東京・台東借地借家人組合1

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【判例】*改良住宅の入居者が死亡した場合において、市長の承認を受けて死亡時に同居していた者等に限り使用権の承継を認める京都市市営住宅条例は、公営住宅法等に違反し、違法、無効とはいえない

2018年12月12日 | 民法・借地借家法・裁判・判例

最高裁判例

平成29年(受)第491号 居住確認等請求本訴、家屋明渡等請求反訴事件


改良住宅の入居者が死亡した場合において、市長の承認を受けて死亡時に同居していた者等に限り使用権の承継を認める京都市市営住宅条例(平成9年京都市条例第1号)24条1項は、住宅地区改良法29条1項、公営住宅法48条に違反し違法、無効であるとはいえない
(最高裁平成29年12月21日 第一小法廷判決)



      主   文
 本件上告を棄却する。
 上告費用は上告人の負担とする。


      理   由
 上告代理人河田創、同中道滋の上告受理申立て理由第3について

1 本件本訴は、上告人が、被上告人(京都市)の所有する住宅地区改良法(以下「法」という。)2条6項の改良住宅である第1審判決別紙物件目録記載1の住宅(以下「本件住宅」という。)を使用する権利(以下「使用権」という。)を上告人の母であるAから承継したなどと主張して、被上告人に対し、本件住宅の使用権及び賃料額の確認等を求めるものであり、本件反訴は、被上告人が、本件住宅を占有する上告人に対し、所有権に基づく本件住宅の明渡し及び賃料相当損害金の支払等を求めるものである。

2 改良住宅に関する関係法令の定めは、次のとおりである。
(1) ア  法は、不良住宅が密集する地区の環境の整備改善を図り、健康で文化的な生活を営むに足りる住宅の集団的建設を促進し、もって公共の福祉に寄与することを目的とするものである(1条)。

イ  住宅地区改良事業の施行者は、市町村又は都道府県であり(法3条)、同事業において、改良地区内の不良住宅を除却しなければならず(法10条)、そのため必要がある場合においては、当該住宅又はこれに関する所有権以外の権利を収用することができ、その収用に関しては、土地収用法の規定を適用するものとされている(法11条1項、16条1項)。

ウ  施行者は、国土交通大臣による改良地区の指定の日において、当該地区内に居住する者で、住宅地区改良事業の施行に伴いその居住する住宅を失うことにより、住宅に困窮すると認められるものの世帯の数に相当する戸数の改良住宅を原則として当該地区内に建設しなければならないとされている(法17条1項、3項)。そして、上記指定の日から引き続き当該地区内に居住していた者等で、住宅地区改良事業の施行に伴い住宅を失ったものその他の法18条各号に掲げる者については、改良住宅への入居を希望し、かつ、住宅に困窮すると認められるものを改良住宅に入居させなければならないとされている(同条)。

エ  国の補助を受けて建設された改良住宅の管理については、改良住宅を公営住宅法に規定する公営住宅とみなして、公営住宅の管理に関する同法27条1項から4項までが準用されている。他方、公営住宅の入居者が死亡した場合において、その死亡時に当該入居者と同居していた者につき、事業主体の承認を受けて引き続き当該公営住宅に居住することができる旨を定めた同条6項(平成8年法律第55号により新設されたもの)は準用されていない(法29条1項)。

オ  国の補助を受けて建設された改良住宅の入居者は、当該改良住宅に引き続き3年以上入居している場合において政令で定める基準を超える収入のあるときは、当該改良住宅を明け渡すように努めなければならないとされている(法29条3項、平成8年法律第55号による改正前の公営住宅法(以下「旧公営住宅法」という。)21条の2)。


(2)  施行者は、国の補助を受けて建設された改良住宅の管理について必要な事項を条例で定めるものとされており(法29条1項、公営住宅法48条)、被上告人は、改良住宅及び公営住宅を含む市営住宅の管理等について京都市市営住宅条例(平成9年京都市条例第1号。以下「本件条例」という。)を制定している。本件条例24条1項は、改良住宅の入居者が死亡した場合において、その死亡時に当該入居者と同居していた者で、入居の承認に際して同居を認められていた者又は同居の承認を受けて同居している者(以下、併せて「死亡時同居者」という。)は、市長の承認を受けて、引き続き、当該改良住宅に居住することができる旨を定めている。

 

3  原審の適法に確定した事実関係等のの概要は、次のとおりである。
(1) 被上告人は、平成20年1月、Aに対し、法18条所定の改良住宅に入居させるべき者に当たるとして、国の補助を受けて建設された本件住宅を賃貸して引き渡した。

