みちのくの山野草

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1379 賢治だって間違うことも

2010-03-21 08:00:01 | 岩手の冷害・旱害
        【↑Fig.1 「雨ニモマケズ手帳」(71~72p)】
   <校本宮澤賢治全集 資料第五(復元版雨ニモマケズ手帳)、筑摩書房より>

 以前、「雨ニモマケズ手帳」の中にある”メモ「土偶坊」の太字部分を報告したが”、注意深く見てみると上の写真で判るようにた小さい文字で書かれたメモの中に興味深いものが見つる。それを前回のものに緑色の文字で追加して以下に示したい。
      土偶坊
       ワレワレハ(後で削除)カウイフ
       モノニナリタイ
第一景
     薬トリ(後で削除)
第二景 母
     子(後で削除)病ム

           デクノ坊見ナィナ
第三景 青年ラ ワラフ
      土偶坊 石ヲ
      投ゲラレテ遁ゲル
第四景 老人死セントス
第五景 青年ラ害シニ(後で削除)
      ヒデリ
第六景 ワラシャドハラヘタガー

      雑誌記者 写真
第七景 遠国ノ商人(後で削除)
第八景 恋スル女
第九景 青年ラ害
       セントス
第十一景 春

第十景 帰依者
      帰依ノ女

つまり、このメモの中にデクノ坊という言葉が登場しているのである。
 前回の報告のときにはこのことが気がつかず、その折は
  ”土偶坊”は”デクノボー(木偶坊)”のイメージを彷彿とさせる。
ということで終わってしまったが、デクノ坊がこのメモの中にあるということは
  ”土偶坊”=”デクノ坊(木偶坊)”
と捉えて良いということだろう。
 したがって、メモ「土偶坊」は「雨ニモマケズ」を演劇化、脚本化しようとしたためのメモであるといっても良いだろう。

 すると、
第五景 青年害シニ(後で削除)
     ヒデリ

の部分にあるヒデリは「雨ニモマケズ」の中の「ヒドリ」と対応すると見て間違いなかろう。
 とすれば、この点からも
  「雨ニモマケズ」の「ヒドリ」はやはり「ヒデリ」の誤記
なのだろうという確信が増してくる。

 そして、もちろん
  ヒドリノトキハナミダヲナガシ
  サムサノナツハオロオロアルキ

は対句表現のはずだから、『ヒドリノトキ』と『サムサノナツ』は意味が対にならねばならい。ところが『日傭労働(日用取)』と『冷夏』はどうみたって対にはなり得ない。したがってこの観点からも
    『ヒドリ』日傭労働(日用取)
だと思うし、『ヒデリノトキ』と『サムサノナツ』の方が遥かに対になっていると思う。この観点からも
  「雨ニモマケズ」の「ヒドリ」はやはり「ヒデリ」の誤記
といわざるを得ないのではなかろうか。

  *****************************************************************************
 以上、このシリーズかなり長くなったが、私の結論は
  「雨ニモマケズ」の「ヒドリ」はやはり「ヒデリ」の誤記。
であり、
  賢治だって人の子、間違うこともある。
という当たり前のことなのではなかろうか。

 これで『ヒドリ』シリーズはお了いにしたい。

 続きの
 ”「「岩手県災異年表」の周辺」(伊藤信吉)より”へ移る。
 前の
 ””デクノボー”の役割”に戻る。

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