水滸聚義

中国古典『水滸伝』の紹介や考察を行っています

基礎知識 『水滸伝』ができるまで

2010-10-24 | 基礎知識
 ■『水滸伝』ができるまで

 『水滸伝』は、北宋の末期に起こった農民起義「宋江の乱」を題材にして語られる物語です。宋江ら36人の盗賊たちが、淮南のあたりを中心に反乱を起こし、最後は海州の長官・張叔夜に敗れ降伏した、という記事が複数の歴史書に記述されています。ただ、その記述はあっさりとしたもので、宋江の人となりについて全く触れられていませんし、宋江以外の36人は、その姓名も伝わっていません。

 時代が、南宋~元初と移っていく間に、この宋江ら36人をモチーフにした英雄説話が民間で出来上がっていきました。南宋末~元初には、宋江ら36人の姓名と賛辞を綴った龔聖与(きょう・せいよ)の「宋江三十六人賛」や、説話集『大宋宣和遺事』といった書物が作られていきました。この「宋江三十六人賛」や『大宋宣和遺事』に見られる36人の姓名は、『水滸伝』の天𦊆星36人の好漢の名に類似しています。また、『大宋宣和遺事』の説話の中には、「宋江 怒って閻婆惜を殺す」や「楊志 刀を売る」など、明らかに『水滸伝』の原型になっているものがあります。

 また、元の時代には雑劇という形で、好漢たちの個々の説話が作られていきます。この過程で、次第に宋江の仲間たちは108人に膨れあがり、明代の初期から中期頃に、小説『水滸伝』としてまとめられました。