エレミヤ書 38章
「もし私があなたに告げれば、あなたは必ず私を殺すのではありませんか。」15節
前章で丸天井の地下牢に投げ込まれたエレミヤは、もうこんなことはこりごりだとして神のことばを語ることを止めてしまったかというと、そうではありませんでした。38章の記事を37章と同じ出来事について述べていると考える人もいますが、別の事柄であり、事態はエレミヤにとって一層深刻になったということをむしろ伝えています。
今度は彼は、監視の庭にある王子マルキヤの穴に投げ込まれました。6節に「エレミヤは泥の中に沈んだ」とあります。ゼデキヤ王はエレミヤ憎し、殺すべしと主張する者たちの声に抗し切れずに彼らのやりたい放題を許します。「王は、あなたがたに逆らっては何もできない」は、ゼデキヤがどのような立場に置かれていたかを垣間見ることのできることばです。
エレミヤを救出するところから考えると、ゼデキヤはエレミヤへのある種の敬意のようなものを抱いていたのかもしれません。彼のことばは受け入れ難いが、真実が語られているのではないかと、エレミヤを無視することができないのです。そのエレミヤからゼデキヤはことばを引き出したいのです。自分を支え、慰めになるような…。
しかし、エレミヤからのことばは変わらないものでした。それとともに、ゼデキヤにはこの時点でなお、チャンスが残っていたこともエレミヤのことばから分かります。「バビロンに降伏せよ」を聞くか聞かないかは、神がゼデキヤに与えられた最後のチャンスでした。しかし、彼はそれをみすみす逃してしまいます。
神のことばを語ることにいのちを懸けるエレミヤと、神のことばを受け入れることを拒むゼデキヤの姿がここにはあります。