何かをすれば何かが変わる

すぐに結論なんて出なくていい、でも考え続ける。流され続けていくのではなくて。
そして行動を起こし、何かを生み出す。

よき経営者の姿

2007-04-03 23:22:34 | Book Reviews
『よき経営者の姿』 伊丹敬之・著、日本経済出版社、2007年

 本書は経営者のあるべき姿を、顔つき、仕事、資質、育ち方、失敗、退き際の6章から分析し、解説したものである。帯にもあるように、昨今の経営者の多くに対して「社長ごっこはもうやめよう」と、自らの姿に対して冷静な反省を求めている。

 折りしも、関西テレビの社長が、ようやく辞任を表明した。

関テレ:旧体制引きずり信頼回復できる?…疑問の声噴出

情報番組「発掘!あるある大事典2」のねつ造問題で、放送への信頼を根幹から失墜させた関西テレビ(大阪市北区)。経営責任を追及され続けてきた千草宗一郎社長は3日、ついに引責辞任を発表した。その一方、千草社長は取締役として経営陣に残り、陰の実力者とされるフジテレビ出身の出馬迪男会長の留任も決定した。「再生」を誓う関テレだが、旧体制を引きずったまま信頼回復ができるのか。疑問の声が噴出している。

問題発覚から2カ月半。千草社長は「ずっと責任の取り方を考えてきた。再発防止策を構築するのが責務だと考えてきた。問題が大きくなり、視聴者に対する説明責任を果たした後、最終判断を下すべきだと考えていた」と、この日に判断が至った経緯を明かした。

一方で、取締役として経営陣に残る判断について、「きちんと責任を取ったと考えているのか」「不信払しょくにつながるのか」と報道陣から厳しい質問が相次いだ。しかし、千草社長は「今後、再発防止、改善に努め、視聴者の信頼を取り戻すことこそが、責任を果たすこと」とかわし、判断が甘いとの批判を一蹴(いっしゅう)した。

また、処分が報酬の自主返上だけにとどまった出馬会長の責任について、「会長は、会社経営全般をみていく。社長は業務執行の最高責任者ということで、同じ代表権者でもそこが違う」(片岡正志常務)と苦しい説明。千草社長も「すべて私の責任と思っております」と答えるにとどまった。

 「よき経営者の姿」とは正反対であることはいうまでもない。番組をおろそかにしておきながら、直接自分が手を下していないことで、結果責任はあるとしてもあまりにも罪の意識に乏しい。番組への信頼性を確実にしてこなかったのは担当者だから、自らの責任は軽いと思っているのではないか。減給程度で済むと思っていたのかもしれない。
 番組へのコミットメントをたいして行ってこなかった、不作為にも近い状態ではないのだろうか。

 だから突然、権力の座から追われることに抵抗する。しがみつくともいう。自らの運営や人事の誤りこそ、最大のミスであることに気づいていないようにすら見える。明らかに退き際のタイミングを逸しているようだ。

 まだ体力的にも年齢的にも、十分できる思っているにちがいない。しかし判断能力において、とっくに終焉を迎えていることは明白である。数字的な年齢が問われているのではない。

 本書では、「こうした退き際の間違い、とくに「まだ」の間違いを起こさせる最大の要因はおそらく、権力への未練である。未練が、「まだ」と思わせる。」(p.208)と述べている。
 経営陣に居残る(居座りつづける)というのだから、これからも影響力を行使し続けるということだ。それでは退いていないことと同じではないか。「もっとも醜い退き際であろう。」(p.208)という、まさに典型的な悪しき経営者の姿が、関西テレビでは進行している。経営陣ではない社員の悲哀はいかばかりか 
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パワハラ

2007-04-03 08:44:22 | 思いつくまま
<働く人の法律相談>パワハラ 鍛えてやろう、では済まされない 朝日新聞 2007.4.2

 異動の季節です。管理職に昇進した人もいるでしょうが、上司が権力を笠に着て部下をいじめる、いわゆるパワーハラスメント(パワハラ)には要注意。「鍛えてやろうとした」「よかれと思って」などといいますが、どんなつもりであるにせよ、一線を越えた行為は許されません。最近は裁判となる例も少なくないのです。

 パワハラは、受ける側の人格権を侵害する違法行為です。

 違法性を判断するポイントは、①指導や命令が業務上必要か、②必要だとしても、解雇目的や相手をおとしめようなどという不当な動機がないか、③従業員が通常甘受すべき程度を著しく超える苦痛を与えていないか、などの3点です。

 実際にあった例では、古い伝票を破る作業を1日やらせたり、会社の就業規則を延々と書き写させたり、漢字テストを繰り返しやらせたり。明らかに業務との関連性がなく、社員に苦痛を負わせるようなこれらの行為は違法です。

 ここまでいかなくても、極めてささいなミスを必要以上に強くしかったり、長時間にわたってなじったり、ほかの従業員の前でつるし上げたりすることも違法となることがあります。足や机をけるなどの暴力、能力を侮辱する言葉、差別的な発言は論外です。

 パワハラには、防止を義務づける明文の法律はありません。しかし内容の程度が著しい場合は、上司は人格権侵害による不法行為責任、会社は使用者責任や、働きやすい職場を保つよう配慮する就業環境配慮義務があるとして、損害賠償請求を受けることがあります。従業員がうつ病になるなどして会社を休まざるを得なくなった場合には、治療費や休業損害の請求も加わります。

 「自分が若い頃はもっとしごかれた」などと言っても始まりません。違法性の判断には、パワハラを受けた側の心情も考慮に入れられ、多少の個人差もあります。部下それぞれの性格や普段の行動を見極め、一人ひとりの指導のあり方を決める。それが上司のマネジメント力でしょう。(弁護士 棗一郎)

 パワーハラスメントについて、ネットを探せばあちこちに解説がなされているにもかかわらず、読んでたいへんわかりやすかったので、記録に留めておくことにした。
 陰湿度の程度や被害を受ける側の感度によって、何事もなく済むこともあれば、事件に発展することもある。一見、事件に至らずに済んでいるように見えることのなんと多いことか。

 組織の歪みといった一言で済ませられるものではないだろうが、子どもへのいじめと同じで、周りが立ち上がることで“多少は”防げるもの、救われるものがあるのではないかと思う。
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