道端鈴成

エッセイと書評など

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Tube's dilemma:甲州選挙と山教組

2010年07月10日 | Tube's dilemma
甲州選挙という言葉がある。山梨県に濃厚に見られる地縁血縁、親分子分などの利害関係を通じた選挙のありかたのことで、小沢氏の後見役で自民党のドンだった金丸信が甲州選挙のマスターだったとされる。金丸信というと、保守と思われるが、旧社会党の田辺氏と盟友で、北朝鮮をともに訪問しているように、理念よりもっぱら利害の政治家だった。金丸氏が脱税で捜査されたときに、金丸氏の自宅からは北朝鮮製と見られる金塊が発見されている。

甲州は葡萄の産地で、甲州の悪ガキ達は葡萄を盗んで食べたりした。日川高校の運動部の学生が、近くの葡萄園で葡萄を盗み、食べながら合宿所に帰り、葡萄の殻の後を追った農民によって盗みが露見したなどという間抜けな話しもある。金丸氏は、柔道をやっていた学生時代、やはり葡萄園で葡萄を盗んで、あわや捕まりそうになったが、とっさに葡萄棚の上に寝ころんで事なきをえたというエピソードがある。土建屋政治の時代における甲州選挙のマスター、金丸信氏は山梨県が生んだ稀代の寝技政治家だった。

甲州選挙の特徴は、政治理念や政策とは無関係に地縁血縁、利害関係のしがらみで、投票行動が決まることである。もうずいぶん昔になるが、山梨県の地方選挙で、夜、集落の境界に見張りがいるのを見せられて驚いたことがある。他陣営による戸別訪問と買収を警戒しているとのことだった。今では、そんな露骨なことはないだろうが、政策や政治理念よりも地縁血縁、利害関係のしがらみによる選挙行動という甲州選挙の基本特徴は相変わらず健在のようだ。

現在、山梨県の国会議員は衆議院議員3名、参議院議議員2名、すべて民主党の議員で占められている。民主党王国である。甲州選挙と民主党王国山梨はどう関係しているのだろうか?

甲州選挙と民主党王国山梨をつないでいるのは山教組(山梨県教職員組合)かもしれない。

下は山梨県在住の高校(たぶん私立高校)の国語の先生による観察と感想である。 

「あえて書きますが、これだけ問題視され、これだけ注目されているにもかかわらず、公立の先生方は票集めをしております。ま、さすがに一人80ではなく20だそうですが…苦笑。もちろん個人個人の先生方を責めるつもりは毛頭ありません。ご苦労様です、大変ですねと申し上げたいくらいです。私もそうした組織に属していたなら当然皆さんと同じ行動をとっていることでしょう。しかし、そのようにある意味個人の意志や善意をも凌駕し粉砕してしまう強力な負の力を持った「山教組」については、もう本当に呆れ返るばかりであります。そしてそのドンである輿石東先生。いわゆる甲州選挙も、以前のようなあからさまなカネのばらまきなんかはなくなって、多少おとなしくなりましたが、なんというか、それぞれの組織やら地縁やら血縁やらの縛りは相変わらず残っておりまして、それに反旗を翻したりすると、もうその組織や地域や親戚の中では生きていけない、他県にでも亡命しなければならないというような雰囲気は残っています。」(不二草子、7月8日

山教組は、全国平均の組織率が30%を切るなかで、100%近い組織率を誇っている。山教組の幹部だった輿石氏が教育に政治的中立はないと堂々と述べたように、組織率と地元への密着が抜群なだけに、山教組による統制力はかなり強いらしい。「民主党と日教組」で詳述されているように、山教組の幹部、学校での管理職、教育委員会が一体となって、山教組を核として、当事者や関係者には逆らいがたい構造が強固にできあがっている。以下にWikipediaの日教組の項から、山梨県の事例を抜粋する。

