新・むかごの日記

高槻市に在住の、人間と自然が大好きな昭和1桁生まれの爺さんです。
出かけるときはカメラ連れ。
目標は毎日1記事です。

ズバリ!美人の花、フヨウ:芙蓉 

2005-08-11 06:58:46 | 植物観察1日1題
まだ朝の冷気の消え残る時刻、大きい掌状の葉の間に、これも大きい桃色の5弁の花びらが、昨夕凋んだ花殻をうまく隠すように開いています。
フヨウ:芙蓉(アオイ科)は、別名木芙蓉(モクフヨウ)ともいい、中国および日本西南部原産の低木で、高さ1.5~3.5m、枝はよくわかれ開帳性の樹形を作ります。花は桃色で、花径は10~12cm、杯状で平開しません。1本の雌蕊の先端が5つに分かれ、その下に雄蘂がつく、ハイビスカス系の特徴を示しています。
辞書によると“芙蓉”の語は、美人のたとえの意味があるそうです。“美しい”と同義の名がついたくらいの花ですから、フヨウが夏を代表する最も美しい花であることには誰も異論はないでしょう。
庭では、秋から冬にかけて、深く切り詰めて来年の芽生えを待ちます。昔聞いた先輩の俳句「枝切って芙蓉がもとの低き潅木」、名句かどうかはわかりませんが、芙蓉の性質、扱い方がよく出ていて不思議に覚えています。
もうひとつ蛇足を。有名な旧一高寮歌「嗚呼玉杯に花うけて」の第2節“芙蓉の雪の精をとり 芳野の花の華を奪い・・・”の芙蓉は芙蓉峰で、花ではなく富士山の雅称です。

紙漉きの糊、ノリウツギ:糊空木

2005-08-10 05:55:05 | 植物観察1日1題
今の時期山を歩くと、時節はずれのアジサイのような白い花によく出会います。
花の少ない季節だけによく目立ちます。
ノリウツギ:糊空木(ユキノシタ科)は日本、中国に分布するアジサイ属の落葉低木で高さ2~7m、7~8月新梢の先に白色の大きい円錐花序をつけます。房状の花は、外側に4枚の萼が発達した装飾花をまばらにつけ、多数の小さな結実する両性花を密生します。
ノリウツギの名は、この樹皮を水に浸すと出る粘液を、製紙用の糊として使ったことによります。
東北、北海道では、この木をサビタと呼んで歌にも出てきます。アイヌの人がこの木の根で作るパイプは、サビタパイプといわれパイプ愛好家に珍重されているそうです。

花もわすれないで:フウセンカズラ

2005-08-09 06:13:53 | 植物観察1日1題
花もわすれないで:フウセンカズラ 
葉腋から細い巻きひげを支柱にからませながら、その先に直径2~3mmほどの目立たない白い4弁花を総状につけているのは、フウセンカズラ:風船葛(ムクロジ科)です。
北アメリカ南部原産のこの草は、なぜか縁遠く見えるムクロジという木と同じ科に属します。同じ蔓についた花がまだ咲き終わらないのに、もう三角の風船そっくりの果実をつけています。
名前のとおりこの草の特徴は、何といってもその特徴ある3部屋に分かれた風船状の果実とその中に入っている種の形です。中に入っている種は黒色、球形で、白色のハート状の模様があり、自然工作でも人気の素材です。
こぼれ種でもよく発芽し、育てやすい植物です。
写真は、普段注目されない小さい花にピントを合わせてみました。

可愛想な名前のハキダメギク:掃溜め菊

2005-08-08 06:30:55 | 植物観察1日1題
いまは昔、東大の付属植物園である通称小石川植物園の裏手に掃き溜めがありました。
ここに生えた見られぬ植物を見つけて、牧野富太郎はハキダメギクと名づけました。
ハキダメギク:掃溜菊(キク科コゴメギク属)は、元来中南米に分布する帰化植物です。よく似た仲間に、コゴメギクがあり、一時はこの2種が混同されたこともあるそうです。大方の掃き溜め場が姿を消してしまった今では、どこの道端でも見られますが、名前の由来の通り少し肥料気の多いところを好むようです。
6-10月に、対生する葉の腋から枝が出て、先端に小形で直径5mmくらいの頭花が多数集まってつき、5個の白色の舌状が、中央の黄色い管状花を囲みます。
接近して撮ると結構可愛い花で、この変な名前をつけた名付け親を恨んでいるかもしれません。
大学者牧野博士は、新種の命名に“ワルナスビ”など(7月11日付記事参照)思ったままをつける癖があったみたいですし、学名にオタクサをつけたシーボルトをくそみそにやっつけながら、自分も奥さんの名を学名に入れて顰蹙を買うなど、少しデリカシーを欠くところがあったのかもしれません。

