鈴木すみよしブログ

身近な県政にするために。

駐台湾日本の窓口と工業技術研究院訪問

2018年06月06日 | 議会活動

平成30年6月6日(水)

 

 「日本台湾交流協会台北事務所」は、日本の外務省および経済産業省により認可された日本の対台湾窓口機関です。今回は日台交流に関する現状や課題に関する意見交換を行い、今後の静岡県と台湾の交流促進につなげることを目的として訪問させていただきました。

(事務所が入る建物の前で)

 

 この事務所は、日台間に国交が樹立されていない中、実質的な駐台湾大使館としての機能を備えています。事務所代表は、大使と同等の権限を有し、台湾関係機関との連絡、政治経済等の動向調査、在留日本人および日本人渡航者への各種便宜の提供、日台間の経済・技術・文化交流の円滑な推進を担っています。平成29年1月1日に、それまで「公益財団法人交流会」から「公益財団法人日本台湾交流協会」へと改名し、両国名が入ったことにより、その結びつきがさらに強調されたといえます。

 

 視察では、同事務所の副代表を務める横田光弘氏から、視察目的に沿って説明をいただきました。

(副代表の横田氏から説明を受ける)


(説明を聞く視察団)



(全員で記念撮影)


 説明内容は、日台間の人的交流の現状と今後の見通しについてと観光振興や教育旅行をテーマとして現状と課題について意見交換をさせていただきました。また、富士山静岡空港への台湾便の減便の背景や、それの代替え対策等についてのほか、空路だけでなくクルーズ船の活用なども話題となりました。

 観光客は団体旅行から個人旅行へ、「モノからコトへ」と移行し、ストーリー性のある観光メニューの設定やインスタグラムや有名ブロガーなどの活用による情報発信について提案がありました。さらに、体験型観光メニューに注目し、本県内だけでなく隣接県などを巻き込んだ県境にこだわらない取り組みの重要性も話題となりました。

 航空便関係では、日本の航空会社によるLCCへの期待と就航の可能性について言及がありました。

 そのほか、産業交流では、この後に視察する「工業技術研究院」を例に、本県の持つものづくりや大手自動車メーカーとの連携に期待がかかるとの事例など、今後の交流への期待が大きいことを感じました。

 ただ、本県だけでなく、全国の自治体が台湾との交流の推進について台北事務所に直接相談に来ることもあり、本県も積極的にこの機関を活用していく必要があります。


 

 「工業技術研究院(ITRI)」は、台湾経済部(日本の経済産業省)が設立した財団法人で、予算は国が50%、企業が50%出資して運営されています。この機関の使命は「先端技術研究開発により、産業成長または経済価値を創造し、社会福祉そして幸せな暮らしを支える」としています。国家のシンクタンクであり、グリーンキャンパスの恵まれた環境、子どもたちへの科学体験教室などの活動も実施しています。

 台湾最大の産業技術研究開発機構で、職員数は6,000名を超え、そのうち博士号を取得しているのは1,395名。特許件数は26,428件で、年間相談件数は16,247社、技術移転は年間579件に上ります。また、テクノロジーのオスカー賞を毎年受賞し、この施設の研究者が代表等となるスピンオフ企業は136社で24,000人がこれらのベンチャー企業で活躍しています。

 研究に連携する地域は、アメリカのシリコンバレーのほか、ベルリン、モスクワと東京に事務所が設置され、国内では東京大田区と埼玉県のそれぞれの工業技術関連機関と連携しているとのことでした。

(ITRIの研究棟を背景に記念撮影)


(副院長の張氏)


 視察では、最初に研究院副院長の張培仁(Pei-Zen Chang)氏の歓迎のあいさつを受け、研究成果を展示したフロアーで代表的なものについて説明を聞きました。フロアーの中心にはこの研究機関で開発された先端技術の詰まった「エコツリー」があり、「太陽」(薄膜の太陽光発電)、「空気」(光触媒による浄化)、「水」(汚水処理機能)をテーマに、モニュメントの役割を果たしていました。

 先端技術の実用化の例では、Wi-Fiから光通信へ。リチウムイオン電池からSTOBA電池へ。液晶のリサイクル処理から生まれた重金属などの吸着材料。腕の動きでコンピューターなどに指令が出せるマン-マシンインターフェイス。アルミイオンバッテリー。大型のヘッドアップディスプレイ。脚気患者を支援する医療器具。身体障害者の歩行等を支援する装置など、先に記した研究所が目指す「先端技術による幸せな暮らしを支える」事例に驚かされました。少子高齢化が進み医療や介護の現場への応用例が実現し並んでいました。

(エコツリーを背景に、また研究成果の展示物を背景に記念撮影)


国際センター副センター長の楊馬田氏)


(最初はスライドで概要説明)


バイオメディカル研究所副所長の黄崇雄氏)


バイオメディカル研究所企画マーケッティング部長の陳廷碩氏)




 

 その後会議室に移り、「ITRIの役割および産学連携について」事例を交えながら国際センター副センター長の楊馬田氏から、また、「ITRIのバイオメディカル&メディカルデバイス領域の連携モデル紹介」、「連携スキームの紹介」、「静岡県との交流と取り組み」について、バイオメディカル研究所副所長の黄崇雄氏とバイオメディカル研究所企画マーケッティング部長の陳廷碩氏らから説明していただきました。

 静岡県との交流では、本県の産業集積クラスターである、機能性食品・バイオテクノロジー創薬・医療支援機器等の交流が図られています。これらは、静岡県立大学における茶の効能研究(フードサイエンスバレー)、静岡がんセンター主催の「静岡がん会議」での講演(ファルマバレー)、浜松ホトニクスとの連携(フォトンバレー)などあります。

 

 これらの講義の後は質疑応答に移り、視察団から、①お茶の葉の研究について。②施設の運営予算やベンチャー企業の立ち上げと支援について。③本県議会に期待すること。④ベンチャー企業の立ち上げに関し金融機関の関与(事業として成立するかの見極め等)などの質問がありました。

 

 研究機関としてはハイレベルなものであり、研究内容の説明では十分理解できないものもありますが、世界の経済状況は開発途上国が早い速度で追い上げており、先進国として将来もリードし生き残るためには、先進技術の研究開発とそれによる企業化の取り組みが欠かせないこと。それを実現するためのベンチャー企業の育成をセットで進めている経済戦略は、我々日本、とりわけ静岡県にも重要なテーマです。

 

 本県が取り組む静岡県産業集積クラスターは、その実現に向けた大きな基盤であり、台湾という技術立国とパートナーシップを築き、世界レベルでの連携と推進が重要であることは理解できました。

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