すんけい ぶろぐ

雑感や書評など

イ・シミョン「ロスト・メモリーズ」

2005-09-04 08:44:43 | 映画評
日本に統治されているという設定なので、登場する韓国人は日本語を話せると言う設定なんだが、こいつらの発音が聞き取りづらいこと。なんで、吹き替えにしなかった?



韓国映画は、勢いがあるからなぁ。
しょーもないものも、話題になっちゃうよなぁ。

↑というのが、「ロスト・メモリーズ」を見た正直な感想。


まぁさぁ~~~~~~、「ラストサムライ」だって、日本人にとって都合の良い日本の物語を外国人が作ってくれたんだから、日本人にとって都合の悪い日本の物語を外国人が作ってくれたことを、あんまゴチャゴチャ言うべきじゃないよね…………。


とは思えども、どうにもこうにも、しょーもない映画だったなぁ。
韓国で公開している分には、これでいいんでしょうけど。
日本で公開するレベルの映画とは、とても思えんなぁ…………。


「ロスト・メモリーズ」が、どういう物語かと言いますと、安重根の伊藤博文暗殺が失敗した未来の世界。
日本はアメリカと対峙することなく、第二次世界大戦では日米同盟を結び、戦後も朝鮮・満州を占領統治したまま、経済繁栄を享受しているという設定。
その未来世界には、韓国の独立を目指したテロリスト集団がいて、それを取り締まる警官二人が主人公。

で、テロリスト集団というのは、この現実が安重根の暗殺失敗によって引き起こされた「歪められて現実」であるということを知っている。その「歪められて現実」を正すために、テロ行為を繰り返しているのですが…………。

で、ネタバレ。
「歪められて現実」が引き起こされた原因というのが、実はある遺跡が引き起こしたタイムスリップだった!
そのタイムスリップを、もう一度繰り返すことで、今度は安重根の暗殺を成功させようとテロリスト集団は、暗躍していたのだった!!


うーん。
僕個人は、日本がアジア諸国に行った行為を正当化するつもりはありません。
朝鮮半島における「創氏改名政策」を、ただ「法律的に強制ではなかった」という事実だけで、さも「日本は彼らを圧迫した事実などない」と強弁するような論調には「?」と思ってしまうタイプです。


しかし、こうも「韓国万歳!」という映画を見せられると………………。やっぱり自分は日本人なんだなぁ~と思ってしまいます。

だいだいにして、安重根の伊藤博文暗殺が成功してようと、なかろうと、悲しいかな、そんな個人の生死の問題は無視して歴史は進んでいったと思うぞ。

まぁ日本で蒙古襲来を撃退したことを時に過剰に賛美するように、韓国にとって安重根の伊藤博文暗殺は、そりゃ民族の興廃を決する象徴的大事件なのだろうけど。


でも、さぁ、伊藤博文暗殺が成功した未来世界では、「韓国は北朝鮮と統一を果たし、軍事的にも経済的にもアジアの手本となっている!」なんてこと言われてもなぁ。
別に朝鮮民族を蔑視するつもりはないが、北朝鮮なんかと統一したら、韓国の経済はめちゃくちゃになってしまうことは、素人にも想像できるぞ………。


まぁ、そんな突っ込みどころ満載の設定になっています。

そういうお遊びが好きな方には、お勧めします。


村上龍の「五分後の世界」も、アメリカ人が読んだら、こんな感想を持つんだろうなぁ…………。


ロスト・メモリーズ

ワーナー・ホーム・ビデオ

このアイテムの詳細を見る

チャウ・シンチー「カンフーハッスル」

2005-09-03 09:13:21 | 映画評
香港映画って、デブとかブスとかを容赦なく笑い所にするね


「少林サッカー」。
その独特なやり過ぎっぷりが、好評を博したお馬鹿映画です。

で、チャウ・シンチー監督が新たに挑んだ「カンフーハッスル」。

「柳の下にはドジョウが三匹」と言いますが、さて、同じコンセプトで、どうかな? と見てみました。

結論としては、非常に見応えのある作品となっていました。


「少林サッカー」のおかげで、使えるお金が増えたらしく、画面のデキも以前よりも綺麗で派手でバカらしい。
ハリウッドのように、間違った大作化はされていません。


カンフーの殺陣は、非常に人間離れしていて、見ていて気持ちが良かったです(従来のカンフー映画ファンには、ニヤリとさせる場面が散りばめられているようですが、そんなことを知らなくて充分に楽しい!)。