夏の樹下にオレンジ色の花園、オオキツネノカミソリ:大狐の剃刀

2005-08-07 05:53:39 | 植物観察1日1題
いま、ポンポン山(高槻・京都)の谷間の木陰にオオキツネノカミソリの大群落がオレンジ色の花を開いています。
キツネノカミソリ(ヒガンバナ科)は、本州、四国、九州原産の多年草で、球形の鱗茎を持ち、春に広線形で葉先の丸い葉を出し、この葉の形から剃刀の名があります。
春に葉が出て初夏に枯れ、盛夏から初秋に花だけが咲くという一風変わった生活をする草です。花期、長さ30~50cmの赤褐色の花茎を出し、頂の膜質の苞より3~5花の黄橙色の6弁花を斜め上向けにつけます。花被の長さ約6cm幅約9mmです。
雄蕊は6個で、普通花被片より短いのですが、変種として、雄蘂が花弁より長くやや大型のをオオキツノカミソリといいます。ポンポン山一帯ではこの方が多いようです。

滴る谷水に濡れ涼しげに、イワタバコ:岩煙草

2005-08-06 05:49:51 | 植物観察1日1題
ポンポン山の北側、高槻市出灰地区の谷間にイワタバコ:岩煙草(イワタバコ科)が、滝の飛沫に濡れて、紫青色の美しい花をつけています。
本州、四国、九州、台湾などの自生する矮性の多年草で、1株から1~2枚の厚く艶のある楕円状の大形の葉をつけます。この葉が葉タバコに似ているとしてこの名があります。
夏、株元から長さ10cmほどの花茎を出し、その先に短い花柄をもった紫青色の花を数個づつ散形状につけます。
いつも飛沫がかかるような日陰の谷間の岩にへばりつくようにして咲くイワタバコは、いかにも涼しげで、夏の暑さを忘れさせてくれます。
煙草の名がついていますが、タバコとは全く別種で、ニコチンがあるわけでもなく、葉をそのままサラダにして食すこともできるそうです。(もっとも、実際には、食べるほどの葉を手に入れることはできないでしょうが)
愛好家によって栽培されることも多く、白や薄桃色の花をつけるのもあります。
栽培は比較的容易で、葉挿しでも簡単に殖えます。冬の間縮緬状に小さく丸まっていた芽が、春になってぐんぐん伸びて、大きな葉になってゆくのを見るのは、ちょっとした感動ものです。

古歌にも伝説にも、オミナエシ:女郎花 

2005-08-05 06:19:59 | 植物観察1日1題
今の時期京都市嵯峨越畑地区では、盆花の出荷を控えて、栽培の女郎花が満開です。(写真下)
秋の七草でおなじみのオミナエシ(オミナエシ科)も、いまでは山で見かけることがすくなくなりました。
全国の日当たりのよい山の草地に生える多年草で、丈60~100cmの細くて硬い茎が直立し、頂部は分枝してほぼ平らな散房花序になり、多数の黄色小花をつけます。
オミナメシとも読み、オミナは女、エシ、メシは粟飯の意で、黄色い小さな花の集まりを粟飯に見立て女の粟飯に見立てたものとされています。
女郎花は万葉集に14首出るなど、古くから歌や伝説に取り上げられています。
平城天皇の御時、男山に住む小野頼風と契った京の女が、八幡に男を尋ね行くと、新しい女ができてそこへ行っていると聞き、心変わりを恨んで、川のそばに山吹襲ねの衣を脱ぎ捨て身投げします。その衣が朽ちて女郎花の花が生え出ます。謡曲[女郎花](おみなめし)は、こんな説話を下地にしています。
いま、八幡市のその名も“女郎花”という町にある「松花堂」庭園の中に、女郎花塚といいう塚が残っています。
女郎というといまの人はまず遊女を連想しますが、本来は身分のある女性(上臈)もしくは若い女性を意味し、万葉集でも女郎花の他、娘子部四、佳人部為、美人部師など綺麗な万葉仮名で表現されています。
この花、切花として生けておくと一種の悪臭があります。女郎花も“やはり野におけ”のようです。

