こぶた部屋の住人

訪問看護師で、妻で、母で、嫁です。
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支援を阻む諸事情

2011-03-09 23:12:42 | 訪問看護、緩和ケア
一口に支援って言っても、そう簡単にいくわけではありません。

まず、何をもって支援とするか、目標をどこに持っていくかによっても、内容は全然違ってきます。

形だけ家に居られて、何とか食べれて、何とか生きていればいいのか、人として尊厳をもって、清潔な環境で質素でも穏やかに、笑顔で過ごせるようにしたいのか。

3月8日の朝日新聞に、2008年に調査したセルフネグレクトの人数が載っていましたね。
なんでも地域包括センターへのアンケート調査の結果だそうですが、「全国に1500人いる。」のだそうです。
実際は、うちのステーションだけでも現在数人は該当しますから、へたすれば瀬谷区だけでもそのくらいいるかもしれませんね。

セルフネグレクトは、自分で自分のケアを放棄して劣悪な環境のなか、医療も福祉も受けられていない方を言いますが、これは大きく二つに分かれます。

一つは「自分でできない人。」
もう一つは「自分でしない人。」

前者は、支援のしようがあるし、しがいもあります。

後者は、多くは強い意志が存在し、激しい拒否がみられます。
目の前に、ごみ屋敷の中で、腐った食べ物を食べ、冷え切った室内で、床ずれから膿を流した人がいても、本人が「来るな!入るな!」といえば、手が出せないのです。
基本的に、認知がひどく判断能力が極端に低かったり、衰弱が激しかったりしなければ、本人の意思は尊重されるべきなのだと思いますが・・。

こういう場合は、遠まきに見守って、いつでも手を出せるように門戸を開いておき、チャンスを作って少しずつ介入していく根気が必要ですね。

以前このブログにも書いた患者さん(それぞれの旅立ち)もそうでしたが、うまくきっかけがつかめれば、本人の希望に沿いながら、最低限度でもそばに寄り添えることが出来るのですが・・。

現実には、なかなか手を出せないまま、孤独死や措置入院などになることが多いようですね。

また、家族からのネグレクトも問題です。

なかには、患者を隠したり、サービス業者を脅したりすることもあり、悪質なケースではちょっとしたトラブルでも、事業所相手に訴訟を起こし、慰謝料を請求することもあると聞きました。

ただ、家族のネグレクトの背景には、その家族のパーソナリティ障害や、経済的な困窮などもあるので、いずれにしても行政が一緒に介入してくれないと、病人を救い出すことは難しくなってきます。

子供へのネグレクトや虐待がよく取り上げられていますが、老人や病人へのネグレクトや虐待も多いのです。

そして、今日腹が立ったこと。
最後の砦となるべく、行政が動かない。

父も息子も、それぞれ重篤な病気になっていて、それでもお互いかばいあいながら頑張ってきた親子。
高齢の父は、それでも在宅のチームが出来上がり、今ではかなり安定してきているのですが、息子さんの病状はどんどん悪化するばかり。
でも、息子さんはセルフネグレクトに近い状態で、自分へのサービスはすべて拒否していました。
その裏側には、自分の病気の進行を認めたくない思いも見え隠れしていました。
この頃は、なんども入退院を繰り返しており、しかもここからはちょっと遠い病院なので、通院も大変な状況でした。
それでも、お父さんへの声掛けや、IVHの確認などはしてくれていたので、いてくれるだけでも助かったし、お父さんも安心して家に居られました。

なので、区のケースワーカーには、入院先の病院と十分な連携を取っていて欲しかったのですが・・。

先日息子さんが緊急入院され、今後一人残ってしまうお父さんの生活を支える為にも、病院との連携を取って頂き、今後の支援の方向を考えなければならない状況になってしまいました。

病院側は、詳しいことは本人とご家族に直接会わなければ話せないし、所帯として関わっている区のケースワーカーならある程度情報を提供してもいいと言っています。
(この急変事件で、やっと息子さんも介護保険の申請をしてくれました。)

ここで不思議なのは、この病院も病院で、息子さんの身元引受人でキーパーソンであるお父さんが高齢で、かつ病気を持っていて動けないことを知っているのに、この期に及んでもまだ、連携室などからの問い合わせやアクションがないこと。
もう一つは、区のケースワーカーが、まったくその辺の調整をする気がないこと、です。

ケアマネにも、区のケースワーカーを動かすようにお願いしましたが、ケースワーカーから返ってきた答えは「○○病院へ入院しました。△病院へ転院しました。何かあったら病院から電話が来ると思います。そしたらお伝えします。」というものでした。

プチッ。(何の音でしょう??)

ふーん。じゃああなたは、入退院連絡係なんだ。
何か向こうから言ってこなければ、それでいいと思ってるんだ。
在宅をチームで支えるっていう意識はないんだ。
せっかくこれだけのチームがあるんだから、少しでもいい方向に持っていこうとか考えないんだ。
息子さんがいない間のお父さんの生活や、もしかしたら入院中に突然亡くなってしまうかもしれない息子さんと、お父さんの大切な時間を何とかしようとは思わないんだ。

などなど・・・ムラムラと湧き上がってきて、ほかにも似たようなこと(癌末なのに、いくら痛いと言っても、カロナールしか出してくれない医者の話)があったので、もう最後には涙が出ました。


あまりにやさしくないぞー!!

と叫びつつ、ここは明日にもお父さんの主治医など含めて手を打たねばと心に決めました。


こんなことで、支援を阻まれてなるものかと思いつつ、現実の壁は厚く高いのが現状です。
今できることは、高い壁があったらどこか潜り込める穴がいていないか、回り道がないかを探りあてることです。