何かをすれば何かが変わる

すぐに結論なんて出なくていい、でも考え続ける。流され続けていくのではなくて。
そして行動を起こし、何かを生み出す。

上司は思いつきでものを言う

2010-05-26 22:03:50 | Book Reviews
「上司は思いつきでものを言う」 橋本治・著、集英社新書0240C、2004年4月21日

p.16-7 「思いつきはしたものの、形にならずに捨てられたアイデア」は、いくらでもあるのです。
 アイデアも思いつきも同じもので、どちらも本来は、形になる前の、形にするための足がかりの一つなのです。

p.18-9 大人になったあなたが「よく考えてください」という決断を迫られる時は、あまりいい時じゃありません。悪いセールスマンは、「よくお考え下さい」と言います。悪くなくても、自分の利益を考える人は、「よく考えて下さい」」と言って、相手を説得します。どうしてかというと、「よく考えて下さい」と言って相手に決断を迫る側は、自分の都合のいいように、相手の思考の方向をあらかじめ設定してしまっているからです。「我々の誘導通りにお考えになれば、あなたは損をしないのです」というガイドラインが設定されているからこそ、「よくお考えになって下さい」という勧誘が成り立つのです。
 問題を出す側が、あらかじめその答えを知っている――だから、「よく考えて」は勧誘の言葉になるのです。

p.25-6 その上司は別に、「俺の気に入るアイデアを出せ」と言ったわけじゃありません。ただ、「なんかアイデアを出せ」と言ったのです。ところが、真面目に一生懸命「よく考える」をするあなたは、いつの間にか、「この正解は上司が握っている」と思い始めてしまうのです。

p.39 「今の日本には、古墳を作ろうと考える人間はいない。もうずっと前からいない」ということは、それを言われる上司達にとっては、「その間、あなた達はなにをしてたんだ?」という、現状認識を怠った無能の責任を問う言葉にもなりうるからです。
 あなたの言うことは、「今まではともかく、これからは――」なんです。とことが、その話を聞かされる上司達は、「今まで」を生きてきて、「これから」がまだよく理解出来ません。それで、上司達の聞く耳は、「これから」の方にではなく、「今まで」の方に向いてしまうのです。
 「今まであんた達が無能だったから、会社はここまで傾いた。だからオレが、あんた達にどうすればいいか教えてやる」――あなたの提案は、上司達の耳にはそう聞こえるのです。

p.43 あなたの上司にとって、あなたの提案に耳を傾けることは、そのまま「今までの自分達の無能と怠慢を直視する」につながることなのです。だから、耳を傾けたくはないのです。

p.44 重要なことは、「わが社の主製品である埴輪の位置付けを変えよう」というあなたの提案が、会社の「今まで」を否定していることです。あなたにその気がなくても、これは事実です。だからこそ、あなたに否定された「今まで」を担当していた上司達は、うろたえるのです。あなたにその責任を問う気がなくても、あなたの上司は、「問われたんじゃないか・・・・・」と勝手に思って、うろたえるのです。

p.53 「寒流と暖流がぶつかるところは、魚の豊富ないい漁場になる」という、唐突な一言です。「現場からの流れ」と「会社からの流れ」がぶつかるところもまた、「魚の豊富ないい漁場」になるのです。もちろん、ここで言う「魚」とは、「思いつき」のことですが。

p.56 会社に代表される日本の組織は、「その事実はみんな薄々実感しているが、公式見解としてはその事実を認めない」という、不思議にしてややこしい性格を有するところなのです。

p.58-9 「会議」とか「議論」ということを考えると、どうしても「前提から始まって結論に至る」というようなもんだと思います。でも、日本の会議は違うんです。「「仮の前提から始まって、それを正式の前提として承認することによって終わる」が、日本の会議なんです。

p.60 「このままでは我が社もだめだ」という事実認識は、これまであなたの会社にはありませんでした。ということは、「このままでは我が社もだめになる」を、思考の前提にしてはいなかった――してはいけなかったということです。あなたが、上司からの不条理とも言うべき反撃にあったのも、この「してはいけない思考」をしてしまったからです。

p.89 「上司=命令する者」という考え方は、部下というものを「原則として無能」と考えるところから出ています。無能だから、あれこれ命令して動かさなければならないのです。しかし、部下が有能だったらどうでしょう。そんなことをする必要がありません。部下を「原則として有能」と考えるのが、現代の上司のあり方なのです。

p.96 「日本の会社では現場と会社の間に分裂が生じている。それが最大の問題だ」

p.98 「仕事」とはつまり、「他人の需要に応えること」です。

p.112 「景気のいい時の会社は、問題があっても、それを簡単に隠蔽してしまえる」

p.136 官の組織は、「利潤を得ること」も目的にしません。「利潤」は「現場」から吸い上げられるもので、だからこそ「利潤を得る」を目的とする「会社」は、現場の動向に耳を傾けざるをえません。しかし、官の組織は「利潤を得る」を目的にしていません。だから、「現場の声を聞く必要はない」なのです。

p.164-5 「上司をバカにせず、しかも“上司はバカかもしれない”という可能性を考慮する」
 「バカにせず、バカかもしれない可能性も考慮して」なのです。それは、「将来のある子供に対して、愛情をもって接する」と同じようなことです。「すぐにバカにしたくなるような相手」に、そんなことが出来るでしょうか? それが「慈悲」です。

p.166 「バカにせず、バカかもしれない可能性を考える」はかなりむずかしいことですが、これは、もっとむずかしくなります。というのは、この一方に、「バカにせず、バカではない可能性を考える」もあるからです。

p.199-200 「人は生まれ落ちた身分や家柄によって違う」というのは、立場固定主義です。「上司は“上司”だから特別だ」も、立場固定主義です。「年上の人は尊敬しなければならない」も、儒教の「長幼の序」で補強された立場固定主義です。「日本の社会には能力主義が根づかない」と言われるのは、日本の社会がまだ「能力主義=民主主義」を消化していないからです。

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