花冠俳句叢書

花冠発行所 主宰高橋正子

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第Ⅰ期第19巻「梅ひらく」藤田洋子句集

2008-09-29 10:04:11 | Weblog


 本句集「梅ひらく」を読めば、作者は、家族を何よりも大事にし、日常生活を疎かにしない方であって、俳句という詩の言葉でそのことを隈なく表現した。いい生活からいい俳句が生まれた。
 夫や子に囲まれて、

  ひと部屋の灯に集まりて晦日蕎麦

の句、亡き父母を詠んでは、

  父の日の山の青さに真向える
  冬灯し母の箪笥を引けば鳴る

の句があって、父母を想う情が作者の深いところで句となった。第一句の「青さに真向える」、第二句の「引けば鳴る」は、作者の感性が捉えたもので、読者の心深くに訴えてくる。兄を早くに亡くした作者が実家の父母を一人で看取ったことを知れば、なお強く訴えてくる。

  秋彼岸手に置く兄の文庫本

 専業主婦としての日常生活を詠んだ句に

  ペダル踏む籠に落葉とフランスパン

があり、読み手も楽しませてくれる。季語「落葉」が効いて、生活の実感を伝えてくれる。

  手のひらに塩あおあおと胡瓜もむ
  窓に干すハンカチ白し十三夜

 これらの句も日常生活を詠んでレベルが高い。「あおあお」や「白し」といった色彩の感覚の良さによるものである。

  新任の地へ向く朝浅蜊汁

 この句は、夫を詠んだものだが、言葉が少ないのがいい。夫婦の日常を詠んで充分である。

  冬椿嫁ぎ来しよりこの庭に
  装いの帯高く締め成人式

などの句があり、嫁ぎ来て三人の子を育てた。作者とは、十四年間の俳句のお付き合いだが、子育ての十四年間を俳句で見てきた。

  いってきます声も大きく遠足へ 
  日焼け子が海の香させて寝息立て
  風邪の子と古きアルバムめくりおり

 これらの句では、子らと共に居る母親のやさしさを知る。
 俳句の仲間との集まりでは、

  生き生きと声が動いて初句会

の句が新鮮で、横浜の俳句大会に参加しては、

  海見えて落葉の芝に旅鞄

と、旅の句を詠む。
 本句集の題名「梅ひらく」は、

  梅ひらく白のはじめを青空に

の句から作者自身が付けた。作者らしい感性がいい。
 代表句は、

  遠ざかる風船は今空のもの
  湯のはじく乳房の張りよ夕月夜
  海見える丘に椎の実拾いけり
  冬木立つその確かなる影を踏む

であって、十四年間の俳句生活を経て、その成長は明らかである。感性のみずみずしさがあって、実家の父母を看取るという苦しみと悲しみを体験し、内面の深みが加わった。句集「梅ひらく」を私たちの「水煙」の仲間から世に出すことを嬉しく思う。

平成二十年八月
                         高 橋 信 之



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49 コメント

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お礼 (松本和代)
2008-09-16 20:07:07
河野啓一様と黒谷光子様の句集を送って下さいまして有難うございます。大切に読ませていただきます。
お礼 (堀佐夜子)
2008-09-17 11:06:37
河野啓一様と黒谷光子様の句集を送って下さいまして有難うございます。体調が落ち着きましたら拝読させて頂きます。

お礼 (松本千恵子)
2008-09-17 14:08:53
河野啓一様と黒谷光子様の句集を送って下さいまして有難うございます。立派な句集大切に
読まさせていやだきます。私も句集作ることが夢です。
Unknown (野田悠敬)
2008-09-18 19:56:54
河野啓一句集「せせらぎ」及び黒谷光子句集「能笛」を送付いただきまして有難うございました。

叢書の刊行が増えますことは水煙発展の証・信行先生・正子先生のご指導の賜とお慶び申し上げます。
お礼 (藤田洋子)
2008-10-01 21:56:10
信之先生、正子先生、このたびの句集の出版にあたりましては、酷暑の続く折より、句集の選句、編集にはじまり、今日の句集の発送に至るまで、大変な労をおかけいたしました。句友の皆様への句集の発送もお世話になり、本当にありがとうございました。今日、初めて句集を手にした喜びに、入会よりこれまでご指導していただいた日々に、あらためて感謝の気持ちでいっぱいです。心よりお礼申し上げます。
句友の皆様、今回、信之先生、正子先生、皆様のおかげで、句集を出版させていただけました。お忙しいとは思いますが、少しでも目を通していただければ幸いに思います。今後ともよろしくお願いいたします。
お礼 (  吉川豊子)
2008-10-02 16:15:35

信之先生 正子先生

只今、句集「梅ひらく」を拝受いたしました。
有り難うございました。
 藤田洋子様
句集「梅ひらく」発刊おめでとうございました。
  手のひらに塩あおあおと胡瓜もむ

 特に、この句は奇きなくです。
 自分で胡瓜をもみながら、この句が頭をよぎります。
窓に干すハンカチ白し十三夜
  冬椿嫁ぎ来しよりこの庭に
  装いの帯高く締め成人式

