以下は4月4日に、「核保有」を議論せよ、と題して掲載された、櫻井よしこさんの定期連載コラムからである。
本論文も彼女が最澄が定義した国宝、至上の国宝である事を証明している。
日本国民のみならず世界中の人達が必読。
特に、国民の税金で生計を立てている政治屋諸氏とメディアで生計を立てている人間達は、彼女の爪の垢でも煎じて飲まなければならない。
見出し以外の文中強調は私。
ロシアによるウクライナヘの侵略戦争で2つのことが明白になった。
①核大国が核のない小国を核で恫喝する想定外の事態が起きた②米国が口シアの核の脅しに屈して軍事介入を回避した。
河野克俊前統合幕僚長は国家基本問題研究所でこのように語り、今回の事例は米国が核の脅しを押しとどめなかった初めての事象であり、米国の核による拡大抑止への信頼が損なわれたと総括した。
ウクライナでの侵略戦争は、直接の侵略者ロシアとその同調者中国の異形の姿をあぶり出した。2月4日、両国は共同声明で「無限」の友情と協力をうたい上げた。
その後両国がロシアのウクライナ侵略を了解し合っていたとの情報が報じられた。
米紙ニューヨーク・タイムズは3月2日、中国がロシアに対し北京冬季五輪閉幕までは侵攻しないよう求めたと報じた。
英紙タイムズは今月2日付でロシアの侵略開始直前の2月20日から中国がウクライナの国防関係機関や銀行、鉄道、核関連機関などに大規模サイバー攻撃を仕掛けていたと報じた。
同時進行で、中国の習近平国家主席はロシアからの新たな天然ガスの輸入、小麦の輸入制限撤廃、国際的な決済網から除外されたロシアに人民元による決済制度を提供し、今日に至るまでロシア非難はしていない。
同盟関係と見まがうほど中露関係は緊密で、米国は中露両面作戦を迫られつつある。
そして、こうした中露の脅威を最も厳しい形で受けるのは、わが国なのだ。
戦後最大の危機に対処する基本は国防予算の大幅増である。
米国のバイデン大統頷は3月28日、2023会計年度(22年10月~23年9月)の予算教書を発表した。
米国では予算の編成や決定権は議会にあるので今後、修正される可能性が大きいとはいえ、バイデン氏の提示は十分とはいえない。
予算教書で国防費は22年度比4%増の8133億㌦(約100兆円)、真水で1.5%の増加である。
予算教書の公表に先立ち、米国防総省はバイデン政権初の国家防衛戦略(NDS)で中国を「最重要の戦略的競争相手」とした。
中国軍に対処するには米海軍は艦艇保有数を現在の298隻体制から500隻体制への飛躍的増強が必要とされるが、バイデン案では新造船は9隻にとどまる。
空軍は48機のF35の導入要望を33機にまで減らした。
その分は気候変動対策を最優先するバイデン氏が、海兵隊を上回る「市民気候部隊」創設の予算として活用するそうだ。
だが、わが国は米国のことなど言える立場にはない。
岸田文雄首相は菅義偉前首相とバイデン氏が昨年4月の日米首脳会談で合意した「日米同盟をより一層強化」するために必要な防衛費の大幅増について、全く結果を出していないではないか。国防予算増額に熱心なのが中国だ。
2022年の国防費は経済成長目標である「5.5%前後」を超える前年比7.1%増の約26兆円超で、日本の5倍近くだ。
習近平国家主席は3月7日、「党の強軍思想を貫徹せよ」「全軍は戦うための取り組みに力を入れよ」とげきを飛ばした。
人民解放軍はロシア同様、核の先制使用も否定しない。
ガルージン駐日ロシア大使は、北大西洋条約機構(NATO)とウクライナに関してロシアは隠すことなく立場を表明し、その上で「特別軍事作戦」に踏み切ったと強調した。
一体何が悪いのかというかのような口ぶりだ。
確かにプーチン大統領は昨年7月、ウクライナの「征服」を正当化する論文を発表した。
ウクライナ人とロシア人は「一つの民族」で、ソ連崩壊でウクライナは奪われ、ロシアには取り戻す権利があるとの身勝手な主張だ。
それを聞いても西側はまさか21世紀に突然、独立主権国を軍事侵略する蛮行が起きるとは、考えなかった。
世界の秩序維持に責任ある国俥常任理事国が、核のない小国を核で脅すなどあり得ないと、中国を除く国々は考えた。
だが、プーチン氏は真剣だったのだ。
教訓は、独裁者の言葉は信じなければならない、受けとめて対抗策を準備せよということだ。
プーチン氏同様、習氏も明言している。
台湾統一は中国共産党の歴史的使命で、武力行使もあり得る、と。
プーチン氏のウクライナ侵略に習氏の台湾侵略が重なる。
それは尖閣諸島(沖縄県石垣市)、沖縄県、日本への侵略でもある。
中国の台湾攻撃の時期や手法は分からないが、国際法を無視し、核攻撃もためらわない専制独裁者が少なくとも2人、日本周辺に存在するのは確かだ。
ドイツはウクライナ危機に目覚めて見違えるばかりに変身した。
軍事忌避の姿勢を改め一挙に普通の国に戻り、軍事力構築に邁進(まいしん)し始めた。
日本だけ、暗闇の中にうずくまり続けている。
防衛予算大幅見直しにとどまらず、なぜわが国の防衛体制、国全体の在り方の見直しが必要なのか。
政府以下、私たち全員が明確な答えを出すときだ。
核で脅す核大国が出現したではないか。
ロシアー国でなく、中国も北朝鮮も同様だ。
加えて、精密誘導兵器の進歩で軍事攻撃が正確にできるようになり、低出力の核兵器も開発され、核は「使える兵器」となった。
通常戦力で劣勢に立つ国が、核を使う危険性が生まれたのだ。
核に対して通常戦力は無力である。核に対抗するには核による抑止力しかない。
欧州はかつてソ連の中距離核ミサイルに対抗する形で同じだけの中距離核ミサイルを保有し、そこから交渉して全廃した。
「核に対する核の抑止力」と「軍事力の均衡」が機能したのだ。
岸田文雄首相は[唯一の戦争被爆国として世界平和に貢献するわが国の立場、非核三原則は絶対に崩すべきでない」として非核三厩則を国是だと語る。
善意の思考停止である。
善意だが、国土、国民を守る責任の放棄である。
抑止力としての核の保有について政治家は率先して深く考え、広く議論することだ。
議論だけで終わらずに日本国の基盤とすべく結論を導き出す志を持て。