「山梨県教職員組合(略称:山教組)は、民主党の輿石東参院幹事長(当時)の2004年夏に行われた参議院議員選挙に向けて、校長、教頭を含む小中学校教職員らから組織的に選挙資金を集めたとして、産経新聞に報道された。産経新聞は、この資金集めが山教組の9つの地域支部や傘下の校長組合、教頭組合を通じ、「カンパ」や「選挙闘争資金」の名目で、山教組の指令により、半強制的に実施されていると報じた。同紙には複数の教員による「資金は輿石東への政治献金として裏口座でプールされた」という証言が掲載された。教員組合による選挙資金集めは、教員の政治活動などを禁じた教育公務員特例法に違反する疑いもあるほか、献金には領収書も発行されておらず、政治資金規正法(不記載、虚偽記載)に抵触する可能性も指摘された。山梨県教育委員会は、山教組委員長や校長ら19人を処分したが、文部科学省は再調査を求めた。また国会でもこの問題が取りあげられ、「法令が禁じた学校での政治活動だ」との追及がなされた。その後、山教組幹部ら2人が政治資金規正法違反で罰金30万円の略式命令を受け、山梨県教育委員会も24人に対し、停職などの懲戒処分を行った。山教組幹部らは「教育基本法改正を前に狙い撃ちされた」と批判したが、こうした山教組の姿勢には批判の声もあがった。」

政治資金規正法違反で有罪となった山教組幹部は、後に学校の管理職に昇進している。山梨県の教員の世界では、山教組幹部となることが昇進への有力な道らしい。(例えば、昭和63年から平成10年までの山教組役員経験者の昇進状況を見ると、管理職の年齢に達した125人中の113人(約9割)が県教育委員会、校長、教頭などの管理職に就任している。「民主党と日教組」p.111、112)山教組は、国旗、国歌の拒否など日教組につきものの過激なイデオロギー的こだわりは弱い。イデオロギー的こだわりのうすい山教組に対しては地元の拒否感もなく、ある種の地方の名士として、地縁・血縁、教員教え子・父兄の縁、利害関係のしがらみを通じて、山梨県にしっかりと根をはって、強力な集票マシーンとなっている。

イデオロギー的こだわりのなさ、縁やしがらみの重視とそれを通じての集票は、甲州選挙の特徴を引き継ぐものだろう。金丸信の時代の土建屋政治に続く反自民の時代における甲州選挙の一つの形なのかもしれない。以前、山教組関係の民主党支持者に民主党の政策の批判をしたことがある。攻撃的で逃げ道をふさぐような自分の批判の仕方に問題があったのかもしれないが、最後は「もっとえらいひとが知ってるら」、「そんあこたあどうでもいいだ」で終わってしまいまともな議論にならなかった。要するに政策や理念よりも、縁やしがらみの方が大切ということなのだろう。

不二草子の著者は、上で引用した記事の続きでこう書いている。
「客観的に見れば、まさに「日本的」な風土でありますし、古き良き日本、義理人情、あるいは滅私奉公というようなモノが残っているとも言えるからです。しかし、そうしたモノが、ある意味無反省に民主党勢力とつながることには危険を感じます。これも、単に私がアンチ民主党だということを言っているのではありません。民主党にも優れた政策はありますし、戦後史的な意味において評価すべき価値もあると思っています。ただ、それと、なぜ「日本的」なものがくっつくのかが、正直理解できないのです。いや、状況も理由も理解できるのですが、そうした判断をする人たちのポリシーというか、ポリシーのなさが理解できないのです。ポリシーなくして何がポリティックスかと。そう、言い方は悪いのですが、あまりに目先のことに心を奪われているような気がしてならないのです。古き良き日本が残っていると同時に、悪しき甲州商人根性も根深く残っているのですね。」(不二草子、7月8日

インサイダーにとって「古き良き」と思えるかは別として、地元密着や縁やしがらみを大切にするのは悪いことではない。理念や政策ばかり言うよりは、望ましい場合も多いだろう。甲州選挙も地元の政治のレベルにとどまっていればまだ害は少なかったかもしれない。しかし、今回は不幸なことに甲州選挙山教組版が国政のゆくえに関わってしまっている。山梨県民は、小沢一郎氏の後見人だった稀代の寝技政治家金丸信氏につづいて、小沢一郎氏の盟友で教育に政治的中立はないと公言してはばからない輿石東氏を国会に送り出し続けるという名誉を担うのだろうか?山梨県民の民度が問われている。
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