  いってきます声も大きく遠足へ 
  日焼け子が海の香させて寝息立て
  風邪の子と古きアルバムめくりおり
ゆっくりと拝聴をしながら、勉強をさせていただきます。
 有り難うございました。
お礼 (臼井愛代)
2008-10-02 22:44:44
信之先生、正子先生
句集「梅ひらく」を本日受け取りました。
お送りいただきまして、ありがとうございました。


藤田洋子さま
このたびは、句集「梅ひらく」のご出版おめでとうございます。
お送りいただき、ありがとうございました。
洋子さんのお姿を思い浮かべながら、早速拝読させていただきました。
洋子さんの句集は、ご家族への、溢れるような思いに満ちているという印象を強くいだきました。

大切にしておられた亡き方々に寄せられるせつなさは、読者に静かに迫ってきます。

枇杷熟るる枝を揺らして昔日へ
秋彼岸手に置く兄の文庫本
万緑の中抱きしめて納骨す
悲しみのうすれてゆきし盆供養
師走来る父を亡くしたことのふと
仏間にも月の障子を開けにけり
冬灯し母の箪笥を引けば鳴る
墓参り花筒の水溢れさせ
燃え上がることなく尽きて苧殻の火
父の日の山の青さに真向える

嫁がれてから、妻として、母として、嫁として、女性としての、充実感やよろこびに満ちている御句の数々には、
ご家族の歴史、アルバムを見せていただくような気がいたしました。
優しさの中にも、しっかりと家庭を守っておられる主婦としての誇りも感じます。

日焼け子が海の香させて寝息立て
湯のはじく乳房の張りよ夕月夜
忌を終えし今朝の白菊よく匂い
いってきます声も大きく遠足へ
さやかなる大気病む子の体内へ
持ち帰る弁当箱につくしんぼ
飴色に金柑を煮て咳の子に
装いの帯高く締め成人式
七草粥噴きこぼれては噴き上がる
ふっくらと朝のオムレツ受験子に
ハンカチを干すつつぬけの秋空へ
洗い上げ青梅匂う中にいる
ひと部屋の灯に集まりて晦日蕎麦
卒業の日の紺袴胸高に
新任の地へ向く朝浅蜊汁

少女のようなまなざしや、素直でまっすぐなお気持ちの垣間見られる御句は、
お会いしたときの洋子さんの印象と重ねながら、楽しく読ませていただきました。

出港のフェリーへ振りし夏帽子
蜻蛉の目こぼれんばかり動きおり
春七色缶振って出るドロップス
遠ざかる風船は今空のもの
香のこぼる水仙を抱き風の坂
この竹と決めて朝伐る七夕竹
ペダル踏む籠に落葉とフランスパン
海見える丘に椎の実拾いけり
梅ひらく白のはじめを青空に

素敵な句集に、勉強させていただき、ありがとうございました。
お礼 (古田敬二)
2008-10-02 22:52:54
信之先生、正子先生、句集「梅ひらく」を10/2、受け取りました。ありがとうございました。お手数をかけました。


藤田洋子さま
句集「梅ひらく」のご出版おめでとうございます。お送りいただき、ありがとうございました。早速目を通しました。懐かしい句もあり、
昔のことを思い出しています。
お礼 (小西 宏)
2008-10-02 22:56:42
高橋信之先生、正子先生
藤田洋子さんの句集「梅ひらく」をお贈りくださり、たいへんありがとうございました。

藤田洋子さま
「梅ひらく」の上梓、おめでとうございます。素敵な俳句の数々をお届けくださり、たいへんありがとうございます。

特に印象に残る句

ひと部屋の灯に集まりて晦日蕎麦
どの家族にも覚えのある、あたたかな家族のふれ合いを、「ひと部屋の灯に集まり」と表現され、納得させられます。

父の日の山の青さに真向える
冬灯し母の箪笥を引けば鳴る
父上に対しては、「山の青さに真向える」という精神的な力強さ、母上については「箪笥を引けば鳴る」という感覚的な懐かしさによって、読者に自然な共感を覚えさせます。しかし、「梅ひらく」を読ませていただくと、随所にご両親の思い出、喪失の悲しみが詠われてあり、句集にちりばめられた思いの総体は、安易に要約することのできない生の重さを伝えてくれています。

新任の地へ向く朝浅蜊汁
ご主人に対しては、「新任の地へ向く朝」と力強い。むろん「浅蜊汁」にさまざまな思いが混められているはずですが、これもまた多くの読者に共感を覚えさすのではないでしょうか。

風邪の子と古きアルバムめくりおり
風邪に苦しむお子さんとともに古いアルバムをめくり、内心からからだを暖め、心を和らげてあげる。母親の慈しみが、よく句の形となって表わされています。


そのほか、好きな句として以下の作品をあげさせていただきます。

夕立後にきらめけるもの地にあふれ
紫陽花を抱え来て胸濡らしけり
遠ざかる風船は今空のもの
この竹と決めて朝伐る七夕竹
初蝶のふいに来て風軽くなり
宵宮の子らが指差し月上がる
ふっくらと朝のオムレツ受験子に
お礼 (大給圭江子)
2008-10-02 23:09:01

信之先生、正子先生、句集「梅ひらく」を10/2、受け取りました。ありがとうございました。お手数をかけました。


藤田洋子様
このたびは、句集「梅ひらく」のご出版おめでとうございます。
お送りいただき、ありがとうございました.



洋子様どの句も心温まる、優しさ溢れる句を感銘いたしました。有難うございます。

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