日本人は土用の丑の日をはじめとする風物詩からもわかるように、ウナギを食す
るのが好きですね。日本のウナギは「ニホンウナギ」という種ですが、絶滅危惧
種に指定されています。絶滅危惧種の定義は「圧倒的に数が少ない希少な生き物」
「急激に数を減らしている生き物」です。ニホンウナギの指定理由は後者。減少
の理由はウナギの漁獲量より、私たちが食べる量が上回るからです。現在は足り
ない分を輸入ウナギや養殖ウナギに頼っています。その実態は国内に流通してい
るウナギはおよそ53000t。この中で輸入物は32000t(61%)、国内養殖物が20000t
(38%)、天然物はたった70t(1%以下)です。天然物が珍重されるわけです。天然ウ
ナギの漁獲量ランキングですが、2019年度の日本一は茨城県と島根県で、全国シ
ェアは共に18.2%でした。3位の岡山県15.6%の3県あわせて、国内漁獲量の約
52%を漁獲しています。茨城県が日本一ということはニホンウナギが遡上する河
川が、全国の中でとても良い環境にあるということなのです。(オッホン!)
<絶滅危惧種なのに、捕獲して食べてもよいのか?>
実はニホンウナギだけでなく、ヨーロッパウナギやアメリカウナギも同様で、世
界中でウナギは絶滅の危機が危惧されているそうです。ニホンウナギは数量的に
は多かったのですが、昭和の終わりごろから急激に減少しています。しかし、減
少を止めるための適切な管理、具体的には、捕獲禁止令や制限令が出ていないの
です。このままでは「絶滅してしまう可能性がある」というわけです。解決策は
食べる量を抑制すると同時に、ニホンウナギが健全に成育できる河川環境を取り
戻す必要があるのです。具体的にはウナギが遡上する川に河口堰やダム等の人工
物ができたり、気候変動により回遊から戻れないウナギの数が増えた事が、漁獲
高の減少の理由と考えられています。輸入ウナギと養殖ウナギで我慢しましょうね。
<輸入ウナギと養殖ウナギ>
1.輸入ウナギ:95%以上が中国と台湾からの輸入です。そこでは欧州よりヨー
ロッパウナギの稚魚であるシラスウナギを購入して、成魚までいけすで養
殖した後に、日本へ出荷しています。ですから、中国産ウナギとはヨーロ
ッパウナギなのです。
2.養殖ウナギ:ニホンウナギを人口ふ化から成魚まで生育させる「完全養殖」
は、2010年に日本で初めて成功していますが、市場に安定供給できるまで
には至っていません。そのため、ウナギ養殖の生産者は、シラスウナギの
確保を100%天然に依存しており、12月~4月までの期間に河川や海岸線で
採ったシラスウナギを陸上のいけすで養殖しています。シラスウナギの体
は透明で、長さは約6cm、つま楊枝程度で、その重さは約0.2gです。シ
ラスウナギが不漁の時は相場が高騰してしまうのはご存知のとおりです。
参考までに2019年度の養殖生産量1位は鹿児島県(41.5%)、2位愛知県
(25.5%)、3位宮崎県(18.0%)の3県で、あわせて国内生産量の約85%を生
産しています。ちなみに市町村別だと、愛知県西尾市(旧一色町)が日本
一で、「一色産ウナギ」は養殖ウナギのトップブランドです。
(茨城県でないのが悔しい!)
<茨城県の天然ウナギ>
県内での天然ウナギの漁獲は霞ヶ浦や那珂川・利根川流域が最も盛んで、震災前
は全国トップだったが、震災と原発問題で出荷制限を受けてきた経緯がある。実
は天然ウナギといっても、霞ケ浦の場合は常陸川水門で海と隔てられているから、
シラスウナギが太平洋から直接入ってくることはない。だからシラスウナギを購
入して放流し、その生長を待って漁獲しています。こうした背景から、陸上で設
営したいけすで育てたものを「養殖物」、霞ヶ浦など自然の環境で育てたものを
「天然物」と言っています。ということは、シラスウナギが遡上する那珂川流域
で行われている、はえ縄漁法やヤナ漁法などで捕獲したウナギは「こだわりの天
然物」と言えるでしょう。
<ウナギの豆知識>
1.ウナギ養殖発祥の地、浜名湖の静岡県が漁獲量ランキング外になった理由。
昔はウナギと言えば浜名湖でしたよね。原因は1962年のシラスウナギの大不
漁です。歴史的な不漁で静岡県の養殖業者たちはウナギを求めて全国へ。ま
だウナギ養殖が発達しておらず、シラスウナギの価値が見出されていなかっ
た地域から、高額でシラスウナギを買い上げたのです。これにより、「シラ
スウナギは儲かる!」と気づいた地方の人々が、次々とうなぎ養殖業に参入。
こうしてうなぎ生産量を大きく伸ばしたのが、鹿児島県であり宮崎県です。
シラスウナギが獲れやすく、温暖で水資源が豊富な場所であれば、産地にな
りやすいということでもあります。
2.養殖ウナギの品質は?
ウナギは、海でも川でも湖でも育つという、類い稀な存在です。以前は、養
殖技術や餌の良し悪しで、天然物よりも劣るとされていた養殖ウナギですが、
現在は養殖技術の向上で、味に大きな違いがないというのが一般論。実は国
産と輸入物も、味わい自体に特筆すべき違いは見受けられないと言われてい
る。もちろん個体差はあるので、泥臭いものが存在することはあるが、総じ
て養殖ウナギの品質はとても良い。それでも輸入ウナギよりも国産ウナギの
方が高額で取引されるゆえんは、味わいよりも安心、安全の面から、人気が
高いことによるものだと言う人が多い。事実、ウナギ専門店では季節によっ
て輸入物を使う店も多いのだ。
3.土用の丑の日とウナギ
土用の丑の日は、夏にしかないと思っている人がいるならば、それは間違い。
土用は実は、年に4回あります。そもそも土用とは、四季それぞれの最後の
18~19日間を指す言葉であり、丑の日とは十二支に当てはめたときに丑に当
たる日のことです。古くは、干支を使って日にちを数えていたことに由来し
ている。体調を崩しやすい季節の変わり目に、ウナギを食べて精力をつける
といったところでしょう。
4.関東ウナギと関西のウナギ
ウナギは関東と関西では、調理法に違いがあると言われている。関東は背開き
が基本。さらに、一度蒸し上げてから焼く。関西では腹開きにしたウナギが一
般的で、蒸しの工程はなく、そのまま焼き上げることが多い。地理的に中間に
位置する名古屋などでは、両方の味が楽しめるという。
5.ウナギの栄養素
コラーゲンを多く含むウナギは、美肌作りにもうってつけです。なお、コラー
ゲンの吸収を高めるにはビタミンCたっぷりのデザートが必須です。さらに、
ビタミン群は豊富(ビタミンCだけは少ない)で免疫力アップにもうってつけ
なウナギ、適度な運動に睡眠をしっかりとり、コロナ禍の酷暑は茨城県のウナ
ギを食べて乗り切りましょう。
私の住む竜ケ崎市の牛久沼も天然ウナギの漁獲と養殖ウナギで有名でしたが、河川の
コンクリート化と水門ができたことで獲れなくなりました。それでも牛久沼沿いを通
る国道6号線には、今も名残りのウナギ屋さんが並んでいます。そのお店なら「こだわ
りの天然物」が食べられます。是非足を運んで食べに来てください。
お待ちしていま~す!