「マトリックス」が登場してから、数多の「ニセマトリックス」が登場しましたが、その中でも、「カンフーハッスル」の殺陣は出色。
わらわらと襲ってくる黒服の「斧頭会」の連中を(黒服を着ているのは、やっぱり、「マトリックス」のスミスから?)バッタバッタとなぎ倒すシーンは、単純に胸がすく思いです。


ストーリーとしては、「前回の戦いで勝った人間を、新しく登場した敵や、わざと力を隠していた味方が、次々と倒していき、また倒されていく」というもの。
最終的には、弱虫で口ばっかりだった主人公が真の力に開眼して…………。
ようするに、ジャンプのトーナメントのノリです。

単純明快な物語展開ですが、キャラクターたちの独特の性格が功を奏して、退屈さはありません。

敵味方問わず、みすぼらしい格好をした人間たちが、実はカンフーの達人だった! という設定は、まぁ、バカらしいのですが、そのみすぼらしさと強さのギャップが、映画全体をコミカルにも爽快にもしてくれています。


無理に続編をつくらず、またコンセプトをちょっと変えて、こんなおバカ映画をつくってくれると、嬉しいな~。


カンフーハッスル コレクターズ・エディション

ソニー・ピクチャーズエンタテインメント

このアイテムの詳細を見る

ピーター・ウィアー「いまを生きる」

2005-09-02 11:38:32 | 映画評
多様な読みが許されるはずの小説を、試験の選択肢によって読みを狭めてしまう滑稽さは常々揶揄されることだが、実際の社会では「読みを狭める」という行為によって常識的思考を身につけなくてはいけない


なんとなくホンワカしたいと見た「ニュー・シネマ・パラダイス」ですが、面白かったけれども、ちょっと期待していたものとは違った、というのは以前書きました。

で、今度見たのは、「いまを生きる」。


まぁ予想通りに面白かったです。
臭いけどね。

ストーリーは名門校に赴任した教師が、管理されることに慣れていた生徒に、生きることの喜びを詩を通して教えていく…………といった感じ。

劇中での、その教師の言葉。
だが君の中にもすばらしい何かがある

あぁかっこいい言葉だ。それに対して、彼の授業を批判した教師の言葉。

〝芸術家たれ〟と教えるのは危険だ 自分たちがそうでないと知ったら 君を憎むぞ

あぁ全くその通りだ。


自由を有効に活かしえる人間って、そうはいないもんだからね………。


いまを生きる

ブエナ・ビスタ・ホーム・エンターテイメント

このアイテムの詳細を見る

古谷実「シガテラ (6)」

2005-09-01 08:36:23 | 書評
そうです! あなたの体からも、加齢臭が!!



前回までの感想。
古谷実「シガテラ (4)」グラビアアイドルで「親戚に、たくさん買ってもらいました」という話を聞いたことがあるが、買った親戚は、それを、なんに使うんだろう?(特に従兄弟)
古谷実「シガテラ (5)」「女とやったら、人生観が変わる!」と豪語していた彼は、その時、既に経験済みだった。…………人生観が変わる前の彼は、いったいどんな人間だったのだろう……………



で、大学に受かり、しがないサラリーマンとして、立派に生きていこうと志した荻野君の前に登場した谷脇。


南雲さんは荻野君にとって幸せの発生源であります。
その対極にいるのが、不幸の配達人である谷脇です。

かつては、荻野をいじめ、パシリとして使い、気ままに暴力を振るっていた谷脇が、今度はヤクザの抗争に彼を巻きこみます。

そこで、どうにか一命をとりとめる荻野。また無関係の事件に巻き込まれた荻野は、谷脇に、「お前と出会ってから僕はこんな悪い事ばかりだ!!」と、ついに正面から非難します。それに対して、谷脇は、こう答えます。
おいおい それはお互い様だろ?
オレ的にはお前と会ってから信じられない事が起きまくってんだぜ?
お前が高井を連れてきて
高井が変態を連れてきて
耳とられて こんな仕事について・・・・・・・・・・・・
今に至るって感じで
古谷実「シガテラ (6)」32頁 講談社
で、その言葉を真に受けた荻野は、自分のことを「不幸の源だ」と自責し始め、南雲さんと付き合う資格などないと悩み始めます。

