだろう?不思議なほど元気に見える。血圧も酸素飽和度も全く異常がないなんて・・」と娘。

私は思わず「功徳・・じゃない?生きてきた過程が、最後に写るんじゃない?」
むすめ「功徳。うんそうだね。そういう人生だった。」

昔から、おじいちゃんやおばあちゃんが「これは功徳だよ。」といって、困っている人を助けたりしていました。
なんとなく「功徳」という言葉は知っていましたが、この時「功徳だな。今までの。」って思いました。

「功徳」とは、宗教、信仰、文化などにかかわらず「普遍的によいことをする」事だそうです。
また、仏教でいう「功徳」とはと調べると、これは宗派によって微妙にとらえ方が違うような・・・
よくわからないけれど、辞典では「よい果報を得られるような善行。普通、供養(くよう)・布施(ふせ)の類をいう。」 らしいですね。

私は、「普遍的に良いことをする。」という意味がいいな、と思いました。
お念仏を唱えるとか、お題目を唱えるとかになると、仏教なのかな。

でも、古くからの善行に対する尊敬や感謝の気持ちの表れとして、「功徳を積む(くどくをつむ)」と言うように私はとらえています。

今日、クリニックのIナースが「今日会ってきた。会えたことに感謝。まるで仏様のようなお顔だった。」と涙ぐんでいました。

うちのスタッフも、おばあちゃんにあってくると同じことを言います。

そんな風に周囲に思わせて「逢えて感謝。」と言われて、旅立てたらなんて素敵な事なんでしょうね。