酔月庵 A Side

設計屋系システム屋から見た世界

優秀な人の二つのタイプ

2007-08-26 02:47:03 | 仕事
SEの仕事、特にシステム開発という仕事は、「プロジェクト」という決められた目標の達成のために一時的に組織された体制で行われる場合が多い。
 そのプロジェクトにおいて、成功の可否の大半を決定付けるのは、必要な能力を持った人を、必要な数だけ集められるかどうかにある。

 頭数だけ揃えても、必要な能力を持った人がいなければ、そのプロジェクトは労力と時間を浪費するだけの集団か、見当違いの方向へと死の行進を延々と続ける集団と化してしまう。必要な能力を持った人を集められたとしても、仕事の規模に対して必要な能力を持った人が少なければ、十分に機能せずにプロジェクトは十分には機能しない。
 玉石混交のこの業界において、必要な能力を持った人を必要なだけ集めるという事(逆の言い方をすれば、適切な能力を持たない人に対し、能力が必要となる役割を与えない事)はなかなかに難しい事だ。

 しかし、「必要な能力を持った人」には二つのタイプがあり、そのどちらのタイプの人を集めるかによって結果は全く違ったものになる。

 優秀な人には二つのタイプがある。目的の達成のためにその優秀さを発揮するタイプと、自己保身のためにその優秀さを使うタイプだ。前者をベンチャー的な優秀さと呼ぶならば、後者は官僚的優秀さと呼べるだろうか。同じく「必要な能力を持った人」であったとしても、その優秀さがどちらの方向を向いているかで結果は全く違ったものになる。
 
 プロジェクトを成功させるために必要となる人材は、後者の人材ではなく、前者のベンチャー的な優秀さを持った人材だ。

 後者のタイプの人材であったとしても、その人がプロジェクトの結果に対して責任を負う立場として参画しているのであれば、きっとその優秀さを遺憾無く発揮してくれるだろう。しかし、プロジェクトの全責任ではなく、ある一部の役割を果たすために参画しているのだとしたら、優秀さを発揮する方向がプロジェクトの成功と同じ方向を向くとは限らない。プロジェクトの成功が困難である場合にこそ、その傾向は顕著だ。
 どんなに優秀であっても、後者のタイプを集めたのではプロジェクトは成功しない。その代わり、その後者のタイプの優秀な人材は、プロジェクトが成功しなかった原因を理路整然と説明してくれる事だろう。「プロジェクトが失敗した原因は**にある。理由は**である。だから私に責任は無い。」と。もしくは、こう言うかも知れない。「当初の目的は達成できなかったかも知れないが、プロジェクトは失敗では無い。なぜなら、***だからである。」と。
 
 仕事を成功に導くためには、言い換えれば目的を達成させるためには、後者のタイプではなく前者のタイプの優秀な人材を集める必要がある。



 以前は、私の周りには前者のタイプの優秀な人が多かった。私も前者のタイプを志向したいと思った。しかし、最近私の周囲にいるのは後者のタイプばかりだ。
 残念ながら組織において評価されるのは後者のタイプだ。プロジェクトの成功よりも、自分の評価が最大になる事を目的に行動しているのだから、プロジェクトの成功のために自分を多少なりとも犠牲にしてしまう前者のタイプと評価に差がついてしまうのも当然だ。

 優秀な人材が集まらない事、優秀な人材を集めたとしても後者のタイプである事が多い事、そして自分自身が前者のタイプを志向して行動したとしても結果的に後者のタイプに評価の点で負けてしまう事、それらが最近の私の悩みだったりするのです。(起業した優秀な人達は、私と同じように考えた末に組織にとどまるのではなく起業するという選択肢を選んだのかもしれませんね)