もともと谷脇の言っていることなんて、自分が彼をいじめていたという大前提を無視した無茶苦茶な発言なのですから、第三者からすれば、そんな気にすることなんかないいですがねぇ~。

でも思春期って、他愛無い一言を、いじいじと考えてしまうもんですからな。


で、結局は「南雲さんを幸せにしなくては!」という決意でもって、立ち直ります。
そして、目標達成のため猛勉強、と。


それからのストーリーは、結構「?」です。

まぁ、古谷実の作品って、場面場面のインパクトはすごいけど、全体の構成は甘いからなぁ。
ギャグ漫画だと、それでいいんだろうけど……………。


で、猛勉強の甲斐なく、荻野君は不合格。
それから街で偶然、高校の同級生に出会って、その子と、ちょっと奇妙な浮気をしそうになります。

そのエピソードは、いかにも付け足しといった感じ。
まぁ面白いことは、面白いんだけど。全体のストーリーからすると、蛇足かなぁ。


で、その浮気の回が終了後、古谷実らしく、唐突に最終話に向かっていきます。
その夜 僕は夢を見た
見覚えのない
男か女かもわからない人に
問いただされた

ふふふ・・・・
本当にこのまま
うまく行くと思ってる?
君は間違いなく
不幸のかたまりなんだよ?


わかってるよ

あの子を不幸にするかもよ?

わかってるよ
その時は別れる

そんな事
できるの?


できるよ・・・・・・・・
彼女のタメなら
何でもできる

死ねる?

死ねる
親には悪いけど

夢だからって適当な事
言ってるんじゃないの?


適当じゃないんだよ・・・・・・・・
だからまいってんだ・・・・

・・・・高井君は元気らしいよ
以前のように明るくなった


そう・・・・良かった
ありがとう

勉強しなくちゃ

勉強をして
社会に出て
大学に入って
大人になる

そして・・・・・・・・
古谷実「シガテラ (6)」198~202頁 講談社

そして・・・・・・・・、最終話は、社会人となった荻野君の立派な姿が書かれております。

で、いつものように、ネタバレですが、あれだけ好きだった南雲さんとは別れています。

その理由は書かれておりません。

が、荻野君が彼女と対等を目指し、努力を考え始めた時点で、この結末は予想できるものだったのかもしれません。

彼自身が力をつけるということ(努力するということ)は、南雲さんからの独立を意味し、彼らの関係の崩壊…………とまでは言わなくても、関係性の変容は予測できたことです。

そう考えてみますと、あの蛇足とも言える浮気のエピソードは、荻野君の変貌を暗示していたのかもなぁ。


こうして、幸福の発生源だった南雲さんを必要としなくなり、また一方で、不幸の配達人といったものを恐れる必要もなくなるほど力をつけた(努力をした)という自信を持った荻野君。

彼自身は、自分の現在を、こう評価しています。
やるじゃないか荻野優介
思いのほか 立派になったじゃないか
あの頃 想像していた何倍も
良い社会人になれていると思う

もう自分を過剰に疑ったり・・・・
しつこく問いただしたり
「不幸の源だ」なんて
ののしったりしなくなった

不安定の固まりだった
僕はもういない・・・・

僕は
つまらない奴になった
古谷実「シガテラ (6)」218~219頁 講談社


青春漫画の大奇作としては「さくらの唄」があるけど、あっちはハッピーエンドで終わってるんだよなぁ。

あれは、あれで嫌いなラストじゃないけど、まぁ、はっきり言ってご都合主義だよね。
アメリカに渡り、新進気鋭のアーティストとして、大成功するなんて………。

それに比べると、むごいくらい「シガテラ」のラストはリアルだね。

「僕は つまらない奴になった」

まぁ、その通りだよね。
年をとるってことは、そういうことだよね……………。



さて、「ヒミズ」「シガテラ」と、脱ギャグ漫画志向を強めている古谷実だけど、次は、どうすんのかな?


シガテラ 6 (6)

講談社

このアイテムの詳細を見る



さくらの唄 (上)

講談社

このアイテムの詳細を見る
さくらの唄 (下)

講談社

このアイテムの詳細を見る