話の種

新聞やテレビ、雑誌などで、興味深かった記事や内容についての備忘録、感想、考察

裁判について

2024-07-17 15:28:17 | 話の種

「裁判について」

最近裁判の話を多く取り上げたので、裁判について少し整理しておく。

裁判所が扱う訴訟のうち、主なものは次の3つ。

1.「民事訴訟」
対象:私的な権利や義務に関する紛争
当事者:原告と被告
目的:権利の確認、履行の請求、損害賠償など

2.「刑事訴訟」
対象:犯罪行為
当事者:国家(検察)と被告人
目的:犯罪の有無の判断、有罪の場合の刑罰の決定

3.「行政訴訟」
対象:行政機関の決定や行為
当事者:原告(市民や法人)と行政機関
目的:行政処分の適法性や適正さの判断


*国を相手とした行政訴訟の場合、国側の代理人は国家公務員である法務官僚(一般的には法務省の職員)や弁護士が担当する。(具体的には法務省の訟務局やその地方支部が担当し、国家を代表して防御や主張を行う)

*「水俣病訴訟」「薬害エイズ訴訟」「ハンセン病国家賠償訴訟」「諫早湾訴訟」などの薬害問題、公害問題などは、警察と同様、民事不介入の原則から検察は一切関与していない。検察が関与するのはあくまでも刑事事件(訴訟)のみである。

*民事不介入といっても、事件に刑事事件の対象となる犯罪行為に該当するものがあったかどうか、判断が難しいものも多くある。これを理由に摘発をせず、深刻な事態を招いた例もあるが、一方不当に介入すれば権力の濫用ということにもなりかねず、いろいろと議論が分かれるところでもある。

*法律上直接に民事不介入の原則を定めた規定はないが、警察法第2条第2項が以下のとおり定めていることに民事不介入の法的根拠を求める見解もある。
「警察の活動は、厳格に前項の責務の範囲に限られるべきであって、その責務の遂行に当っては、不偏不党且つ公平中正を旨とし、いやしくも日本国憲法の保障する個人の権利及び自由の干渉にわたる等その権限を濫用することがあってはならない。」(警察法第2条第2項)

*民事事件には「民事訴訟」以外に「民事調停」も含まれるが、この場合当事者の呼び名は原告・被告ではなく、申立人・相手方となる。
家事事件の「家事調停」も同様。但し「家事審判」の場合は相手側はいないので、当事者は申立人のみとなる。(後述、性別変更の審判などはこの例)

 

ところで最近の裁判で、原告側或いは申立人側の意向に沿った決定が相次いでなされている。

新聞記事の表題及び概要のみ記しておくと、

・7月11日付朝日新聞(朝刊)
「トランス女性訴え」「性別変更 手術なし認める」
「外観要件 手術必要なら違憲疑い」
「「自分の性で生きる」また一歩」
「申立人「生きにくさから解放」」

「出生時の性別は男性で、女性として生活するトランスジェンダー(トランス女性)が、戸籍上の性別変更を求めた家事審判の差し戻し審で、広島高裁(倉地真寿美裁判長)が10日、性別変更を認める決定を出した。手術なしで男性から女性への性別変更が認められるのは極めて異例で、トランス女性に手術なしで性別を変更する道を開く司法判断となった。」

「この家事審判では最高裁大法廷が昨年10月、特例法の別の要件である「生殖腺がないか、その機能を永続的に欠く」(生殖不能要件)を「違憲で無効」と判断。だが、高裁段階で外観要件は検討されていないとして、この点の審理を差し戻していた。」

*性別変更の申し立てには、民事裁判のように対立する当事者はいないため、今回の高裁決定が確定した。高裁の判断は、他の裁判所の判断を拘束しない。

・7月12日付朝日新聞(朝刊)
「旧統一教会 審理差し戻し」
「「賠償求めぬ」念書無効」「献金勧誘 違法性に基準」「最高裁初判断」
「違法勧誘の判断基準「画期的」」
「念書無効「やっと認められた」」

「世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に、母親(故人)が高額献金をした60代女性が、教団側に賠償を求めた訴訟の上告審判決で、最高裁第一小法廷(堺徹裁判長)は11日、信者だった母親が「教団に賠償を一切求めない」と書いた念書を「公序良俗に反し、無効」と判断した。」

*(田近肇・近畿大教授(憲法、宗教法人法)の話)

「公序良俗に違反、類似訴訟へ影響」
「献金勧誘がどんな場合に違法と判断されるか、教団に対する訴えを起こさないことを約束する「念書」などはどんな場合に公序良俗に反するのか、判決はそれぞれについて判断の枠組みを示した。類似の裁判で広く使われる判例として、影響力が大きいと考える。」
「献金勧誘の違法性については、2022年制定の不当寄付勧誘防止法上の配慮義務に違反したら違法だと評価され得ることを、最高裁が示したという意義もある。」

・7月12日付朝日新聞(夕刊)
「定年延長巡る判決、国側控訴せず確定 検事長人事の関連文書」

「東京高検検事長だった黒川弘務氏の定年を延長した2020年の閣議決定をめぐり、神戸学院大の上脇博之教授が関連文書を不開示とした国の決定を取り消すよう求めた訴訟で、決定の一部を取り消した大阪地裁判決が確定した。控訴期限の11日までに上脇氏、国の双方とも控訴しなかった。」

*検察官の定年は検察庁法で「63歳」(検事総長は65歳)と定められていたが、当時の安倍晋三政権が、延長規定を検察官として初めて定年目前の黒川氏に適用した。法改正を経ず「政権が重用する黒川氏を検事総長にするためだ」と批判が相次いだ。

(余談)
安部元首相がらみの事件をチェックしているなかで、「アベガー」という言葉に出会った。
調べてみたら、「安部がー」という意味で、何でも安部氏のせいにして批判する、ということを批判するネット用語らしい。

 

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