何かをすれば何かが変わる

すぐに結論なんて出なくていい、でも考え続ける。流され続けていくのではなくて。
そして行動を起こし、何かを生み出す。

ミスをしない人間はいない

2007-07-18 08:54:16 | 薬害は人災だ
失敗の心理学 ミスをしない人間はいない』 芳賀繁・著、日経ビジネス人文庫、2004年10月。

 失敗を何のせいにしますか?

 物事が起きたとき、人はその原因を何かに結びつけて考えます。科学的な因果関係の推定とは違う、心理的、直感的な理由づけ、言い訳です。これを心理学では「原因帰属」といいます。

 失敗の原因帰属にはおもに四つの方向があります。帰属の方向とは「せいにする何か」です。

 一つは、不運。
 2番目は、能力不足。
 3番目は、他人や外的状況。
 4番目は、努力不足。

 この四つを分類すると、「不運」と「他人や外的状況」は自分以外のもの、外部の要因に原因を見つけ、「能力不足」と「努力不足」は自分自身のせいにしています。また、「不運」「能力不足」「他人や外的状況」は自分の力でコントロールするのが難しいのに対し、「努力不足」は自分さえがんばえれば変えることができる要因です。ですから、自分の努力不足に失敗原因を見つける傾向の強い人は、同じ失敗をあまり繰り返さないし、失敗した後に成功する可能性も高いのです。 (p.220-1)

 調剤過誤・調剤事故に対し、とにかくその件数を減らせ、という考えがある。件数とは発生件数なのだが、それは報告件数で把握する。そこが要注意だ。

 報告件数を見て「件数を減らせ」と言うのだから、報告にてごころを加えれば数字的には減ってしまう。それでは意味がないのは言うまでもない。減らしたいのは発生状況だ。それは件数ばかりでなく、程度も問題だろう。

 トップが報告件数を見てそういうと、現場ではその意図を汲もうとする。誰のために件数を減らすのか。患者さんへの健康被害を減らしたいと言っても、そのための直接的行動は現場が行うのだ。患者さんのことを思って言う言葉であるならば、「件数を減らせ」ではなくて、「患者さんの健康被害を防げ!」と言うべきだろう。患者さんにとって、間違った薬ばかりが問題になるわけではないからだ。患者さんはそもそももらう薬が間違っていないことは当然と考えており、関心は薬剤師の専門的知識や技術によって健康が守られ、安全を確保されるかどうかにある。患者さんが考える健康被害とは、専門的な力量が発揮されずに起こるそれだ。

 件数という数字が問われるのであれば、専門的なものというより、作業的に間違った薬を渡さないとか、薬袋を正しく書く、とかいったものに焦点が向きがちになる。件数が減って喜ぶのは、患者さんへの被害の減少が薬局にとってのトラブル減少につながるといった、薬局側の都合が多分に含まれるからだ。数字を問うことで、余計な出費を出したくないんだ、というメッセージにも受けとれよう。

 しかし調剤は人が行うものである以上、ゼロになることはない。薬局側の都合で「件数を減らせ」と言っていると、職員は薬局のために迷惑をかけてはならない、と言われているようなものだから、報告を控えたり、軽微なものや、不可抗力的に発生したものだけ報告するような傾向にもなりかねない。

 調剤エラーはあくまでも一生懸命業務を行った結果にすぎない。現場が故意にやったのならともかく(そんなことありえない)、責められるようなものではない。報告は、その結果をもとに改善をするための元情報であり、さまざまなケースから発生する事例を知り、より質の高い業務につなげる材料だ。

 現場が調剤エラーの発生にナーバスになるのではなく、患者さんから本来求められていることに応えるべく、本質的な業務に専心すべき理由はここにもあると考える 
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