ショートシナリオの館

ボケに抵抗するため、日常生活の中から思いつくままに書いています。月2回・月曜日の投稿を目指します。

下総の小江戸・水郷 佐原の歴史探訪

2016-06-27 08:20:54 | 日記

首都圏に住んでいる高校での同級生3人が喜寿を迎えたことを契機に始めた歴史探訪や文学散策。
今回の目的地は「下総の小江戸」の名で知られる千葉県佐原市です。三人はJR成田線佐原駅に
集合しました。

ヒデ: 昔、下総(しもうさ)の国と呼ばれたこの辺りは万葉集に「香取の海」と詠まれていた。
    時代は下り、徳川家康が江戸城に入ると、すぐさま新たな街づくりに着手し、大規模な
    河川改修を始めた。当時、利根川は東京湾を河口としていたが、その流れを東に移し、
    銚子を河口とした。その結果、香取の海は土砂の堆積が急速に進んで陸となり穀倉地帯
    が形成されたんだ。江戸の発展は各所での河川改修がもたらしたものだと言われている
    ね。湿地が多かった関東平野が乾燥して人々が住めるエリアが広がったこと、新鮮な食
    料が近場で調達できるようになったこと、そして、前回の世田谷歴史探訪で学んだよう
    に、どこを掘っても塩水しか出なかった江戸の街中に、飲料水を供給する配水システム
    を張り巡らしたことなどが江戸繁栄の源となったんだ。
ヤス: 世田谷の代官屋敷で郷土資料館内の木製水道管を見て、そのことを学んだね。
ヒデ: 佐原は利根川の河川改修がもたらした水運によって発展した商業都市なんだ。当時の大量
    輸送は船が中心だったから、この地域周辺だけでなく東北諸藩の年貢米なども、ここに
    集積されて江戸に届けられたんだよ。
ノブ: 正確な日本地図を作った伊能忠敬の出身地でもあるよね。
ヒデ: そうだよ。彼はここの豪商の一人だった。50歳で家督を譲った後、江戸に出て天文学を学
    び、55歳から71歳まで実測による日本地図の作成に尽力したんだ。今日は商人たちの活
    躍の息吹きが感じられる重要伝統的建造物を見学したり、継承されている祭りの文化を体
    感しよう。さらに伊能忠敬の業績をしっかりと確認したいと思う。

三人は駅を出て、商家や土蔵が並ぶ小野川沿いを街の中心部に向かって歩き始めました。青々と葉
を茂らせた柳が爽やかな風に揺れる川べりを歩くこと10分、江戸時代にタイムスリップしたような
風景が飛び込んできました。

ヒデ: 先ずは水郷佐原山車会館で祭り文化を体感しよう。この会館ではビデオシアターで祭りの
    様子を見られるし、実物の山車も展示してあるからゆっくりと観賞しよう。
ヤス: なかなか良かったよ。大きな山車が20台以上現存していて、祭りは年に2回なんだね。佐原
    祭りという伝統文化の継承と保存への強い想いが伝わってきたな。
ノブ: 展示してある山車は大きくて迫力があったね。財力のある商家がたくさんあったということ
    だな。できれば、街中を練り歩く山車を実際に見てみたいものだ。
ヒデ: 僕は佐原の大祭を見たことがあるけど、本当に一見の価値があり、お勧めだよ。

山車会館を出た一行は伊能忠敬記念館に入りました。ここには測量器具、測量図、日記などが展示
されています。案内人は自ら、本日デビューの新人だと名乗られたのですが、どのようにして地図
を作り上げたかを中心に丁寧で詳細な説明をしてくださいました。やはり、忠敬の偉業には感心す
るばかりでした。記念館を出ると、川を挟んだ向かい側にある商家造りの忠敬旧宅に入りました。
ここでは、忠敬の息遣いが感じられ、“人に正直であれ”などの家訓3か条が目に留まりました。

ヒデ: 伊能忠敬の測量精度は会館の入り口にあった衛星写真の列島地図と比較しても見劣りしな
    かったね。
ヤス: 当時の日本全図を幕府の支援を得て、弟子達と共に作り上げるという業績もさることなが
    ら、50歳で商人から全く別の世界に飛び込むというチャレンジ精神が凄いね。
ノブ: 解説にもあったけど、測量方法は正確な「1歩(69cm)」の歩幅を積み重ねたもので、丁寧
    で粘り強い測量が偉業達成の原動力になったんだね。まさに堅実な努力を積み重ねた人
    で、「一歩一歩も積もれば、地図となる」だな。
ヒデ: ここへ来る時に、橋の中央から水が流れ落ちていたけど、あれはジャージャー橋と言って
    江戸時代に作られた農業用水路を復元したものだ。30分ごとに水が出てくる。今では佐
    原を代表する名所になっているんだよ。

三人は関東で最初に制定された重要伝統的建造物を見て歩くことにしました。先ずはイギリス産の
赤レンガで造られた洋館の三菱館(旧銀行)を訪ね、金庫跡や商家・土蔵の精巧な模型を見学。中
村屋乾物店では、土蔵2階扉の看板に勝男節・祝儀道具の太い文字を見、植田屋荒物店では、店内
奥の土蔵の中まで拝観。町の中心に位置する忠敬橋(愛称“ちゅうけいばし”)にたたずんだ後、
佃煮屋の「いかだ焼本舗の正上」に入った。店内には、小野川沿いで撮影された映画ロケ時の写真
が展示されており、山口百恵・松たか子・吉永小百合の写真にしばし、足を止めて眺めた。いろい
ろと勉強して、お腹も空いてきたので、植木のある石畳の路地を進んだ所にある料亭「千よ福」に
入りビールで乾杯。小江戸弁当に舌鼓をうった。午後も歴史的建造物を見て歩きました。酒蔵での
試飲がことのほか、旨かった。

ヤス: カメラマンやツアー観光客が多かったけど、着物姿の若いタイ女性の一行に出会ったとき
    には、ここにも外国人観光客の波が来ていることを実感したよね。
ノブ: 江戸時代に逆戻りしたような気分になる佐原の街並みは、外国人にも人気のようだ。あま
    り急がずゆったり街歩きを楽しむにはいいところだよ。
ヒデ: 「お江戸見たけりゃ佐原へござれ、佐原本町江戸優り(まさり)」といわれる程、利根川
    流域の交通・経済・文化の中心地として栄えていたんだ。ここの人々は、江戸の文化を取
    り入れ、更にそれを独自のものに昇華させていった。その面影を残す町並みと風情が人々
    の心を捉えるんだろうね。
ヤス: 良いところを紹介してくれたな。いろいろと勉強になったよ。
ノブ: 俺も同感だ。埼玉県の川越とか、他の小江戸巡りも楽しみたいね。



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