すんけい ぶろぐ

雑感や書評など

張芸謀「至福のとき」

2005-01-24 01:25:38 | 映画評
大団円では終わらせない


結論から言いますと、この映画「至福のとき」、かなりざっくりとした終わり方です。原作(「至福のとき―莫言中短編集」)があるようですから、それを忠実に再現したのかもしれませんが、映画だけでは、このざっくりさが納得できないものがありました。


ストーリーは、盲目の少女と無職の中年男性との交流という、人情物です。
最初は自分のために嘘をついていた男ですが、そのうちに少女を喜ばせたいばかりに彼女を騙していく。当初は生硬な態度だった少女も、次第に男性に心を開き、彼の嘘を知りながらも、わざと騙された振りをする。

こういうパターン自体は、ニセ黄門くらいに、ありがちな展開です。
最後には、少女は自立すべく、中年の男性に感謝しつつ、その庇護から抜け出していきます。と書いてしまうと、こちらもありがちなオチですが、この自立があまりに痛々しくて、手放しでハッピーエンドとは言えないものがあります。

ハッピーエンドにしてしまうと、どうしても現実離れしてしまい、「そんなに、うまくいくかいな」と思ってしまう一方で、こうも突き放されてしまうと、複雑な読後感ならぬ鑑賞後感が残ってしまいます。


うむ、張芸謀という感じです。恋愛以外で切ない気分になりたいときにお勧めです。


至福のとき

20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン

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