すずりんの日記

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小説「雪の降る光景」第3章16

2008年06月14日 | 小説「雪の降る光景」
 私が踏み入れてしまった道は、ナチスの対極にあり、ナチス社会から反ナチと非難される道であり、悲しい時や辛い時に心が傷つき悲鳴を上げる生き方である。自分の時間や気持ちを割いてまで他人のことを思いやらなければならず、人を殺すことに罪の意識を感じなければならない。クラウスと言いたくないことを言い争わなくてはならず、チャーリー・チャップリンの映画を見て込み上げた熱いものを押し殺してはいけない道なのだ。
 この、ナチスの私にとって辛く苦しい道に足を踏み入れながら、私は総統の忠実な部下で在り続けている。しかし、これから私がたどり着くであろうこの道の延長上に、総統の姿は無い。
 
 私はそれでも行くのか?

 どこかから、ナチスの私が私に尋ねた。

 これからの近い将来、我々ナチスへの非難は国際的な規模で高まり、アドルフ・ヒトラーはその槍玉に上がるだろう。戦争の誘発、国民の洗脳、ユダヤ人を始めとする他民族の大量虐殺等が「極めて非人道的である」という理由により、民衆はいつの日か立ち上がり我々を殺すだろう。そして、こう言うのだ。
「悪は滅びた。もう二度と戦争はしない。我々は平和を手に入れたのだ。」と。

 しかし、とナチスの私は言う。

 しかし、彼らは本当に正しいのか?

 (つづく)

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