8月中旬、東京を深夜に出発した私たちは木曽駒ケ岳の千畳敷に向かって、中央自動
車道を走行。途中、いくつかのサービスエリアで休憩しながら、ロープウェイのしらび
平駅行きのバス乗り場がある菅の平に無事到着。
早朝4時というのに、駐車場はすでにほぼ満杯。夜空には星が瞬いている。バス乗り場
に乗客が列をなす中、5時になると臨時バスが次々とやって来た。しらび平駅でもロー
プウェイを待つ人々の列。
ロープウェイで約7分の千畳敷駅に降り立つと気温は14度前後。
私:千畳敷に到着だ。標高2,612mだけに涼しいね。おい、南アルプス方面に雲海が広
がってるぞ。これは見事だ!
妻:うわ~、すごい!雲海を実際に見るのは初めて。雲の広がりの向こうに山の稜線
が連なってきれいね~。こんな景色を見ることができるとは思わなかったわ。
私:早朝に来た甲斐があったぞ。直接、千畳敷カール方面に出て行く人はこの雲海に気
付かないだろうな。放送で案内すればいいのに。
妻:大丈夫よ。お花畑のルートを辿れば、自然にこっちの方向を見ることになるんだか
ら。
私たちはしばらく雲海の変化を楽しんだ後、お花畑を通る散策路に向かった。清涼な空
気の中、突き抜けるような青空と宝剣岳を筆頭とする峰々の姿が美しいコントラストを
見せる。
私:大パノラマだ。素晴らしいよ。今日はどんな花に会えるのかな?
ワクワクしてきたぞ。
妻:ミヤマクロユリはもう咲き終わったんでしょうね。
私:見てごらん。数年に一度しか咲かないと言われているコバイケイソウが今年は当た
り年らしいよ。白い群落がひときわ目立っているね。
妻:小さな花がびっしりと付いているのね。そばにあるバイケイソウは緑色で地味ね。
チングルマも咲いている。あの辺のチングルマはもう秋の装いだわ。花もかわい
いけど、筆や風車のような形で風に揺れる様子が、たまらなくイイ。ずっと見て
いたいな。
私:アッ!ミヤマクロユリをひとつ見つけたぞ。愛する人に渡して、受け取ってもらえ
ると結ばれるというアイヌの伝説があるよね。見つけると嬉しくなる花のひとつ
だ。
妻:あなたはロマンチックな話が好きね。時期的に、もう咲き終わってると思っていた
だけに、たったひとつでも会えて満足よ。
八丁坂分岐点に着き、ひと休み。宝剣岳には人が立っている。下から見ていると、今に
も落っこちそうで怖い。
私:あそこには雪が残っているよ。あれ?雪の上で何かが動いている。
アッ!猿だ。猿の家族だよ。自然の中で、こんなにたくさんの猿を見るのは初め
てだ。カワイイね。
妻:どんどんこちらに近づいて来るわ。子猿の数が多いね。あそこの切り立った岩によ
じ登ろうとしている子猿はガキ大将かしら?
私:夏の間は、2,000m級の山まで食べ物を求めて登って来るってことかな。
妻:親の腰にしっかりと、しがみついている子猿の姿が微笑ましいわ。
暫く猿たちの様子を眺めたあと、再び散策路を歩き始めた。様々な高山植物に目を奪わ
れ、その都度、写真を撮るのでなかなか前に進まない。
妻:ウサギギクを見つけた。目立つ黄色だわね。ミヤマリンドウは密やかに咲いている。
私:あれはトリカブトかな?
妻:花や茎に毛がなければ、サクライウズかもね。高山植物は識別するのが難しいわ。
私:ヨツバシオガマにエゾシオガマ、モミジカラマツも見つけた。さあ、剣が池に着い
たぞ。きれいな水だ。山が水面に映り込んでるよ。ここからの眺めは一段と素晴
らしいな。
ここも「天空の楽園」だね。僕たちの記念写真も撮っておかなくちゃ。
妻:そうね。あら、ウメバチソウも咲いてるわ。今日は何種類の高山植物を見たのかし
ら。
これまで何度も千畳敷カールを訪れているが、今回ほど天候に恵まれたことはなかっ
た。ロープウェイでラクラク登った2,600mの高さから見た雲海、数年に一度と言わ
れるコバイケイソウの大群落、野生の猿たちとの出会い、宝剣岳の頂上で戯れる人を
見てハラハラしたことなどが印象に残った真夏のひとときでした。
ここへは早朝に来るべし。
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