シリコンバレーで綴る弁理士日記

創英特許事務所の米国オフィスに駐在する弁理士が日常の出来事や発見を書き綴ります。

(158) Good to Great

2007年05月21日 | 日常生活
ビジネス書を読み漁っている方なら、「ビジョナリー・カンパニー2 飛躍の法則」(ジェームズ・コリンズ著)をご存知だと思います。

著者らのチームは、GoodからGreatへの転換期を経て、そのGreatな状況を15年以上持続できた企業11社(the good-to-great companies:飛躍した企業)を、徹底的な調査を経て全米から探し出しました。そして、Greatになれなかった企業や一時はGreatになったが持続できなかった企業と比較したうえで、飛躍した企業の共通項(飛躍の法則)を見出しました。なお、GoodやGreatは、株価を使って定義されています(それぞれ「良好」「偉大」という日本語に訳されています)。

この本の原書「Good to Great」は全米で200万部のベストセラー。この本は次の理由で関心を持ったので、原書を読み進めています(数年前に出版されているのでかなり遅れていますが)。

第1の理由は、単に理想論を唱えているわけではなく、チームの5年間に渡る延べ15,000時間の調査から得られた結果に基づいて法則を見出していること。第2の理由は、選ばれた11社はコカコーラ、インテル、ゼネラル・エレクトロニクス等の名の通った企業ではなく地味な企業として紹介されているが、その11社のうち幾つかはアメリカで目にしたことがあり親しみがあること(Abott, Circuit City, Kimberly-Clark, Philip Morris, Walgreens, Wells Fargo)。

以下、本書の一部を簡単にご紹介します。

(1)飛躍した全11社に共通したのは、まずは、レベル5の経営者(Level 5 Leader)の存在。本書では、レベル5の経営者とは、個人としてもリーダーとしても有能という一般的なCEOが持つレベル1~4の資質や能力に加えて、謙虚(humility)だがプロ意識(professional will)が高く、物凄く野心があるがそれを自分のためではなく組織のために向ける者と定義しています。このように何もかもを兼ね備えた経営者は、アメリカでもあまりいないようですが・・・。

ちなみに筆者らは、レベル5の経営者らが弱々しい、おとなしいという印象を誤って与えてしまうのを懸念し、上記の謙虚(humility)という言葉を選ぶに至るまでにかなり悩んだようです。レベル5の経営者は会社の成長のためにはリストラでもなんでも行える者とも説明されていますから、日本人が抱く「謙虚」のイメージと少し違うのかもしれません。

(2)そして、この本で一番面白いと思ったのが、レベル5の経営者らは、まず優秀な人材を選び集め、その後に経営戦略を立てた、という法則。世間でよくあるのは「経営目標やポジションに合った採用」ですが、飛躍した企業ではこの順序が反対になっていたようです。この「最初に人、次に何を」(First Who...Then What)の法則の利点として、変化に臨機応変に対応できること等(全3点)が挙げられています。

20~30年前の話ですが、銀行業界に将来不況が訪れることは予期したが対策を見出せなかったWells Fargo銀行のCEOが、いつでもどこでも時には任務も考えずに優秀な人材を雇っていった。そして、その後に規制撤廃が銀行業界を襲った際、全米のどの銀行よりも上手く変化に対応できたそうです。我々のオフィス近所にもこの銀行があるのですが、こういう話を聞くと今までとは違った目で見れそうです。

(3)それから、飛躍した企業は、
①世界一になれるもの (What you can be the best in the world at)、
②経済的な原動力になるもの (What drives your economic engine)、
③強い情熱を持てるもの (What you are deeply passionate about)、
という3要素を全て満たすものを充分に理解した上で、戦略を立てたそうです(「ハリネズミの概念」として説明されています)。

これも30年前の話ですが、フィリップモリスの経営陣はタバコが好きで、それを売るのに「情熱」を燃やしていた。それに対してある競合社では、経営陣はタバコを単なるお金儲けの手段としてしか見ていなかった。結果はフィリップモリスの圧勝だったようです。

・・・・・

これらの法則を満たして飛躍に成功した企業は全米で僅か11社ですから、他の会社が簡単に真似できる代物ではないでしょう。ですが、成功企業11社に共通した法則である以上、頭に入れておいて損をする話ではないと思います。

また、多くの人にとって上記の(1)(2)は身近な話でないかもしれませんが、(3)は自分の仕事に当てはめて考えることができると思います。

私がこの本を読んで強く印象に残っている言葉は、「人の次に戦略」、それから、「情熱」です。

May 20, 2007

(写真は、「Good to Great」。「ビジョナリー・カンパニー 2」の表紙デザインの方がお洒落でしょうか・・・?)

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