グローバル法務リスクに立ち向かう
多様性を支える法律
青山学院大学教授 榊原 英資氏
さかきばら・えいすけ 東大経卒、1965年大蔵省入省。米ミシガン大学で経済学博士号取得。 97年財務官。 99年に大蔵省を退官。慶大教授、早大教授を経て、2010年4月から現職。
文中黒字化は芥川。
東日本大震災による日本経済の停滞は、どのくらい続くのだろうか。私は中期的に続くのではないかと危惧している。今夏の電力不足が問題になっているが、電力不足が3~4年と続くことも予測されるからだ。
もともと震災がなかったとしても、日本経済は高成長を望める状態ではなかった。日本企業は新興国に出ることが絶対的に必要になる。中国、インドなどにいかに出ていくかが、大きな課題になってきているわけだ。
今や日本企業にとって運営のグローバル化かとても重要だ。日本企業は技術レベルは高いが、韓国や中国と比べてもグローバル化では一歩遅れている気がする。
最近よくインドに行くが、電化製品の7割近くが韓国のサムスンかLG。アフリカなどにも韓国、中国の企業はかなり出ているが、日本企業は必ずしも成功していない。
我々はあまり意識していないが、日本はいい意味でも悪い意味でも特殊な国だ。外国に征服されたことがなく、長い間、平和を維持できてきた。逆にいえば、グローバル化という点では不利な面を持つ。
そこでインドの話をしたい。インドの人口は現在の11億人強が2050年に16億人まで増えるといわれる。中国は13億人が14億人とそれほど増えないから2020年ごろには中国を逆転する。経済成長も最近は8%、9%まで加速しており、高成長を保ちそうだ。
そのインドは日本とちょうど逆に極端な国だ。宗教的にも民族的にも言語的にも極めて多様だ。インドのルピー紙幣は17の言語で書いてある。表は英語とヒンズー語、裏には15の州のそれぞれの言葉で書いてある。
インド人は自己主張が強く、本当によくしゃべる。多様な国だから自分がどこの出身で、どう考えているのかを常に言わないといけないからだ。ある時、私か呼んだハイヤーが30分遅れた。運転手に苦情を言ったら30分間、言い訳を続けていたほどだ。
インド人は自己主張が強い一方、他人に干渉しない。インド人が冷たいとかではなく、非常に多様だから、自分とは違う人に干渉しないということが徹底している。
日本企業がインドに進出して、インド人に働いてもらうのは非常に難しい。インド人が「ノーと言わないからと思って(日本人が)それでよかったと思っていると、全然大丈夫ではなかったりする。
多様性に富む国だから、最後のよりどころは法律になる。インドは極めて法律に神経質な面を持っている。契約する時にはとても気を付けなければならない。口頭で約束しても有効ではない。常に専門の弁護士を間に入れて、法的にチェックしておく必要がある。
日本では、よほどのことがないと契約書は端から端まで読むことはない。しかしインドでは端から端まで読まないとダメだ。インドをはじめとする新興国でビジネスをやるなら、グローバルな法的センスを持たなければいけない。企業にとって新興国との付き合いがこれからは本当に大切になるだろう。
多様性を支える法律
青山学院大学教授 榊原 英資氏
さかきばら・えいすけ 東大経卒、1965年大蔵省入省。米ミシガン大学で経済学博士号取得。 97年財務官。 99年に大蔵省を退官。慶大教授、早大教授を経て、2010年4月から現職。
文中黒字化は芥川。
東日本大震災による日本経済の停滞は、どのくらい続くのだろうか。私は中期的に続くのではないかと危惧している。今夏の電力不足が問題になっているが、電力不足が3~4年と続くことも予測されるからだ。
もともと震災がなかったとしても、日本経済は高成長を望める状態ではなかった。日本企業は新興国に出ることが絶対的に必要になる。中国、インドなどにいかに出ていくかが、大きな課題になってきているわけだ。
今や日本企業にとって運営のグローバル化かとても重要だ。日本企業は技術レベルは高いが、韓国や中国と比べてもグローバル化では一歩遅れている気がする。
最近よくインドに行くが、電化製品の7割近くが韓国のサムスンかLG。アフリカなどにも韓国、中国の企業はかなり出ているが、日本企業は必ずしも成功していない。
我々はあまり意識していないが、日本はいい意味でも悪い意味でも特殊な国だ。外国に征服されたことがなく、長い間、平和を維持できてきた。逆にいえば、グローバル化という点では不利な面を持つ。
そこでインドの話をしたい。インドの人口は現在の11億人強が2050年に16億人まで増えるといわれる。中国は13億人が14億人とそれほど増えないから2020年ごろには中国を逆転する。経済成長も最近は8%、9%まで加速しており、高成長を保ちそうだ。
そのインドは日本とちょうど逆に極端な国だ。宗教的にも民族的にも言語的にも極めて多様だ。インドのルピー紙幣は17の言語で書いてある。表は英語とヒンズー語、裏には15の州のそれぞれの言葉で書いてある。
インド人は自己主張が強く、本当によくしゃべる。多様な国だから自分がどこの出身で、どう考えているのかを常に言わないといけないからだ。ある時、私か呼んだハイヤーが30分遅れた。運転手に苦情を言ったら30分間、言い訳を続けていたほどだ。
インド人は自己主張が強い一方、他人に干渉しない。インド人が冷たいとかではなく、非常に多様だから、自分とは違う人に干渉しないということが徹底している。
日本企業がインドに進出して、インド人に働いてもらうのは非常に難しい。インド人が「ノーと言わないからと思って(日本人が)それでよかったと思っていると、全然大丈夫ではなかったりする。
多様性に富む国だから、最後のよりどころは法律になる。インドは極めて法律に神経質な面を持っている。契約する時にはとても気を付けなければならない。口頭で約束しても有効ではない。常に専門の弁護士を間に入れて、法的にチェックしておく必要がある。
日本では、よほどのことがないと契約書は端から端まで読むことはない。しかしインドでは端から端まで読まないとダメだ。インドをはじめとする新興国でビジネスをやるなら、グローバルな法的センスを持たなければいけない。企業にとって新興国との付き合いがこれからは本当に大切になるだろう。