花冠俳句叢書

花冠発行所 主宰高橋正子

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第Ⅰ期第21巻「艫綱」藤田荘二句集

2008-11-18 12:37:39 | Weblog
 序


 藤田荘二さんには優しさがあって、その笑顔がいい。それが俳句に表れているので、嬉しい。
  菜の花の風がこぼれて町中へ
  墓参りいつまで座る花の脇
 これらの優しさは、生来のものであろうが、生活体験の中から育ったものとも思われる。
 荘二さんは、川崎に生まれたが、父上の転勤で、小学低学年を函館で育った。北海道の開放的な風土のいい影響を受けた。北海道を詠んだ句では、
    留萌
  冬怒涛藍濃きところ高々と
があり、東北の山や海を詠んだ句では、
    月山遠望
  月山を仰ぎて高き夏の雲
    男鹿半島
  刈る人も無き藻大きく波の間に
がある。自然とのゆったりとした心の通い合いに作者の優しさを読み取ることができる。
 人生は、山あり谷ありで、その生老病死といった悲しみ、苦しみを誰もが体験し、それらを克服して大きく成長する。荘二さんにも多くの死別という試練があって、その姿を俳句に残した。
    父誠三郎十三回忌
  炎天に墓石鋭く手を焦がす
    畏友井上実君の葬
  どこよりも青き梅雨晴れ骨納む
 これらの句を読めば、亡き人を弔う姿に作者の人柄を知ることが出来るであろう。
 荘二さんが俳句を知ったのは、病床に伏せていたときであり、病という苦しみが俳句への道に誘った。ご自身の生活と俳句が深く結びついているので、本物なのである。技巧の凝った巧者の病がない。
  雷一閃輸液の管の青白し
  救急の受付ひそと息白し
 荘二さんは、小中高校時代が横浜で、横浜市の土木事務所に勤務しているので、本句集「艫綱」は、みなと横浜の風景が多い。横浜らしい句を詠んで、開放的な世界は、作者の心が開かれているからである。
    横浜港
  流れ星港の明かりを飛び越える
  稲妻に艫綱青き水垂らす
    山下公園
  冬の日を背負う女神にかもめ寄る
    外人墓地
  薔薇絡むレリーフの目の深き彫り
 本句集の代表句としては、
  桜咲く朝日が初めにあたる木に
  太陽も空もわがものみずすまし
の二句を挙げる。明るく快い世界を繰り広げて、読み手の心を楽しくさせてくれる。その優しさの奥には、広々として深い世界があって、自然と語り合う荘二さんがいる。俳句を知っているのである。本句集が世に出て、多くの読者に喜んでいただければと願っている。

  平成二十年仲秋
                              高 橋 信 之



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62 コメント

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おめでとうございます (Unknown)
2008-11-18 20:31:44
藤田荘二さま
「艫綱」の出版、たいへんおめでとうございます。高橋信之先生、高橋正子先生のお力を得て、荘重な句集ができましたね。

〈特に好きな句〉

太陽も空もわがものみずすまし 藤田荘二
夏の日をいっぱいに浴び、雲を映す池を悠々と伸びわたるみずすましの描写は、読む者に澄み切った涼しさを届けてくれます。

桜咲く朝日が初めにあたる木に
春の一日の始まりが、朝日に輝く一本の桜に見事に象徴されており、ひかり満ちる遠景がわたしたちの心を膨らませます。

ままごとの皿は砂場に春の雨
春の雨の静かさが、舞台照明を浴びるように、砂場に残されたままごとの皿にやわらかに写し出されています。

月山遠望
月山を仰ぎて高き夏の雲
あの三角の月山を描くのに、さらに高い夏の雲を置く。そこに志高く高潔の士たる荘二さんの姿を確認します。

畏友井上実君葬儀
どこよりも青き梅雨晴れ骨納む
早世されたご友人の葬儀の情景を「青き梅雨晴れ」と澄明に詠われ、その明るさに、反って悲しみの深さを深く思い起こさせます。
お礼 (藤田荘二)
2008-11-18 21:21:33
信之先生、正子先生、今回の句集発刊にあたりまず、これまでのさまざまなご指導に心より感謝申し上げます。また句の添削、句集の序・跋・装丁・発送その他多大なご苦労をおかけしましたことについてもお礼申し上げます。
私の句集に多くのエネルギーを費やしていただいた上に、実にいろいろのことをあらためて教わることができました。
さらにさっそくコメントも頂戴し、うれしい限りです。
仕事や体調に振り回されながら、俳句を細々と作り続けてきました。この句集を契機として、これからはもっといろんな場面でできるだけ多くの俳句づくりに挑戦していきたいと思います。

