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帝国の残影 兵士・小津安二郎の昭和史…輿那覇 潤〈著〉

2011年04月04日 17時49分14秒 | 日記
4月3日、朝日新聞読書欄から。 評者:中島岳志 北海道大学准教授

昭和の日本を描いた小津映画には、直接的な戦争描写が欠如している。しかし、われわれはそこに無意識のうちに戦争の爪あとを読み取る。なぜか。
 
小津には重い戦争体験があった。兵士としての小津は、帝国の先兵として中国大陸を歩いた。その経験は、作品の中に密かに投影されている。小津は、日本社会における「帝国の残影」に誰よりも自覚的な、創作者だったと著者は言う。
  
小津は生涯独身だった。にもかかわらず、彼は日本の家族を描き続けた。一方で、兵士として戦争を体験しながら、彼は戦争を描かなかった。
 
「みずから体験した戦場を描き出すことなく、しかし自身は形成した経験のない家族について語りつづけた小津という人物の秘めた謎は深い」
 
本書は小津映画を繊細に読み解き、小津の批評を巧みに抽出する。

そして、「兵士・小津」と「監督・小津」を同時代の歴史の中に挿入することで、昭和を逆照射する。読み応えのある一冊。


*帝国の残影が、産官学のトライアングル、マスメディア…特に論説員たちやキャスターたちに、存在し続けて、終に管直人内閣や、「フクシマ」を作ってしまったんだ、と言う事は、芥川の読者なら、とうにお分かりのはずだろう。

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