何かをすれば何かが変わる

すぐに結論なんて出なくていい、でも考え続ける。流され続けていくのではなくて。
そして行動を起こし、何かを生み出す。

会社を伸ばす社長、つぶす社長

2007-06-19 23:50:44 | 薬局経営
社長の器 会社を伸ばす社長、つぶす社長の見分け方』 吉岡憲章・著、PHP研究所、2006年。

 売上げが伸びないために営業体制の見直しを申し出た社員に対し、出店すれば売上げがあがるとばかり、実行を指示する社長。

 やがて、2つの営業所がオープンしたが結果は散々たるものだった。まず営業所長にするのにふさわしいスタッフが見当たらないため、現在、実績を出している営業所の所長を新営業所長として異動させた。

 かなりの量の宣伝もしてみた。しかし緊急に募集した営業所員を戦力にするには、時間がかかり、なかなか育たない。お陰でお客様からの信頼を受けづらく、いかにこれまでに実績のある所長でもスムーズに立ち上がれない。

 さらに、実力営業所長が抜けた2つの営業所は赴任してきた新所長の指導力が乏しく売上げは激減、所員たちのやる気も低迷し始めている。大久保社長のエネルギーは新営業所の立ち上げに注がれたため、既存営業所の指揮・管理の手が抜けてしまっている。

 大久保社長が現在の140%になると豪語していた売上げは、逆に20%ダウンの実態だ。


 薬局では、一店舗当たりの売上げが伸びないとばかり、M&Aや出店至上主義のチェーンが少なくない。伸びないのは、やるべきことをやっていないから、利用者の評価が上がらないからだ。調剤報酬項目の算定率向上は直接数字に反映されるから認めても、それを支える・その根底をなすサービス向上努力には、ときに「薬局はボランティアじゃないんだ、霞を喰って生きて行けない」などと否定的だ。

 売上げに直結することしか意味がないと考えているわけで、経営者としての資質はいかがなものか。利用者が薬局を評価するのは、トータルの薬局であり、サービスに込められた想いであり医療レベルだ。

 店舗が発展しないのは、限界があるのではなく、経営方針の誤りであるのだが、それを補おうとするのがM&Aや出店の思想だ。

 しかし、拡大を進めるあまり
・新規店舗にふさわしい人材が不在(その人材で新規店舗が伸びる保証もない)。
・新規店舗のためにスタッフを抜かれた店舗では、サービスレベルが低下し、業績の伸びが継続しない。それまで続けてきたサービスも中止せざるをえないこともある。
・残されたスタッフだけでは、士気が低下し、ミスも増えやすい。
・優秀なスタッフが抜かれることで、そのスタッフについていた顧客が落胆し、顧客離れをきたすこともある。

 などで、一般的にはマイナスが大きい。
 店舗が増えても、全体でみれば、新たに問題を抱えた新旧店舗が残されただけだ。それらが復活するには(その確証はないが)、相当の苦労を必要とし、時間もかかる。元に戻る保証もないし、“二次災害”が起こる可能性もある。

 いかなる出店をも否定するものではない。計画的に、出店できる状況を整えて、マイナス面をきたさない状況で、新たな展開を進めるべきではないか。しかし、そうではない実態があまりにも多い。根本にある誤った考えがこういった悲劇をもたらすのだろう。
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薬局の待ち時間は減らないのか

2007-06-19 08:59:11 | 思いつくまま
 薬局では待ち時間がしばしば問題になる。調剤室内の導線が悪いとか、機械化が送れているとか、待合室のアメニティに改善の余地があるとか、さまざまな議論が交わされるが、決定的なものが出ずに意見百出~継続審議か保留的に先送りされることも少なくない。

 待ち時間(T)を、患者人数(A)、処方せん1枚当たりの処方の濃さ(薬剤種類の多さ)(B)、薬剤師数(C)、処方せん1枚当たりに費やす時間(D)による関数とすると、次のように表される。

 T=(A×B)/(C×D)

 Tを少なくするには、患者人数を減らし、処方せん内容を軽くし、薬剤師数を増やし、1枚に費やす時間を短縮することになる。
 しかし、そうすればよいことがわかっても、薬局経営を考えると、そうもいかないと思ってしまう。

A>患者人数は増やしたい
C>労務費のアップは避けたい

 ということだ。また処方せん内容は、時間をかけて整理するかのように減らすことはできても、そうたやすい話ではないから、Bは動かしにくい。

 となるとDが注目されてくる。

 どうやって調剤工程時間を短縮するのか。導線の改善や分包機等の増設は、だいたい済んでいる。買い替えはあるかもしれないが、それによる大幅な時間短縮効果は期待できそうにない。

 結局、調剤室内を走り回るしかないのか。もしくは「工程」を減らすかだ。工程を減らして、調剤の質・中身が低下しないのなら、改善の余地はあろう。工程の改善は、えてして安全確認の部分を短縮もしくは省略することになりかねないので、調剤エラーは増えるであろうことは容易に想像できる。また窓口での患者さんとの接点が減れば、サービス低下につながる。

 調剤を医薬品の供給(薬剤交付)が中心だと考えている経営者は、サービス低下の意味を理解しにくいことが多く、さらに売上げアップが頭の中を占めるウェイトも大きいので、「もっと早く」とか「待ち時間を減らせ」などと精神論的なことを言うかもしれない。

 こう考えるとやはり、薬剤師(数・質)が重要だ。人件費が気になるのはわからないでもない。しかし、人でしかできない部分に時間がかかるのだから、ピーク時に対応できるマンパワーを用意しておかなければ(窓口の数も重要になってくる)、混雑時であっても空いているときとさほど変わらずにサービス提供はできないだろう。

 しかし、残念ながら人員を減らそうと考える経営者は少なくない。もしくは、パズルでもあてはめるかのように、職員をかたときも休むことなく効率良く動かし続けようと考えることすらある。
 これでは余裕やゆとりやもあったものではなく、職員の肉体的・精神的疲弊は時間の問題だ。長続きしない。

 どのように薬局の全体構成をとっていくかということだが、職員数(マンパワー)をピーク時を想定して揃えているか、ピーク時であってもサービスレベルを低下させない、患者さんの満足を基本に考えているか、それとも経営を優先するか、によって変わってくるのではないだろうか。

 少なくとも経営を中心に考えるのであれば、待ち時間は減らないだろうし、減らそうとしたら調剤事故をはじめとするさまざまな弊害も生じるものと思われる。
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