(2)  上告人は、平成22年5月頃からAを介護するため本件住宅に同居したが、京都市長に対し、本件条例に基づく同居の承認を申請しなかった。

(3)  Aは、平成25年9月に死亡した。

(4)  上告人を含むAの相続人の間で、平成27年7月、上告人が本件住宅の使用権を取得する旨の遺産分割協議が成立した。

4  原審は、要旨次のとおり判断して、上告人による本件住宅の使用権の承継を否定した。
公営住宅の入居者が死亡した場合には、その相続人が公営住宅を使用する権利を当然に承継するものではないと解されるところ(最高裁平成2年(オ)第27号同年10月18日第一小法廷判決・民集44巻7号1021頁)、法の規定及びその趣旨に照らすと、国の補助を受けて建設された改良住宅の入居者が死亡した場合についても、公営住宅の場合と同様に、当該入居者の相続人が改良住宅の使用権を当然に承継すると解する余地はない。そうすると、本件条例24条1項は、法の規定の趣旨に違反するとはいえない。

5  所論は、原審の上記判断は、国の補助を受けて建設された改良住宅の入居者が死亡した場合について、住宅に困窮する低額所得者に賃貸される公営住宅の場合と同様に解したものであって、法の規定の解釈を誤った違法があり、相続人による当該使用権の承継を制限した本件条例24条1項は、法29条1項に違反し違法、無効であるというものである。

6 (1)  前記2(1)に掲げた法の規定及びその趣旨に鑑みれば、改良住宅は、住宅地区改良事業の施行に伴い住宅を失うことにより住宅に困窮した改良地区内の居住者を対象として、建設されるものということができる。また、法は、公営住宅の入居者が死亡した場合における使用権の承継について定めた公営住宅法27条6項を準用していない。そうすると、改良住宅の法18条に基づく入居者が死亡した場合における使用権の承継については、直ちに、住宅に困窮する低額所得者一般に対して賃貸される公営住宅の場合と同様に解することはできないというべきである。

(2)  ところで、法18条は、改良住宅に入居させるべき者について、改良住宅への入居を希望し、かつ、住宅に困窮すると認められるものに限定しており、住宅地区改良事業に伴い住宅を失った者の全てについて、無条件に改良住宅への入居を認めるものではない。そして、国の補助を受けて建設された改良住宅の入居者は、当該改良住宅に引き続き3年以上入居している場合において政令で定める基準を超える収入のあるときは、当該改良住宅を明け渡すように努めなければならないともされている(法29条3項、旧公営住宅法21条の2第1項)。また、改良地区内の居住者が従前の住宅につき有していた所有権その他の権利に対しては、施行者が金銭をもって補償することが予定されている(法11条1項、16条1項参照)。

そうすると、施行者が住宅地区改良事業の施行に伴い住宅を失った者等を改良住宅に入居させることは、上記権利に対する補償ではなく、上記の者等の居住の安定を図るために義務付けられるものであるということができる。

以上によれば、国の補助を受けて建設された改良住宅の入居者が死亡した場合における使用権の承継については、民法の相続の規定が当然に適用されるものと解することはできない。そして、上記の場合における使用権の承継について、施行者が、法の規定及びその趣旨に違反しない限りにおいて、法29条1項、公営住宅法48条に基づき、改良住宅の管理について必要な事項として、条例で定めることができるものと解される。

(3)  本件条例24条1項は、改良住宅の入居者が死亡した場合において、死亡時同居者に限り、市長の承認を受けて、引き続き当該改良住宅に居住することができると定めている。上記規定の趣旨は、前記のとおり、改良住宅が、住宅地区改良事業の施行に伴い住宅を失った者等の居住の安定を図る趣旨のものであることを踏まえて、改良住宅の入居者死亡時における使用権の承継を死亡時同居者に限定したものと解することができる。そうすると、本件条例24条1項は、法の規定及びその趣旨に照らして不合理であるとは認められないから、法29条1項、公営住宅法48条に違反し違法、無効であるということはできない。

以上によれば、上告人による本件住宅の使用権の承継を否定した原審の判断は、是認することができる。論旨は採用することができない。

なお、その余の請求に関する上告については、上告受理申立て理由が上告受理の決定において排除されたので、棄却することとする。


よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。


   (裁判長裁判官 大谷直人 裁判官 池上政幸 裁判官 小池 裕 裁判官 木澤克之 裁判官 山口 厚)

 

 

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