何かをすれば何かが変わる

すぐに結論なんて出なくていい、でも考え続ける。流され続けていくのではなくて。
そして行動を起こし、何かを生み出す。

メディカルマーケティング

2012-06-11 22:54:35 | Book Reviews
「メディカルマーケティング 選ばれる医療機関になるために 廣田祥司・著、日経BP、2010年8月9日

p.1 医療という行為は、不特定多数の人に利益ともたらす公益性を持ちながら、対象となる人から常に会い維新間・満足感を求められており、しかもその行為は人に依存している。

p.12-3 現代の医師に要求されるのは、目の前にいる患者がどんな思いで自分の診察室まで足を運び、どんなことを望んでいるのか、という想像力である。患者が欲しいのは、薬の処方せんではなく、自分が抱える健康上の問題について医師に相談し、解決に結び付く助言をもらうことなのである。

p.13 医療は、医師・スタッフの知識・技術を駆使して、診察料と引き換えに患者のニーズに応えるべきだというのが患者の言い分だ。これをきちんと受け止めないと「医者は自分の都合を優先し、患者のことを考えていない」と、根拠のない不満だけが残ってしまう。

p.25 需要の不確実性とは、いつ病気になるのか、どんな病気になるのか、どれほど重い症状になるのか、費用がどれだけかかるのかなどを、消費者が事前に予測できないことを指す。通常のモノやサービスを買う場合には、いつ、何を、どの程度の予算で買うかを事前に考えられるが、医療ではそれができない。

p.27 診察料はある日突然、必要になる。金額も分からない。そのときに、すぐに支払えるよう、保険に加入しておけば、保険金で医療費を賄うことができる。これが、保険の必要性である。

p.27 日常の買い物や食事で、値段、機能、デザイン、味などが分からないまま、吟味することもできないまま、売り手の言いなりのサービスを受け、それにお金を支払う人はまずいない。これがまかり通るのが医療であり、患者の不満、不信の根になっている。情報の非対称性は、医療が抱えるミクロ、マクロのさまざまな問題の原点といえるだろう。

p.33 「医者は高給取りなんだから、365日休みなしで24時間働いて当たり前」、自分中心手技、お客様は神様だ、といった考えになっているわけだ。そして、その勝手な都合に応えないでいると「医者はお高くとまっている」「医者は信用できない」という身勝手な不満、不信につながっていく。
 ここには、患者の「権利」は守られるべきだが、果たすべき「義務」がある、という意識も知性も欠如している。患者の義務とは、たとえば、自分の健康に関する情報をすべて正確に伝える、納得して医療を受けるために、理解できるまで説明を受け、質問する、ほかの患者に迷惑をかけない、医療業務に支障を与えない、医療費をきちんと支払う、といったことである。

p.43 対応すべき最大の課題は、「情報の非対称性の緩和」であることは間違いない。これによって、患者の不満を少しでも解消し、信頼を少しずつ獲得できれば、患者満足度の向上という、医療消費者と医療提供者の最終目標を達成することができるはずだ。

p.44 マーケティングが顧客満足度を重視するように、メディカルマーケティングは、患者満足度を重視している。

p.55 患者は、自分が何をされるのか、何を必要としているのかが分からない。その患者に対し、解決のためのすべての情報を握っている医師が、患者の理解度と満足度を計りながら、必要に応じて情報を分かりやすく伝えるのである。こうして、情報の非対称性が緩和し、患者が自ら治療に参加すること(アドヒアランスの向上)が、患者満足度の向上につながっていく。

p.60 これを医療に置き換えると、「選ばれる医療機関は、経済性と利便性において、患者ニーズに応え、効果的にコミュニケーションできる医療機関」となる。買い手(患者)の視点に立つ4C(Customer solution、Customer cost、Convinience、Communication)は、より医療に適したマーケティング・ミックスの発想である。

p.70 かつて、企業は、利益目標やシェアの目標を掲げ、一方的に製品やサービスを作り、消費者に提供していた。しかし、これでは、今日の消費者のニーズが大きく早く変化する時代の流れに対応できず、競争力を失うことが経験的に明らかになってきた。

p.78 情報の非対称性が緩和されたときこそが、コミュニケーションがうまくいっている状態であり、これが患者満足度の向上に結び付いていく。

p.120 医療は経済学的立場から見ればサービスであり、医療にかかわる問題は、サービスの需要と供給を考えることで解決されるはずである。

p.130 医療とスタッフが一緒になって、患者の望むことは何かを常に想像し、それを共有するコミュニケーションを行うこと、つまりインターナル・マーケティングの発想が強く求められるというわけだ。

p.174 ISO9001が何物で、それが医療の質にどうかかわるかという説明がない点に、情報の非対称性がある。患者は理解できないし、もしISO9001による品質改善があっても、それがすぐに患者満足に結び付くかどうかは分からない。

p.181 患者満足度を指標に、医療の質の向上を図る努力を継続すれば、結果的に経営の質の改善につながるということである。医療の質の向上と、経営の質の向上は、車の両輪であり、両者がしっかり噛み合うように努力することで初めて、安定した医療機関の運営ができると考えられる。

p.184 結局、患者が医療の質を評価するのは、自分が受けた医療に「満足できたかどうか」だけである。しかも、その評価軸は、患者一人ひとりで異なっている。そして、この患者満足度を把握するのは、コミュニケーションによってのみ、達成されると考えられる。


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