藤田洋子/花冠同人

藤田洋子の俳句ブログ

平成24年花冠11月号

2012-09-09 16:06:31 | Weblog
橋一つ渡れば風より秋めける
九月来る玻璃一枚の空の色
また一つ木槿咲く朝婚祝う
新涼の風のままなる蔓の先
窓越しの鳴き澄む虫と夜を分つ
 西条市
石鎚の空くっきりと稲実る
秋の雲高速一路加速する
新涼のビール工場海近し
嶺近き街に流るる秋の水
一粒の真珠を胸に空澄める


俳句添削教室

【原句】橋一つ渡る風より秋めける
【正子添削】①橋一つ渡れば風より秋めける
        ②橋一つ渡れば風の秋めける
【コメント】①と②では、句意が違います。①は橋を一つ渡ると、まず風が秋めいて感じられます。そう感じると秋めいているものは、風だけではありせん。いろいろと。
②は、橋を一つ渡ると風が秋めいて感じられます。
主語はご自分でしょうか、風でしょうか。元の句はそれが曖昧です。

★九月来る玻璃一枚の空の色
【コメント】新しい月、それも季節の変わる月は新鮮でいいですね。玻璃一枚に透ける空も秋らしい色に思えます。(高橋正子)


第16回フェイスブック句会

★窓越しの鳴き澄む虫と夜を分つ
「夜を分かつ」によって、窓の外の虫音と内とが繋がって、しっとりと落ち着いた虫の夜となっている。「鳴き澄む」虫の声が透徹している。(高橋正子)

夜長に、好きな読書や趣味などしながら、ふと窓越から聞こえくる虫。「夜を分かつ」虫の音を生活の中にも取り入れていて、素敵な句です。(祝 恵子)
「夜を分つ」に余韻を残すとともに、きっぱりとした決断も感じられます。「鳴き澄む虫」に心傾けながら「窓越し」に心を交わす清清しさ。 (小西 宏)
秋の夜は夏と違い窓を開けているので、窓越しに鳴く虫の音も澄んだ声で聞こえてきます。そんな虫の音と夜を過ごす、秋の風情はのどかな楽しいひとときです。 (高橋秀之)

★また一つ木槿咲く朝婚祝う
夏の頃から次々と花を咲かせて楽しませてくれる木槿。一日花ですから、毎朝新しい花が咲きますね。「また一つ」「咲く朝」に、ご結婚されたお二方へのやさしい祝意が、静かに温かく伝わってきます。(小川 和子)


平成24年花冠10月号

2012-09-09 15:47:43 | Weblog
 青田風
朝涼し伊豆より届く山葵の荷
涼しさの皿のさみどり山葵擦る
八月の葦原分けて風起る
絵葉書の涼しき一句飾らるる
青田風立てて列車は駅に入る
立秋の川面ひとすじ藻の緑
風のふと身に添う岸辺秋立ちぬ

俳句添削教室

【原句】いっせいに靡き交わして葦茂る
【コメント】「葦茂る」は夏の季感として捉えられます。景色は想像できますが、「靡き交わす」に、言葉として少し違和感(無理)を感じます。この句に沿って国語辞書(大辞林)で意味を考えると、
【靡く】 草や布などの先端が風や水の流れに従って横に傾き伏す。旗が風に―・「煙が―・」
【交わす】 互いにまじえる。交錯させる。「枝を―・す」
に当たるでしょうから。

【原句】八月の葦原分けて風起る
【コメント】「分けて風起こる」の写生がいいですね。涼しさがあります。

【原句】絵葉書の涼しき一句飾らるる
【コメント】絵葉書一枚でも、涼しそうなものが身近にあると、そこに涼しさが生まれます。 (高橋正子)


第15回(立秋)フェイスブック句会

★青田風立たせ列車は駅に入る
日差も強く、植田が青一色に輝き、より一層鮮やかになる青田。その田に風が吹き渡る山里の駅に鈍行列車が入行して来る。見るからに穏やかな山里の景が見えてきます。(小口 泰與)

★立秋の川面ひとすじ藻の緑
連日の暑さに少々うんざりしている時、ふと川面を眺めるとひとすじの緑の藻が透けて見え、その一瞬に秋を実感されたのでしょう。立秋の爽やかさが伝わって参ります。(佃 康水)

秋立つ日の川辺、少しだけ陽射しが柔らかくなり、水面の光も昨日よりおだやかです。そこにひとすじ走る、藻の緑。爽やかな川面に、気分も新たになるような涼しさを感じます。(川名 ますみ)

★風のふと身に添う岸辺秋立ちぬ
気づけば風が身に心地よい。ああ秋になったのだと思われたのでしょう。「ふと身に添う」こういう風に気付きたいものです。綺麗な句ですね。(祝 恵子)


