アーダ、コーダ、イーダ!

浮かんでは消えていく想い。消える前に名前をつければ、何かにつながるかもしれない。何処かにいけるかもしれない。

歯なしの話(10)

2008年01月11日 21時41分58秒 | Weblog
 そこの歯科医には椅子が4つある。座る椅子はその都度違う。座ると東側に低い山が見える。緑の山が帰る頃には黒くなっている。100分近く座っていると、窓の向こうだけが時間の経過を教えてくれる。
 狭い駐車場にも慣れた、受付から最後の会計までの流れにも慣れた。しかし、口を開けてから閉じるまでのあれこれには慣れない。
 ウィーンのドリルで削られる時の摩擦。あ摩擦の匂いが何かの拍子に鼻腔をかすめる。現実でもいやだし、幻覚ならもっといやだ。一体いつまで続くのだろうか。訊くのも怖い。来週、また、あの4つのどれかに座り、臆病で弱虫な自分と対面するのだ。本日のファイト、70分。