お詫び (小西 宏)
2008-11-19 20:34:48
高橋信之先生
高橋正子先生
藤田荘二さま
せっかくのお祝いへのコメント第一号(2008-11-18 20:31:44 )が名無しの権平で申し訳ございませんでした。犯人はわたしです。お許しください。
お礼 (藤田荘二)
2008-11-19 22:55:34
小西様、早速のコメントを頂戴しありがとうございました。心より感謝申し上げます。
お礼 (臼井愛代)
2008-11-19 23:24:05
信之先生、正子先生
句集「艫綱」を19日夕刻に受け取りました。
発送のお手間に感謝申し上げます。ありがとうございました。

藤田荘二さま
この度は、句集「艫綱」のご出版おめでとうございます。
句集を頂戴し、ありがとうございました。
俳句を始められたきっかけとなった病のなかでの御句、
山を中心に、旅先などで触れられた雄大な風景を見つつ、
季節や動植物のささやかな変化にも眼を向けられている御句、
横浜を詠まれた御句、
亡きひとを偲んでの御句など、
印象に残るもののなかから、好きな句を挙げさせていただきます。

雷一閃輸液の管の青白し
救急の受付ひそと息白し
地吹雪にも白樺温き芽を捧げ
細枝のほのかな赤み雪の山
ざっくりと雪原区切り送電線
冬怒涛藍濃きところ高々と
出羽なれば薊はまして色の濃き
寝転べば峰より峰へ天の川
歩を止めて一番星を花の間に
筒抜けの無辺の空に菊を買う
菊開花空に広がる妻の声
稲妻に艫綱青き水垂らす
薔薇絡むレリーフの目の深き彫り
流れ星港の明かりを飛び越える
桜咲く朝日が初めにあたる木に
片蔭に蝶の出入りの眩しさよ
朴落葉ばさりと一葉空抜ける
鐘響く年越しの湯をやわらかに
空っぽの缶を蹴る音初夏の雲
墓参りいつまで座る花の脇
どこよりも青き梅雨晴れ骨納む

オフ句会でご一緒した時の御句は、
その日の出来事や情景を思い出しながら懐かしく拝読しました。

聖誕の飾りなき木の深みどり
祝わんと新樹かがやく丘登る
桜茂る円形広場の中へ中へ
冬来るかもめの声の鋭き日

素敵な句集に勉強させていただき、ありがとうございました。
御礼 (小口泰與)
2008-11-20 14:37:53
高橋信之先生、正子先生
 本日、藤田荘二様の句集「艫綱」を拝受いたしました。有難う御座います。
 早速、勉強させて頂きます。

藤田荘二様
 この度は素晴らしい句集「艫綱」の出版おめでとう御座います。
 素敵な句集を頂き感謝申し上げます。
 時間をかけて確り勉強させて頂きます。
 有難う御座いました。
お礼 (丸山美知子)
2008-11-20 17:44:49
高橋信之先生、正子先生
本日 藤田荘二様の句集を拝受いたしました。ありがとうございました。勉強させていただきます。

藤田荘二様
 この度はすばらしい句集の出版おめでとうございます。すばらしい句集をいただき感謝申し上げます。ゆっくり読ませていただきます。
男鹿半島の「刈る人も無き藻大きく波の間に」の句が目にとびこんできました。ありがとうございました。
お礼 (前川音次)
2008-11-20 18:29:14
高橋信之先生、正子先生
本日、藤田荘二様の句集「艫綱」を拝受いたしました。有難う御座います。
早速、勉強させて頂きます。

藤田荘二様
この度はすばらしい句集の上梓まことにお目出度く心よりお祝い申し上げます。又すばらしい句集をご恵贈賜り心より感謝申し上げます。時間をとり学ばせて戴き度存じます。
お礼 (藤田洋子)
2008-11-20 20:54:21
藤田荘二様の句集「艫綱」、本日受け取りました。信之先生、正子先生、発送のお世話をいただきありがとうございました。

荘二様、このたびは句集の刊行おめでとうございます。句集を贈ってくださりありがとうございます。ゆっくり拝読いたします。
お礼 (黒谷光子)
2008-11-20 21:06:30
信之先生、正子先生、荘二様の句集「艫綱」をお送りいただき、ありがとうございました。本日頂戴いたしました。
荘二様、句集「艫綱」の出版おめでとうございます。楽しみに拝読いたします。

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