すんけい ぶろぐ

雑感や書評など

磯部潮「人格障害かもしれない」

2005-02-13 19:55:14 | 書評
自由との戦い


「自由」が話題になると、極論までいくと二つに集約されてしまうと思います。
 ・「自由」は無条件に素晴らしい
 ・「自由」が人間を駄目にする
若者の支持は前者で、年寄りは後者でしょうか? 被支配者は前者で、支配者は後者でもいいでしょうけど。

特に権力もないので、「最近の若者は自由すぎるんだよ!」という意見を聞くと、「あんたも、そう言われたんだよ」と揶揄したくなりますが、その一方で、多くの人間(自分も含めて)自由を持て余している、というイメージもあったりします。

大学にいたときに、
「打ちこめるものがない」
なんてことで悩んでいたりする人間に会ったりすると、「いや、別に、みんながみんな、なにかに熱中することもないのでは?」と思ってしまいますが、妙に「自由」というものを強要する雰囲気が漂っていたのも事実です。今の大学も、そんなに変わらないんじゃないかな?


この絶対的、普遍的な価値体系のない混沌とした社会のなかで、より一層のよるべなさ、居心地の悪さを感じているのが人格障害の人たちだと私は考えています。そして、こういう時代だからこそ、人格障害の人たちが増加していると考えられるのです。(磯辺潮「人格障害かもしれない」152頁 光文社新書)
この文章の後に、引きこもりの患者が、よく「何をどうしたらいいかまったくわからない」と口にする、ということが書かれています。

混沌なんだねぇ~、現代は。
そんな社会状況は日本だけではないと思うけど、引きこもりという現象は日本独特のものらしいです。日本人は、自由を自由として享受する性質に欠けているのでしょうか?


で、後書きで作者は、現代的な人格障害という問題は冷戦以後の価値観の混沌が影響している、としております。ですから、このままアメリカの強硬的な対外政策が続けば、親米と反米の対立によって終止符が打たれるのでは? とのこと。

さて、どうなんでしょう? 戦時下は、犯罪率が低下するなんてことも言われてますけど。


それはともかく。
人格障害というものを知るには、最適の本となっております。


人格障害かもしれない

光文社

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