清流の証し醒ヶ井のバイカモ:梅花藻 

2005-08-04 06:52:06 | 植物観察1日1題
伊吹山のお花畑を見た後、醒ヶ井へ立ち寄りました。
お目当ては、JR駅醒ヶ井駅のすぐ近く、中山道の街道沿いに流れる地蔵川の梅花藻です。
真に綺麗な流れでしか育たないといわれるバイカモ:梅花藻(キンポウゲ科)は、水中葉に短い柄があり、葉身は3~4回3出し、糸のように細く裂けています。6~8月ごろ開花し、3~10cmの花柄に直径15~20mmの5個の白い花弁と多数の黄色い蘂を持つ花をつけます。
鈴鹿山系の龍仙山あたりから発する伏流水が湧き出る地蔵川の、冷たく清らかな流れの中で小さく白い梅のような花をつけて揺れています。
水に手を浸すと切れるような冷たさです。何人かの人が、ところどころに作られた川への降り口に腰をかけ、足湯ならぬ足水を楽しんでいます。
花と葉との明暗の差が大きい上、流れの中で絶えず動くので写真に撮るのは骨が折れます。写真は、たまたま花が水の上に出ているところがあったのを撮ったものです。
少しだけ上流へ歩くと水源のひとつで、地名の由来になったといわれる「井醒の清水」があります。湧出口で清水を汲み、持参のウィスキーで水割りを作り飲み交わしました。
平均年齢60ウン才の“青春28切符”の旅のひとこまです。

名前も優雅なヒオウギ:檜扇

2005-08-03 06:27:51 | 植物観察1日1題
庭の片隅でヒオウギ(アヤメ科)が咲いています。
別名、烏扇、射干ともいわれ、本州以南、中国、インド北部の山地にも自生する多年草ですが、観賞用として庭でも栽培されています。
草丈60cm~1mで、広剣状の葉は粉白緑色で2列に互生し、下半分は昔貴婦人が使った檜の扇に似ていることからこの名があります。
花被は6個、黄赤色地に暗紅色斑点がある花弁は狭い楕円形です。雌蕊は1本で先が三つのハート型に裂け、雄蕊は3本です。
縁起がよいのか、京、大阪では夏祭りの花として欠かせません。
秋に倒卵形の朔果の中に、直径5mmほどの真っ黒い球形の種子ができます。これを昔からウバタマ、ヌバタマといい、黒い、暗いという意味で髪や、夜の枕詞になっています。
花は派手ではありませんが優雅な名前ともあわせて夏の庭にひと株ほしい花です。



因幡の白兎の傷を治した妙薬:ガマの穂

2005-08-02 05:50:44 | 植物観察1日1題
「昔、兎が岐島から因幡国に渡ろうとして、鰐鮫を騙して海の上に並べその背を渡ったが、嘘がばれ、鰐鮫に皮を剥ぎ取られた。八十神の教えに従って潮水で洗ったためにかえって痛み苦しんでいるのを、大国主命が、真水で洗って、蒲の穂の花粉をつけよと教えて助けてやった。」古事記にも出る有名なこの因幡の白兎説話も今の若い人はどれだけ知っているでしょうか。
ガマ:蒲(ガマ科)は、全国各地の池や沼に生える大型の多年草で、高さは1~1.8m、茎は円柱形で直立し、長さ1m幅2cmくらいの葉があり、基部で鞘状になって茎を包みます。夏に花茎の先端に穂を付け、下半分の太い部分が雌花穂で、長さ15~20cm、こげ茶色のソーセージ状です。やや細い雄花穂が上につきます。
雌花は果穂となり、無数の種子を含み、最後は綿毛状になって飛散します。
説話のとおり、花穂には傷を治す薬効があるそうですし、かつては、葉を編んで筵にしたり、穂を布団の芯に入れたりしたそうです。
昔の蒲鉾は主に竹串を芯にして筒型につくり、これが蒲の穂に似ているところから、蒲鉾の名が生まれたというのはよく知られた話です。

(訂正:写真はガマではなくてヒメガマではないかとのご指摘をいただきました。お詫びして訂正します)

真夏の空に向けてブルーの花:リュウキュウアサガオ

2005-08-01 06:18:58 | 植物観察1日1題
金網の塀に絡んだハート状の葉を持つ蔓に、少し厚手の花びらを持つリュウキュウアサガオが夏空に向かって星型の花を拡げています。
日本の朝顔とどこか違うこのリュウキュウアサガオ:琉球朝顔(ヒルガオ科、イボメア属)は、亜熱帯原産で、沖縄に自生している蔓性多年草です。
リュウキュウアサガオは、沖縄ではノアサガオ(野朝顔)といわれ、花は葉腋に1個づづつき、長い花柄の上部近くに小苞があり、漏斗状の青紫色の花には5本の帯があります。普通朝開いて午後には凋みます。アサガオによく似ていますが、萼裂片が反り返らないことで区別できます。
アサガオと違い自家受精しないので種ができず、繁殖はランナー(匍匐蔓)、株分け、差し芽などによります。
本土でよく見られるのは、オーシャンブルーという改良品種が多いようです。