ショートシナリオの館

ボケに抵抗するため、日常生活の中から思いつくままに書いています。月2回・月曜日の投稿を目指します。

戻ってきた帽子とマフラー

2013-04-29 08:09:00 | 日記



 春爛漫。ひと冬を越して、動物村の3人組は大きく成長しました。でも、まだまだ遊び

たい盛りです。今日も一緒に遊ぶために広場へ集まって来ました。


ポン吉:ミミ、座り込んで何をしているんだい?

ミミ :何かを引きずったような太い跡が向こうまで続いているのよ。何だと思う?

コン太:本当だ。大きなトカゲの手の跡のようなものもあるね。かなり大きな生き物が

     通ったんじゃないかな。村に悪さをするものでなければいいけど。

ポン吉:この跡をたどって確認してみようよ。危険なら皆に知らせなくっちゃ。


仲良し三人組は地面に残された太い帯状の跡に沿って歩き始め、たどり着いたのは川

でした。どうやら、何者かが動物村の広場を通って川の中に入っていったのは間違い

ないようです。


ミミ :私たちの仲間の足跡ではないことは確かね。川に入れる生き物ってなんだろ

     う?

ポン吉:お腹を地面に擦りながら移動したようだね。何かイヤな予感がするな。

コン太:川に入ったということは、陸上と水中のどちらでも生きられるものだよね。


その時です。川の水面が急に盛り上がり、ザバッ!という大きな水音とともに、頭の

大きなヌメッとした生き物が水中から顔を出しました。


ミミ :キャー!びっくりした。あなたは誰?

ポン吉:逃げろ!大きな口だ。襲ってくるかもしれないぞ。

水の精:ミミ、ポン吉、コン太、待ってよ。みんな逃げないでおくれ。僕はレイニー

     だよ。

コン太:ヤヤッ、僕たちの名前を知ってるぞ。今、レイニーって言ったな。

水の精:そうだよ。<雪ダルマがしゃべった!> の時に雪ダルマ姿で動けなくなって

     いたあのレイニーだよ。あの時は助けてくれてありがとう。

     今はオオサンショウウオの姿で水浴びをしていたんだ。脅かしてごめんよ。

     ちょっとだけ待っててね。


ミミ :アラッ!雪ダルマに変わった。私のマフラーをつけている。本当に雪ダルマ

     のレイニーだ。会えて嬉しいわ。

ポン吉:僕の帽子もかぶっている。あの時のレイニーだ。また会えるとは思わなかっ

     たよ。

水の精:わかってくれたかい。久し振りだね。僕は水の精だからどんなものにでも変

     わることができるって、前に話さなかったっけ。今日は暖かくて、この雪

     ダルマの姿のままでは溶けちゃうから、みんながよく知ってて安心するも

     のに変身するよ。

ミミ :何に変身するの?雪ダルマのままでいいのに。あまり驚かさないでね。

コン太:ヒャー!びっくりした。長老が急に現れた。どうしてここに長老がいるの?

水の精:レイニーだよ。長老に変身したのさ。長老の姿ならみんなも安心だろうから

     ね。

ポン吉:本当に長老だ。こんなことができるなんて信じられないよ。

水の精:ようやく雪ダルマの時に借りたマフラーと帽子を返せるね。まずはミミちゃん

     のマフラーだ。ありがとう。お礼にこのスプレーをあげるよ。これを吹き付

     けると、このマフラーは何色にでも変えることができるんだ。やってごらん。

ミミ :本当?じゃあ、私の好きなピンク色にな~れ。シューッ。アレ~、ピンク色に

     なった。今度は空色にな~れ。シューッ。ワ~、空色になった。

     これ、すごい!

水の精:気に入ったようだね。今度はポン吉くんの帽子だ。ありがとう。お礼に願いをか

     けるとどんな形の帽子にでも変わるようにしておいたよ。試してごらん。

ポン吉:本当?お父さんの好きなベレー帽にな~れ。ワッ!本当にベレー帽に変った。

     今度はとんがった三角帽子にな~れ。オオッ、本当に三角帽子になった。

     すごい!

水の精:喜んでもらえたようだね。次はコン太くんの番だ。

コン太:僕は何も貸していないよ。

水の精:いやいや、コン太くんは自分の大切な石のコレクションの中から、丸い石を

     選んで僕の目を作ってくれたんだ。だから道に迷わないで帰れたのさ。

     これが僕からのお礼だ。ほら、キラキラ光ってきれいな石だろう。南の島

     から持ってきたんだ。君の石のコレクションに加えてくれないかい。

コン太:こんなきれいな光る石は見たことないよ。大切にするね。ありがとう。

水の精:これで借りたものを3人に返すことができてよかった。それでは長老の姿から

     また、オオサンショウウオの姿に戻って、帰ることにしよう。僕は水の精

     だから、水の中が一番好きなんだ。みんな元気でね。きっとまた会える時

     が来ると思うから、僕のことを忘れないでね。さようなら。


水の精は長老の姿から再びオオサンショウウオの姿に戻ると、川の中に入って見えなく

なりました。仲良し3人組は驚いて「さようなら」の声も出ないで、ただ見つめるだけ

でした。


ミミ :レイニーは本当に戻って来たんだね。ここにマフラーとスプレーがあるもの。

ポン吉:うん、僕の頭の上には三角帽子がある。

コン太:僕の手の中にも光る石があるから、レイニーが戻って来たのは間違いないよ。

     でもこんな話、村の人たちに話しても信じてもらえないだろうな。

ポン吉:ここにあるものを皆に見せたら信じてもらえるんじゃないか?でも気味悪がっ

     て取り上げられちゃうかもしれないね。

ミミ :ねえ!ここにある物は3人だけの秘密にして誰にも見せないようにしましょうよ。

コン太:それがいいね。仲良し3人組の秘密だ。

ポン吉:僕も大賛成。


こうして仲良し3人組に新しい秘密がまたひとつ増えました。秘密が一つ増えるたびに、

3人の絆は深まっていくようです。次はどんな秘密が増えるのでしょうか。お楽しみに。
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