春爛漫。ひと冬を越して、動物村の3人組は大きく成長しました。でも、まだまだ遊び
たい盛りです。今日も一緒に遊ぶために広場へ集まって来ました。
ポン吉:ミミ、座り込んで何をしているんだい?
ミミ :何かを引きずったような太い跡が向こうまで続いているのよ。何だと思う?
コン太:本当だ。大きなトカゲの手の跡のようなものもあるね。かなり大きな生き物が
通ったんじゃないかな。村に悪さをするものでなければいいけど。
ポン吉:この跡をたどって確認してみようよ。危険なら皆に知らせなくっちゃ。
仲良し三人組は地面に残された太い帯状の跡に沿って歩き始め、たどり着いたのは川
でした。どうやら、何者かが動物村の広場を通って川の中に入っていったのは間違い
ないようです。
ミミ :私たちの仲間の足跡ではないことは確かね。川に入れる生き物ってなんだろ
う?
ポン吉:お腹を地面に擦りながら移動したようだね。何かイヤな予感がするな。
コン太:川に入ったということは、陸上と水中のどちらでも生きられるものだよね。
その時です。川の水面が急に盛り上がり、ザバッ!という大きな水音とともに、頭の
大きなヌメッとした生き物が水中から顔を出しました。
ミミ :キャー!びっくりした。あなたは誰?
ポン吉:逃げろ!大きな口だ。襲ってくるかもしれないぞ。
水の精:ミミ、ポン吉、コン太、待ってよ。みんな逃げないでおくれ。僕はレイニー
だよ。
コン太:ヤヤッ、僕たちの名前を知ってるぞ。今、レイニーって言ったな。
水の精:そうだよ。<雪ダルマがしゃべった!> の時に雪ダルマ姿で動けなくなって
いたあのレイニーだよ。あの時は助けてくれてありがとう。
今はオオサンショウウオの姿で水浴びをしていたんだ。脅かしてごめんよ。
ちょっとだけ待っててね。
ミミ :アラッ!雪ダルマに変わった。私のマフラーをつけている。本当に雪ダルマ
のレイニーだ。会えて嬉しいわ。
ポン吉:僕の帽子もかぶっている。あの時のレイニーだ。また会えるとは思わなかっ
たよ。
水の精:わかってくれたかい。久し振りだね。僕は水の精だからどんなものにでも変
わることができるって、前に話さなかったっけ。今日は暖かくて、この雪
ダルマの姿のままでは溶けちゃうから、みんながよく知ってて安心するも
のに変身するよ。
ミミ :何に変身するの?雪ダルマのままでいいのに。あまり驚かさないでね。
コン太:ヒャー!びっくりした。長老が急に現れた。どうしてここに長老がいるの?
水の精:レイニーだよ。長老に変身したのさ。長老の姿ならみんなも安心だろうから
ね。
ポン吉:本当に長老だ。こんなことができるなんて信じられないよ。
水の精:ようやく雪ダルマの時に借りたマフラーと帽子を返せるね。まずはミミちゃん
のマフラーだ。ありがとう。お礼にこのスプレーをあげるよ。これを吹き付
けると、このマフラーは何色にでも変えることができるんだ。やってごらん。
ミミ :本当?じゃあ、私の好きなピンク色にな~れ。シューッ。アレ~、ピンク色に
なった。今度は空色にな~れ。シューッ。ワ~、空色になった。
これ、すごい!
水の精:気に入ったようだね。今度はポン吉くんの帽子だ。ありがとう。お礼に願いをか
けるとどんな形の帽子にでも変わるようにしておいたよ。試してごらん。
ポン吉:本当?お父さんの好きなベレー帽にな~れ。ワッ!本当にベレー帽に変った。
今度はとんがった三角帽子にな~れ。オオッ、本当に三角帽子になった。
すごい!
水の精:喜んでもらえたようだね。次はコン太くんの番だ。
コン太:僕は何も貸していないよ。
水の精:いやいや、コン太くんは自分の大切な石のコレクションの中から、丸い石を
選んで僕の目を作ってくれたんだ。だから道に迷わないで帰れたのさ。
これが僕からのお礼だ。ほら、キラキラ光ってきれいな石だろう。南の島
から持ってきたんだ。君の石のコレクションに加えてくれないかい。
コン太:こんなきれいな光る石は見たことないよ。大切にするね。ありがとう。
水の精:これで借りたものを3人に返すことができてよかった。それでは長老の姿から
また、オオサンショウウオの姿に戻って、帰ることにしよう。僕は水の精
だから、水の中が一番好きなんだ。みんな元気でね。きっとまた会える時
が来ると思うから、僕のことを忘れないでね。さようなら。
水の精は長老の姿から再びオオサンショウウオの姿に戻ると、川の中に入って見えなく
なりました。仲良し3人組は驚いて「さようなら」の声も出ないで、ただ見つめるだけ
でした。
ミミ :レイニーは本当に戻って来たんだね。ここにマフラーとスプレーがあるもの。
ポン吉:うん、僕の頭の上には三角帽子がある。
コン太:僕の手の中にも光る石があるから、レイニーが戻って来たのは間違いないよ。
でもこんな話、村の人たちに話しても信じてもらえないだろうな。
ポン吉:ここにあるものを皆に見せたら信じてもらえるんじゃないか?でも気味悪がっ
て取り上げられちゃうかもしれないね。
ミミ :ねえ!ここにある物は3人だけの秘密にして誰にも見せないようにしましょうよ。
コン太:それがいいね。仲良し3人組の秘密だ。
ポン吉:僕も大賛成。
こうして仲良し3人組に新しい秘密がまたひとつ増えました。秘密が一つ増えるたびに、
3人の絆は深まっていくようです。次はどんな秘密が増えるのでしょうか。お楽しみに。