平成24年花冠9月号

2012-09-09 15:28:31 | Weblog
 流し素麺
雷雨あとの川幅広く風通る
夏燕の一閃雨後の空締まる
 保内町平家谷
谷水に流し素麺真白なる
青葉影清流しぶき鱒群るる
雨上がる山紫陽花の輝かに
 敦くん結婚
薔薇の香に讃美歌ともに口ずさむ
薔薇真紅ナプキンの立つ円卓に

★雷雨あとの川幅広く風通る
「雷雨あと」の開放感があって、涼しさのある句。「雷雨まえ」の蒸し暑さから開放され「風通る」のである。いい生活句だ。日常での実感が伝わってくる。(高橋信之)

★夏燕の一閃雨後の空締まる
滂沱と降った雨の後のまだ濡れたような空を夏燕が一瞬の間に過る。「一閃」の速さなのだ。空さえも引き締まるのだ。(高橋正子)

平成24年花冠8月号

2012-07-07 18:30:33 | Weblog
 山青葉
山青葉供花新しく立てており
一枚の光り湛えて田が植わる
六月の食器を洗う水の音
梅雨に入るコップのパセリ青きまま
植田はや漣寄せて夕映ゆる
 (四国カルスト)
青葉風牛ザクザクと草を食む
高原のペンペン草と吹かれいる

★一枚の光り湛えて田が植わる
田が静かに植えられていく様子が目に見えるようだ。水を湛えた田は、そのまま光りを湛えた田となる。(高橋正子)

★植田はや漣寄せて夕映ゆる
この植田は、「はや」というから、苗が植えられて間もない植田である。それなのに、漣が寄せて、夕映えて、辺りによい景色を広げている。「漣」「夕映え」に早苗に寄せるやさしい気持ちが読みとれる。(高橋正子)

★六月の食器を洗う水の音  
六月の水の音どんな音でしょうか、気になり、句がすっきりして好きです。(下地鉄)

平成24年花冠7月号

2012-07-07 18:26:19 | Weblog
 若葉風
朝掘りの筍どさり土間湿る
刃をざくと入れし筍水散らす
軽トラック弾み筍山に入る
摘みたての蓬からりと天ぷらに
山青葉おにぎり一つ頬張りぬ
若葉風自転車きらり輪が廻る
風光る娘の運転で郊外へ

★朝掘りの筍どさり土間湿る
朝掘ったばかりの筍は、大地の湿りを含んで重い。土間にどさりと置かれ、土間を湿らせる勢い。「どさり」が効いた。(高橋正子)

★若葉風自転車きらり輪が廻る
若葉風に吹かれ、自転車の銀輪がきらりと輝いて廻る。初夏の解放感と若々しさの溢れた句。(高橋正子)

自転車が躍動的に動いて若葉風に呼応している様子が見えます。「自転車きらり」が素敵です。(松尾節子)

平成24年花冠6月号

2012-04-25 12:24:42 | Weblog
 仏生会
人並び甘茶の杓の手から手へ
仏生会伽藍に澄める鳩の声
雫して琥珀の光り甘茶仏
雨あとの山の鶯なめらかに
たっぷりと彼岸の花に水を入れ
彼岸会の雨上りゆく山に入る
四月来てふわりと返る卵焼き

★人並び甘茶の杓の手から手へ
「人並び」いて、それから「手から手へ」であれば、花祭の季節の暖かさに加え、人の心の暖かさが伝わってくる。嬉しい句だ。(高橋信之)

★仏生会伽藍に澄める鳩の声
穏やかに晴れた仏生会、日差しの中鳩の声が伽藍に響きます。何もかもが明るく朗らかで釈迦誕生を祝っているようです。 (多田有花)

★雨あとの山の鶯なめらかに
「鶯なめらかに」と詠み、「山の鶯」を身近に捉えた。「雨あと」であれば、大気が澄んで、山の生きものを身近に生き生きと感じる。(高橋信之)


平成24年花冠5月号

2012-04-25 12:04:48 | Weblog
 桃の花
節分の星へ開けたる窓一つ
梅いまだ固し巡りて濠の風
蕗の薹揚げてふくらむ紙の上
桃の花馴染みの声の店先に
手にのせて眉目合わせて雛飾る
雛飾る幾年夫と歩みけり
軽くふって盛る七色の雛あられ

★節分の星へ開けたる窓一つ
節分と星の取り合わせにいい抒情がある。窓一つも小さな星空を見せて「節分の夜」の雰囲気をよく出している。(高橋正子)

★桃の花馴染みの声の店先に
季節を捉えたいい句だ。「桃の花」のやさしさ、「馴染みの声」の親しさ、「雛祭」の季節を詠んで、嬉しい気持ちにさせてくれる。(高橋信之)

★桃の花馴染みの声の店先に
桃の花が店に活けてある。店先に馴染みの声が聞こえて、「あら」と思う。桃の花には、気取らない、明るい雰囲気があるので、「馴染みの声の店先に」言ってみるのだ。日常の一こま。(高橋正子)

