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〔十いくつかの夜とひる〕

賢治が封印した詩稿群(「補遺詩篇Ⅱ」分)      〔十いくつかの夜とひる〕    十いくつかの夜とひる    患んでもだえてゐた間    寒くあかるい空気のなかで    千の芝罘白菜は    はぢけるまでの砲弾になり    包頭連の七百は    立派な麺麭の形になった    あゝひっそりとしたこの霜の国    ひっそりとしたすぎなや砂    しかも向ふでは川がときどき、 . . . 本文を読む
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スタンレー探険隊に対する二人のコンゴー土人の演説

賢治が封印した詩稿群(文語詩未定稿分)    スタンレー探険隊に対する二人のコンゴー土人の演説    白人白人いづくへ行くや    こゝを溯らば毒の滝    がまは汝を膨らまし    鰐は汝の手を食はん             ちがひなしちがひなし         がまは汝の舌を抜き         鰐は汝の手を食はん    白人白人いづくへ行くや    こゝより奥は暗の森 . . . 本文を読む
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〔馬が一疋〕

賢治が封印した詩稿群(「第三集 詩稿補遺」分)     〔馬が一疋〕        馬が一疋    米を一駄大じにつけて    ひかって浅い吹雪の川を    せいいっぱいにあるいてくる    ひともやっぱり    十本ばかりの松の林をうしろにしょって    下ばかり見てとぼとぼくる    駒頭から台へかけて、    草場も林も    山は一列まっ白だ    上ではそらが青 . . . 本文を読む
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〔もう二三べん〕

賢治が封印した詩稿群(「第三集 詩稿補遺」分)     〔もう二三べん〕    もう二三べん    おれは甲助をにらみつけなければならん    山の雪から風のぴーぴー吹くなかに    部落総出の布令を出し    杉だの栗だのごちゃまぜに伐って    水路のへりの楊に二本    林のかげの崖べり添ひに三本    立てなくてもいゝ電柱を立て    点けなくてもいゝあかりをつけて . . . 本文を読む
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冗語

賢治が封印した詩稿群(「第三集 詩稿補遺」分)   冗語    また降ってくる    コキヤや羽衣甘藍、    植えるのはあとだ    堆肥を埋めてしまってくれ    啼いてる啼いてる    水禽園で、    頭の上に雲の来るのが嬉しいらしい    孔雀もまじって鳴いてゐる    北緯三十九度六月十日の孔雀だな    ははは 羆熊の堆肥    かういふものをこさえたの . . . 本文を読む
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春曇吉日

賢治が封印した詩稿群(「第三集 詩稿補遺」分)     春曇吉日         朱塗の蓋へ、         廻状至急と書きつけた、         状箱をもって         坂をのぼり         ひばのかきねをはいり         いちいちふれてあるくところ         明か清かの気風だな         あの調子では         まだ二時間は集るまい . . . 本文を読む
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〔馬行き人行き自転車行きて〕

賢治が封印した詩稿群(文語詩未定稿)   〔馬行き人行き自転車行きて〕    馬行き人行き自転車行きて、    しばし粉雪の風吹けり    絣合羽につまごはき    物噛むごとくたゝずみて    大売り出しのビラ読む翁    まなこをめぐる輻状の皺    楽隊の音からおもてを見れば    雲は傷れて眼痛む    西洋料理支那料理の    三色文字は赤より暮るゝ     . . . 本文を読む
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〔湯本の方の人たちも〕

賢治が封印した詩稿群(「第三集 詩稿補遺」分)    〔湯本の方の人たちも〕    湯本の方の人たちも    一きりついて帰ったので    ビラの隙からおもてを見れば    雲が傷れて眼は痛む    西洋料理支那料理の    三色文字は赤から暮れ    硝子はひっそりしめられる    馬が一疋東へ行く    古びた荷縄をぶらさげて    雪みちをふむ    引いて行くの . . . 本文を読む
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〔まあこのそらの雲の量と〕

賢治が封印した詩稿群(「第三集 詩稿補遺」分)    〔まあこのそらの雲の量と〕    まあこのそらの雲の量と    きみのおもひとどっちが多い    その複雑なきみの表情を見ては    ふくろふでさへ遁げてしまふ    清貧と豪奢はいっしょに来ない    複雑な表情を雲のやうに湛えながら    かれたすゞめのかたびらをふんで、    さういふふうに行ったり来たりするのも . . . 本文を読む
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会食

賢治が封印した詩稿群(「第三集 詩稿補遺」分)   会食    互に呼んで鍬をやめ、    北上岸の夏草に    蒼たる松の影をかぶって    簡手造氏とぼくとは座る、    手蔵氏着くる筒袖は    古事記風なる麻緒であって    いまその繊維柔軟にして    色典雅なる葱緑なるを    ぼうぼうとして風吹けば    人はいよいよ快適である    僕匆惶と帽子をさぐり . . . 本文を読む
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保線工夫

賢治が封印した詩稿群(「第三集 詩稿補遺」分)      保線工夫        クレオソートも塗り    飾りも済んだ電柱を    六本積んでトロを控へて待ってると    十時五分の貨物列車が    日向をごろごろ通って行き    一つの凾の戸口から    むやみに黒いぶちのある    仔牛が顔を出したので    まっさきに立つ詮太がわらひ    かしらもわらひみんなもわ . . . 本文を読む
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〔あしたはどうなるかわからないなんて〕

賢治が封印した詩稿群(「第三集 詩稿補遺」分)    〔あしたはどうなるかわからないなんて〕        あしたはどうなるかわからないなんて、    百姓はけふ手を束ねてはゐられない    折鞄など誰がかゝえてあるいても、    木などはぐんぐんのびるんだ    日が照って    うしろの杉の林では    鳩がすうすう啼いてゐる    イギリスの百姓だちの口癖は    りん . . . 本文を読む
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会見

賢治が封印した詩稿群(「第三集 詩稿補遺」分)      会見    (この逞ましい頬骨は     やっぱり昔の野武士の子孫     大きな自作の百姓だ)    (息子がいつでも云ってゐる     技師といふのはこの男か     も少しからだも強靱くって     何でもやるかと思ってゐたが     これではとても百姓なんて     ひどい仕事ができさうもない     だまっ . . . 本文を読む
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三月

賢治が封印した詩稿群(「第三集 詩稿補遺」分)      三月    正午になっても    五分だけ休みませうと云っても    たゞみんな眉をひそめ    薄い麻着た膝を抱いて    設計表をのぞくばかり    稲熱病が胸にいっぱいなのだ    一本町のこの町はづれ    そこらは雪も大ていとけて    うるんだ雲が東に飛び    並木の松は    去年の古い茶いろの針を . . . 本文を読む
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賢治が封印した詩稿群(「第三集 詩稿補遺」分)    霰        鍬をかついだり    のみ水の桶をもったりして    はだしで家にかけこむところは    やまと絵巻の手法である    現にいまこの消防小屋の横からぱっとあらはれて    ちらっと横目でこっちを見    きものの袖で頭をかくし    橋へかゝってゐる人などは    立派にその派の標本である    小屋の . . . 本文を読む
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