ピアニストのルイス・カルロス・ヴィーニャスを中心としたブラジルのトリオ、ボサトレスによる65年の作品。マシャードとネトが抜けた後、いわゆる第二期ボサトレスの代表作です。ちなみにタイトルからも分かるように原盤はForma。マニアから人気の高いこのレーベルの中でも、CoisasやDesenhosと並び一際支持される一枚として知られていますね。この迫力のあるジャケットに引いてしまい、これまで何だか聴き損ねてしまっていたのですが、いざ実際に聴いてみると、これが今まで敬遠していたのかが悔しいほどの名盤でした。オープニングから疾走するM-1のBottlesや、ジャイルスのフェイバリットでもあるM-10のImprevistoで披露される、まるで音の洪水のような高速ハード・ジャズサンバには、おそらく誰もが一瞬で耳を奪われるはず。文句なしに格好いいです。ただ、個人的にツボなのはこれらではなく、数曲で演奏されるソフトな肌触りのモード・ジャズ。M-3のValseやM-7のVivo Sonhandoのような雰囲気が気に入っています。そして極めつけはM-9に収録されたComo Eu Wuis Você。真夏の夜の静寂に映えそうな絶品モーダルで、たとえばマイルスのFlamenco Sketchesなどが好きな正統派モダンジャズ・ファンにもお勧め出来る逸品に仕上がっています。その他でも、グルーヴィーなオルガンが気持ちいいM-6のBico De Luzや、リリカルでセンチメンタルなピアノが美しいM-4のBúziosなどなど、本気で全ての曲が名曲ばかり。ますます気温も上がってくるこれからの季節、正統派ジャズに暑苦しさを感じたら、こんなブラジルのピアノ・トリオを聴いてみるのも悪くないのではないでしょうか。ちなみに僕の持っている98年リリースのCDは残念ながら現在廃盤だそう。ただ値段はそれほど高騰していないので、中古市場でならわりと手に入れやすい一枚かと思います。まぁ本当のところはアナログで欲しいんですけれどね。
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