★手にのせて眉目合わせて雛飾る
雛様を箱から取り出し、手にのせて一年ぶりのお顔をよく見て、一人一人慈しむように、雛を飾る。雛を飾ってきた歳月が思い起こされる。(高橋正子)

★雛飾る幾年夫と歩みけり
今年も桃の節句にお雛様の飾りつけをした。ずっと毎年飾り付けをして来た懐古と仲睦まじい夫婦愛を感じ、円満な家庭を垣間見る思いです。素晴らしい句だと思います。(足立 弘)
三月三日に女児の息災を祈って行われる雛祭りの行事。お嬢様の幸せを祈って夫共に長年歩んできたさまざまの事が雛祭事に脳裏に走り、感慨にふける作者。それぞれのご家庭に歴史がありますね。(小口泰與)


平成24年花冠4月号

2012-02-18 15:14:38 | Weblog
 葦原
銀杏みな冬芽整い街筋に
纏うものすべて落として銀杏の芽
寒中の硝子のくもり拭いて空
葦原の枯れ尽くしても水の上
節分の豆を炒る手も弾みくる
雨上がる土の匂いの二月来る
踏みしめて二月の畦の湿りくる

★銀杏みな冬芽整い街筋に
「街筋に」がこの句のイメージを鮮明にしている。整然と並んだ街路樹のどの銀杏にも冬芽がしっかりとついて、つまり、冬芽が整い、きりっとした冬の景色となっている。(高橋正子)

★葦原の枯れ尽くしても水の上
「枯れ尽くしても水の上」は、意表をついて、新しい発見。蓮や菖蒲などは、枯れると茎や葉が折れて水に浸かってしまう。葦原の葦は、枯れながらもまっすぐに立ち、水には影を落とすのみ。なるほど、枯れ尽くしても水の上ある。(高橋正子)

★寒中の硝子のくもり拭いて空
寒い中部屋の中から外を見ようとしてもガラスは曇っています。そのくもりを拭くと外には空がいっぱいに広がっています。ほっと一息ついた様子がうかがい知れます。(高橋秀之)

★節分の豆を炒る手も弾みくる
節分の豆を炒る。節分を分岐点に冬が終わり春がくる。豆をいる手も調子づき弾んで、気持ちもかろやかになる。(高橋正子)


平成24年花冠3月号

2012-02-18 15:06:49 | Weblog
 七草刻む
街空を拡げ一斉に散る銀杏
初明りみるみる部屋の隅にまで
千両のひと色壷に豊かなり
葉牡丹の雨溜めて渦締まりゆく
水くぐり刻む七草青々と
水仙の香り残して灯り消す
離陸機の空行く一線年新た

★初明りみるみる部屋の隅にまで
初明かりが部屋に届く。「みるみる」と驚くほどに、明かりが届くスピードが速く、くまなく部屋を明るくしてくれた。ふと驚いたこと、初明かりなればなおさら感慨もあろう。(高橋正子)

★千両のひと色壷に豊かなり
壺には千両だけ挿されているのか。そういうのもいい。あるいは、正月の花のなかに千両があって、赤い実の色があることで壺が豊かになる。(高橋正子)

★街空を拡げ一斉に散る銀杏
黄金色に色づいていた銀杏並木がここ数日の寒さと木枯しで一気に葉を落としました。散る銀杏の先には真っ青な空が広がっています。(多田有花)


平成24年花冠2月号

2011-12-05 23:41:29 | Weblog
丘登る落葉いろいろ踏み鳴らし
皇帝ダリア高く吹かれて丘の上
 大阪へ
波の上群れて明石へ冬鴎
城灯り冬静かなる大阪よ
冬晴れて視線を高く天守へと
銃眼より大都のビルと冬紅葉
外濠の長さを桜紅葉かな
冬うらら人みな城へ向き歩く
空濠を埋めて冬草一色に
葱刻む旅の一と日のはや遠く

★丘登る落葉いろいろ踏み鳴らし
私の好きな句。童心があって、楽しい句だ。芭蕉の「俳諧は三尺の童にさせよ。初心の句こそたのもしけれ」という教えを思いだす。芭蕉は、巧者の病に触れ、私意を離れろと教えた。(高橋信之)

★丘登る落葉いろいろ踏み鳴らし
落葉を踏んで丘を登る晴れ晴れとした楽しさがよく表現されている。「落葉いろいろ」に、落葉の様々な色、また音はもちろん、落葉を落としたいろんな木が想像できて楽しい。(高橋正子)

★冬晴れて視線を高く天守へと
大阪城の吟行での作。大阪城は、巨大な石垣とそびえる天守に目が注がれる。足元よりも、視線は冬晴れの空へ、天守へと自然に向けられる。いわゆる切れのない「一句一章」の句のよさがあって、すっきりと、素直な感覚でよくまとめられている。(高橋正子)

★葱刻む旅の一と日のはや遠く
日常の生活に戻られた朝の用意に、楽しかった旅も過ぎ去った。 「旅の一と日 」がすてきな言葉だと思います。(祝 恵子)